'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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4月15日時点1479勝
【関屋記念】復活の夏になるか
昨年の輝きをみせたいエクセラントカーヴ
2014/8/10(日)
前回の敗因は自身の追い切り?
-:引き続き乗ってきている馬で、お馴染みの存在になってきたエクセラントカーヴ(牝5、美浦・堀厩舎)です。今年2戦の結果がもう一つのところがあるので、その敗因が掴みきれないというか、やっぱり骨折の影響があるのか、もしくは時期的なものなのか、騎乗されてきての見解はどう感じていますか?
戸崎圭太騎手:正直、分からないですね……。
-:骨折した時点では、軽度というか、秋の時点で来年のヴィクトリアマイルを目指す、という具体的なレース名が発表されていたので、大きなケガではなかったのかな、という気もします。それだけに、骨折の影響が考えづらい中で、この2戦が振るいませんでした。前回も今までの走りの雰囲気と違うところはありましたか?
圭太:前回はすごく折り合いは付きましたね。
-:逆におとなし過ぎるというか?
圭太:う~ん、普通の馬ならば、あれくらいの折り合いで走ってくれると一番良いですね。あの馬でなければ“最高の折り合い”と賞賛できるほど、道中は上手くリラックスして走ってくれました。ただし、あれで伸びないということは、あの馬にとってあれじゃダメなのかな、という気がしますよね。
もともとはある程度、“ケンカ”ではありませんが、テンションが上がっているところを上手くなだめて、直線に向いて爆発する形であの馬は強い競馬をしてきたのでね。それに比べると、すごく良いフォームで走れていたのが前走ですね。女の子なので、気持ちの部分が大きいと思いますし、(よく乗っている)アジアエクスプレスもそうですが、この馬も気持ちの問題かという気はしています。
-:その精神面を整えるためには、調教も一つの要素です。ヴィクトリアマイル前は確か追い切りには乗っていましたね。
圭太:乗りましたね。“相変わらず”という感じのすごいヤル気でしたよ。
-:でも、今までは追い切りにほぼ乗らなかった馬ですよね。
圭太:そうですね。乗っていないですね。まあ、追い切りが悪かったのかもしれないですね。実はそこが原因になってしまうのかな……。
-:気合いをイレ過ぎてしまったかもしれないと。
圭太:僕はあの馬の追い切りに乗らない方が良いのかなという。
-:それだけが敗因だったら、すぐに巻き返せるかもしれません。
圭太:そうですね。敗因が分かったわけですからね。
-:そもそも前回の追い切りに乗った時点での状態、気配はどう感じていましたか?
圭太:悪い感じはしませんでした。折り合いは欠いてしまいましたが、それくらいやっぱり(ヤル気は)すごいですね。次は先生(調教師)にも言って、乗らない方向で、ということでいこうと思います。前に「ちょっと引っ掛かるし、僕は追い切りに上手く乗る自信がないから」ということは伝えたと思いますね。
-:ヴィクトリアマイルの話をされる以前に「追い切りに乗らない方が良い馬だ」と言っていた記憶があっただけに、乗っていたので“あれっ?”と思いましたね。
圭太:じゃあ、やっぱりそこだ。まあ、そこらはヘタクソなのでね。
-:ハイ……。
圭太:そんなに(調教が下手だと)すぐに納得されても、ちょっと心が痛みますよ(笑)。
-:いえいえ、というのは安藤(勝己)さんが「良いジョッキーは調教がヘタクソでも良い。調教は上手く乗れないものだ」と言っていたので、そこに繋がるのかと思いました(笑)。
圭太:まあ、そういう風には言っていないのですが(笑)、地方の時からそうですね。あまり攻め馬に関しては、自分も納得がいくのがなかったからね。
-:じゃあ、これからは調教で乗った馬は……。
圭太:“消し”で。いやいや、一週前追いは大丈夫ですよ(笑)。
-:馬それぞれ個性はあると思いますが、助手さんが乗られることが良いケースと、ジョッキーが乗って悪くなるケースの違いは、どういった要因から考えられますか?
戸崎圭太騎手マネージャー:普段乗っている人の方が良い、ということもあるでしょうね。
圭太:どうなんですかねぇ。でも、あまり騎手が乗らない馬もいないんじゃないですか。だって、北村さん(北村宏司騎手)などは調教に結構乗ったりしているでしょう。
マネ:騎手が乗るのは、何を目的とするかですよね。最終段階の仕上げの調整なのか、もしくは状態を見ることなど。他にはテン乗りだったら、癖を確認するとかね。騎手はたまにしか乗らないから、違いが結構分かるというメリットもあると思うんですよね。毎日乗っている人では気付かなかったりすることもあるでしょうから。そういう違いはあるのかなと思います。
だから、逆に騎手が追い切りに乗るのだったら良いのかと思いますね。それなりに時計関係なく併せている感じでは、癖とか見られますから。
圭太:繊細な馬には騎手が乗ることで気持ちが入っちゃったり、というケースはあるかもしれませんね。
マネ:馬は違う人だと感じ取りますから。本来、馬を仕上げるのはプロの方にお任せして、把握することを考えるべきではないかと思います。
夏場は好材料 今度こそ「忘れられない感触」を
-:この馬はテンションというウィークポイントもありながら、昨年も定期的に暑い時季を走って、あれだけ結果を残してきたので、今の時季は良い印象は受けます。
圭太:そうですね。去年は良かったですね。ただし、特には昨年との違いは感じないのです。中山牝馬Sは4つコーナーもあり、休み明けだったりしたのでね。それにあのレースでは道中でケンカをし過ぎましたね。折り合いを欠いてしまった原因はハッキリしています。前走に限っては得意としているワンターンのコースだったので、それ故に調教以外の敗因が分からないのです。
-:今回は時季も良いでしょうし、軽い芝も合っている雰囲気がするので、ここが巻き返す条件としては合っている気がします。
圭太:もともと去年、重賞まで勝って、僕も楽しみにしていた1頭だったのでね。ここ2戦は結果が出ていませんが、ああいう馬ではないとは思うので、また良い時季で走れれば良いですね。
圭太:「噛み合った時のエクセラントは良い末脚を持っています。あの感覚は今でも忘れていないのでね」
-:レースに行くまでの過程で、追い切りやパドック、返し馬を見て、その違いで変化、差はありますか?
圭太:いや、特には。とは言っても、中山の時は見た目にもやっぱりイレ込んでいましたよ。
-:そのイレ込みは良い時のイレ込みとは違う感じだったのですか?
圭太:異常にテンションが上がっていましたね。
-:あとは今回の状態と雰囲気がどんなものなのかを加味しつつ、高い評価を与えていた1頭だけに、巻き返して欲しい一戦ではありますね。
圭太:ええ。そう思っています。噛み合った時のエクセラントは良い末脚を持っています。あの感覚は今でも忘れていないのでね。期待していた1頭だったので、ここをキッカケに復活させたいですね。
-:高い評価をしていた馬ですからね。復調は出来そうですか?
圭太:出来るんじゃないですかね。そう期待しています。
※次回はエアソミュールとのコンビで札幌記念に騎乗!G1馬との対戦への意気込みを語ります。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成し、NARとのダブル1000勝は史上4人目の快挙を挙げた。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。