一昨年の覇者は老いて尚盛ん!8歳スノードラゴン
2016/9/25(日)
8歳にして長期休養明けから復帰したスノードラゴン。その後は勝利こそないものの、常に人気どおりでインパクトある走りを見せている。とりわけ前走のセントウルSの先行策は観衆のどよめきを呼ぶそれで、本番のスプリンターズSで大野騎手に戻すという起用法からも完全復活に懸ける意気込みが伝わってくる。これまでも的確なコメントをいただいてきた高木登調教師に、ファンの誰もが気になる質問をぶつけてきた。
長期休養明けのローテを振り返って
-:スプリンターズSに出走予定のスノードラゴン(牡8、美浦・高木登厩舎)ですが、春は休養明けのオーシャンSの時にお話を聞かせていただきましたけれど、前走までに至る夏場を含めて、一連の話を少し聞かせていただきたいのですが、春シーズンの高松宮記念のレースから振り返っていただけますか?
高木登調教師:追い込みという脚質で、中京の馬場は合っているのかと思っていたのですが、思いのほか、その週から急に時計が速くなりましたね。ジックリなんて言っていられなくなったので、ある程度積極に競馬をやってもらって、ああいう結果(7着)でしたね。
-:高松宮記念後はすぐ5月(かきつばた記念)にレースを使って、その後のプランというのはどういう考えだったのですか?
高:脚元を考えて、(2015年2月に脚部不安発症)再発が一番嫌だったのもあるし、あとは斤量も背負わされてしまうので、ダートかなと。交流の1400mは長いと思いましたが、使うところがないので、そこもありと言えば、ありかなと思いましたね。
-:その後、6月には北海道スプリントCに行きました。
高:59キロの斤量も考えても、その辺だったら背負えるので。
-:やはり斤量と脚元とを考えて、地方のダート路線を選ばれたということですね。7月には中央の芝のCBC賞を使われる訳ですが、こちらのレースに関してはいかがでしたか?
高:中京で時計もまずまず出るようになっていたのですが、自分の競馬に徹してやってみて……。正直、ハンデがどれくらいかなと。ただ、そんなに背負わされないのではないかと。まあ、58.5kgでしたが、そこを選んでみて、レース内容的にもちょっと勝ち馬(レッドファルクス)に4コーナーで閉められて、仕掛けが遅れて、そういう形で来たので、もうちょっと頑張れたのでは、という印象はありましたね。
セントウルSはG1に繋がる先行策
-:前走はセントウルSになるのですが、今までのレースの形とは違ったと思いますが、レースを振り返られていかがですか?
高:ダートですが、準オープンくらいまではそういう競馬をしていたのですよ。どうしても、最後の手前の換え方が、前に行ってしまうと今イチだし、弾けない。準オープンくらいで頭打ちになりそうな雰囲気もありましたからね。脚質転換で抑えて行ったら、切れるんじゃないか、と試してみると、良い競馬をしてくれたんですよ。
最近はずっと抑える競馬をしていたので、馬も慌てずノンビリしているところもあるので、「川田君の乗った感触でとりあえず馬のリズムだけは大事にしてくれ」と言っておいたのです。しかし、返し馬でどうしてもノンビリしているというところがあったみたいで、だいぶ気合いを付けていましたので、それでゲートが最後入れとなればポンと出ますよね。当初はそういう競馬をしていたので、そのまま行きまして「3~4コーナー辺りで色気を持って追っ掛けちゃった。その分止まっちゃいました」と言っていましたね。ああいう競馬をすると手前も替えていないですものね。結局、ずっと右手前のままでゴールに来てしまったので。-:それが、ちょっと最後のひと伸びに。
高:そうですね。あれで、外にも出して最後にポンと換えてくれれば、もうひと伸びあっても良いのかな、という感じがするのです。
-:まだまだ上積みは見込めると捉えても。
高:そうですね。前走はああいう競馬をしたので、次は馬ももっと気が入ると思うので。ということは、必然的に脚は溜まりやすくなるのかな、という感じはします。行く気になって、中団くらいで脚を溜めて、という競馬ができるのではないかと思っているのです。
-:自然に良い位置を取れて、かつ脚も溜まるという。
高:という感じでやれば、中山なら弾けてくれるのでは、という期待はあります。
-:続いて、馬の状態について聞きたいのですが、オーシャンSから復帰してコンスタントに使っていますが、先生からご覧になって調子の変動というのはあるのですか?
