関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

須貝尚介調教師

ドバイデューティフリーの勝利で世界一のレーティングを獲得し、国内では負けられない立場へと成長したジャスタウェイ。2歳時からスポットをあてていた競馬ラボとしても感慨深いものがあるが、さらに進化している同馬が安田記念でどのような走りを見せてくれるのか楽しみでならない。毎週のBIGレースで競馬を盛り立てる須貝尚介調教師に、大本命として臨む舞台への感触を聞かせてもらった。

※インタビューはレース1週前に行ったものです。福永祐一騎手が騎乗停止のため、乗り替わりとなりました。
超抜の動きを見せた1週前追い切り

-:世界No.1の称号を得たジャスタウェイ(牡5、栗東・須貝尚厩舎)ですが、今朝(5/28)の追い切りは、まさに素晴らしかったですね。

須貝尚介調教師:想定以上の動きをしてくれました。ドバイで使ってから、1回放牧に出して帰ってきたんだけど、本当に弱さがないというか、またもう一段シッカリとしたというか、精神面、肉体面が今日の調教にも表れたようですね。

-:ハーツクライ自身も成長した時の変化が凄かったですからね。

尚:ハーツクライもそういう風に言われてきたと思うんですけど、ジャスタウェイを見る限りは、そういう遺伝子が働いているのかもしれないね。

-:橋口先生の言葉を借りると「ハーツクライは2頭いた」と言うんですけど、ジャスタウェイももちろん、2歳、3歳から活躍をして、そこからもう1回成長したという。

尚:そうですね。古馬になって、本当に貫録が出ましたよね。

-:この間も先生と話をさせていただいたんですけど「2歳で入ってきた時はもっと華奢で、今とは体付き自体が全然違った」と振り返っていましたよね。

尚:流線というか、体はすごく綺麗なシルエットをしていたんだけど、ここまで迫力のある体ではなかったよね。今は本当に迫力のある体をしているね。

-:先週の追い切りですが、思っているよりも掛かり気味というか、それだけパワーアップしている印象を受けました。

尚:先週は馬ナリであの時計でしょ。今週はやれと。1週前だから負荷を掛けないといけないのでね。「アラアラぐらいでも良いから」と、追っておくように指示をしたんだけど、その動きが52秒1の終いが11.9と、これだけの時計で走るというのは、ちょっと想定をしていなかったですよね。そこまで体調が良いという証拠になるんじゃないですか。



-:今日併せていた馬は角居厩舎のエアハリファでしたね。

尚:そうです。ウチにはちょっと、やりたい時にそこまでの時計を出す馬が在厩していなかったので、色々な先生方に聞いたんだけど、角居先生のところに時計が出る馬(エアハリファ)がいるからということで調整してもらったんですけど、助かりました。

-:そのパートナーに乗っていたのは清山助手でした。

尚:上手いこと誘導してくれたと思います。かなりジャスタウェイと張り合ったんだよね。あちらも結構な負荷が掛かっていると思うんだけど、本当に助かりました。

-:お互いに良かった、良い追い切りが出来た、ということですね。ラスト1ハロンの伸びは、11秒9という数字以上に迫力があって、写真を正面から撮っていたんですけど、オッという、なかなかあそこまで来る馬はいないですから、すごく楽しみになったんですけどね。

尚:迫力があったね。色々と海外の選択肢もあったんだけど、やはり名誉だけじゃなくて、日本の競馬にも貢献しないといけないですし、日本のファンにやっぱり、ジャスタウェイの走りを目の前で見せてあげたいなという気持ちもあるし、それにジャスタウェイが応えてくれたら一番良いかなと。



課題のゲートも克服できる感触


-:国内でジャスタウェイを使うとなると、もう以前のようにはいかず、ハードルがドンドンと上がって、勝つことが当然という立場になりそうですね。

尚:いや、それは競馬だから。そういうことは、結果は後で付いてくるものだから。今回だって、この安田記念というのは、かなりのメンバーが揃っているし、ジャスタウェイの同級生たちもみんな重賞を獲っている馬たちばっかりなので、そんな一筋縄で行くような競馬ではないと思います。

-:追い切りを見たら、十分に具合が良いのは分かっているんですけど、ジャスタウェイの場合はゲートが良い時と悪い時がありますよね。

尚:そのゲートは、ドバイデューティフリーでもゲートボーイを付けて、ユーイチが「あまり上手くなかった」と言うけども、中山記念ではキッチリと出ているので、ジャスタウェイに関しては対処できると思いますよ。あまりにもゲートで残されない限りは大丈夫でしょう。その辺は、枠順も考えながらの作戦になると思うけどね。

-:馬場が渋ったとしても、問題がない馬ですしね。

尚:今は少々渋ったぐらいでは、ジャスタウェイの力があれば、何とかなりそうな気もします。

-:日本ダービーはレッドリヴェールを使って、2週連続で府中のビッグタイトルを目指す訳なんですけど、意気込みも含めてお願いします。

尚:こういうG1戦線に乗っていける馬がいてくれるというのは、本当にありがたいことだと思います。出る限りは全力を尽くして仕上げていかないといけないし、それに応えてもらわないといけないし、かなりの責任を感じています。



-:幸先が良いことに、先週も大和屋オーナーのオツウが勝ちましたね。

尚:オツウはレッドリヴェールと併せてトンコロを喰らったんだけど、その馬が勝ったという意味では、レッドリヴェールの評価は高くなっても良いんじゃないかと思います。オツウもやっぱりハーツクライ産駒なので、遅咲きのところもあったと思うけど、精神面でも肉体面でもね。まだ4歳なので、これからドンドン良くなってくるとは思います。

-:まだまだ大和屋オーナーにも楽しんでもらえそうですね。

尚:うん、まあね。オーナーはみんな、1頭1頭が大事な馬なんだから、それに応えるべく走りをしてもらったら良いと思います。

-:今週、来週と楽しみにしています。

尚:はい、頑張ってもらいます。

●ドバイDF前のジャスタウェイ陣営へのインタビューはコチラ⇒



【須貝 尚介】 Naosuke Sugai

1966年滋賀県出身。
2008年に調教師免許を取得。
2009年に厩舎開業。
初出走
09年3月8日 1回阪神4日目7R ワーキングウーマン
初勝利
09年3月14日 1回阪神5日目7R ホッコーワンマン


■最近の主な重賞勝利
・14年 ドバイDF/14年 中山記念
(共にジャスタウェイ号)
・14年 阪神大賞典/13年 宝塚記念
(共にゴールドシップ号)
・13年 阪神JF/13年 札幌2歳S
(共にレッドリヴェール号)


父は定年により引退を迎えた須貝彦三・元調教師。自身は騎手として4163戦302勝。うち重賞は01年のファンタジーS(キタサンヒボタン)など4勝。
09年から厩舎を開業。初年度は年間10勝だったが、年々勝ち星を伸ばし、ゴールドシップ、ローブティサージュ、ジャスタウェイなど活躍馬を多数輩出。史上最速でJRA通算100勝を達成するなど、一躍、関西のトップステーブルにのし上がった。その勢力は日本に留まらず、ジャスタウェイのドバイデューティーフリー圧勝は記憶に新しいところ。今夏よりデビューを迎える2歳世代も前評判の高いラインナップを擁しており、更なる活躍が期待される。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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