高:オーシャンSの時は、長期休んでいたので随分と馬が柔らかくなったので。もともと硬い馬だったのですが、まだ馬体も若い感じがしますよね。本当に8歳とは思えないくらいで。中央の馬場も最近は随分と時計が速くなって、競馬でずっとコンスタントに1分7秒台で走っていますしね。
-:脚元への反動みたいなものがあったりするのですか?
高:いや、全然。ただ、調教は坂路1本とプールでやっていますが、前は坂路2本なんてやっていました。いまは脚元をやっているので、そういうメニューにしていますけど。
-:レースとレースの間はプールで1回疲れを取って。
高:脚元へ負担を掛けないようにやっています。
-:レース後の調子の変動というのはありますか?
高:いや、あんまりないですね。本当にこの馬はつくりやすいです。ただ、本当に太りやすいので、気を付けるのはそれだけです。この間も508キロで競馬をして、火曜日で524キロですからね。どんだけ戻っちゃうんだよ、というね(笑)。今でも口籠していますから。何でも食べちゃうんでね。普通にやれば530~40になっちゃうんですよ。
課題だったスタートが改善した理由
-:セントウルS後の過ごし方を教えていただけますか?
高:反動だけ確認していましたが、ああいう競馬をしていれば、あんまり反動はないので。結構後ろから行って、ビュンと上がりだけ速い競馬をすると負担が来るものですが、ああいう競馬をしているとそんなに。手前も換えなかったから、反動もないだろう、と思ったら案の定なかったですね。
-:今日、金曜日(9/23)に1週前追い切りをされましたが、その指示と狙い、見た感じはいかがだったでしょうか?
高:使ったばかりですので、今週はどこかで1本やれば良いなと思っていたので。どういう流れにしようかなと思って、金曜日にやって、明日運動をして、日曜日普通に乗って、来週の水曜日というパターンを考えてやりましたね。
-:大野ジョッキーを乗せて、時計の指示などはありましたか?
高:14で行って、ピッタリ54で来ましたね。
-:以前も、スノードラゴンに関する取材をした時、大野騎手が予定通りの時計を出したと言って、自慢げな顔をされていた、ということでしたが、今回も予定通りということですね。スノードラゴンは新潟のスプリンターズSを勝ちましたが、中山1200のスプリンターズSは初めてで、オーシャンSは使っているものの、レースに向けての適性というのはどのようにご覧になられていますか?
高:中山コースもダートで勝っているには勝っていますし、回りは別に問題ないと思いますけど、流れですよね。昔はどうしても後方からで、今回はある程度の位置に付けられるのではないかと思っているので。この長期休養明けからはそういう競馬をしているんですよね。ゲートにちょっと特殊な癖があったもので。ゲートで真後ろ向くんですよ。それを直そうとするとガチャガチャなってしまうので、取りあえず放っておいて、スタート前にポッと直して競馬をやっていたので。
-:休み明けのレースからは?
高:何もやっていないので、だから上手くスタートは切れていますよね。オーシャンSの時もどうかと言っていたのですが、「ゲートだけ気を付けておけよ」と言ったら、大野もあんなに出ると思わなかったのか、「あんなに出るとは思わなかった」と言って、ビックリしていました。
-:今は体の向きも問題はなく、スタートが出るようになっているし、以前よりは良い位置を取れるようになったと。前走で川田騎手が気合いを入れたり、実際に前に行ったということで、もう少し自然に良い位置が取れるだろうということですね。あとは、レースの時計とかに注文があったりするかと思うのですが?
高:時計はそんなに高速でなければ。4週目ですし、雨も続いていますし、そんな高速馬場にはならないんじゃないかなと。それは中京の時も思いっきりコメントしましたけど(笑)。
-:理想としては時計が掛かってほしいと。
高:そうですね。今は、1分7秒前半くらいの決着までは対応が利くんじゃないかなと思うのですが、あとは流れですよね。前に強い馬がいますから、みなさんで負かしに行ってもらって、そこで、「ごちそうさまです!」というパターンが一番良いです(笑)。
-:そうなる展開を祈っています。ありがとうございました。
プロフィール
【高木 登】Noboru Takagi
2006年に調教師免許を取得し、翌年に厩舎を開業。初出走、初勝利と幸先の良いスタートを切ると、2013年にはJRA通算100勝を達成。14年にはスプリンターズSを含む、JRA重賞3勝をマークしてみせた。
昨年もサウンドトゥルー、ホワイトフーガを擁し、東京大賞典やJBCレディスクラシックを制覇。今や各馬の主戦である大野拓弥騎手とのコンビもお馴染み。今年はホワイトフーガで2つの交流重賞を制しており、有力馬を多数管理している美浦の中堅調教師。