今年も盛況に終わったセレクトセール。その中でも話題を集めていた一頭であるスターアイルの2014(ミッキーアイルの弟)を落札したのは、「タイセイ」の冠名でファンにもお馴染みの田中成奉オーナー。タイセイレジェンドでJBCスプリントを制すなど多数の活躍馬を抱えていながらも、意外にも競馬メディアは初登場とのこと。貴重なインタビューとなった今回は「1億円もの高額落札も覚悟していた」というスターアイルの2014に対するこだわりから、馬選びの戦略に至るまで、余すことなく語ってくれた。

第一章

-:「タイセイ」の冠名で知られる田中成奉オーナーに初めてインタビューをさせていただきます。よろしくお願いします。今回、注目させていただいたキッカケというのが、ミッキーアイルの弟でもあるスターアイルの2014(父マンハッタンカフェ、1歳馬セールにおいて8800万円)が高額での落札。どなたが落とされるのかと、セリの前から注目していたのですが、それが田中オーナーでした。オーナーといえば、「タイセイ」の冠名でファンにもお馴染みですが、今までの落札の金額履歴も拝見させていただくと、これまでと比較しても、スターアイルは期待馬であると窺えますが、この馬を選んだ決め手を教えていただけますか?

田中成奉オーナー:ええ、よろしくお願いします。毎年、セレクトセール前に私達でリストアップした馬は、必ずノーザンファームさんへ下見に行っております。基本、なるべく安くて良い馬を探すことに尽力を注いでいるのですが、スターアイルの2014は事前からリストアップした中の1頭だったのです。

田中成奉オーナー

タイセイレジェンドらで手にした優勝レイを背に、インタビューに応じてくれた田中オーナー


今回のスターアイルは6000万円というリザーブ価格(1)が設定されていて、その値段はノーザンファームさんも高く評価しているという証明ですよね。兄弟にもG1馬(2)がいますから、買うとしたら少なくとも1億ぐらいは覚悟しなきゃいけないなと思っていました。ただ、G1馬の兄弟でなくても、ディープインパクト産駒は1億でも買えない馬が多いですからね。そういう意味では、スターアイルの2014はディープじゃないので、1億円以内で買える可能性もあるかと思い、リストアップしていたうちの1頭です。もちろんある程度の値段にいっていたら、諦める場合もありましたが、その馬ごとに「この馬はいくらまで」と目安を決めて、その範囲内で買えれば買うスタンスです。その中でも、スターアイルだけは私達の目玉候補といいますか、高くなったとしても、他の馬はなるべく安くして、高いのはこれ1頭に絞ろうと思っていたほどです。

余談ですが、参考までに高額が予想される馬も事前の下見はしていますよ。去年(のセレクトセール)でも9000万円ほどの値段にまで高騰して、競り負けした馬(シャムロッカーの2014)もいましたからね。


(1:販売者が予め定めた最低販売価格を指す)
(2:ミッキーアイルは2012年1歳馬セールにおいて7600万円で落札。デビュー前のスターアイルの2013も2014年の1歳馬セールにて1億3500万円で落札)


-:スターアイルの2014ですが、予算に関してはどこまで覚悟されていましたか?

田:1億は覚悟していましたね。前の日からウチのスタッフと打ち合わせをして、それくらいの価値があるのではないかと見ていましたが、1億を超えた場合にどうするかは、私の最終判断です。そういう意味では8800万円で買えましたので、良い誤算でした。


「血統的にもクラシックを狙える馬だと思っています。それだけ高い値段を出した訳ですから、そういう期待がないと、あそこまで高い馬はなかなか買えないですね。スターアイルでクラシックを狙いたいです」


-:この馬を選んだ、魅かれたポイントも教えていただけますか?

田:ウチには馬を見られる専属スタッフがいますので、彼が何度か下見で見ましたし、写真もチェックしました。その中で注目した1頭なのです。その他の注目リストの中には、ディープ産駒もいましたが、ディープは値段的に1億、2億円とザラにいきますからね。その額を出すにはリスクがありますから、その中で血統背景、話題性、価格とのバランスを見ても、これが1億円前後で買える可能性があるのではないのかと、スタッフからの進言がありまして、決断に至ったわけです。

-:絶大な信頼を寄せるスタッフの方については、後ほど伺うとしまして、このスターアイルは落札後、記念撮影されるスペースに矢作先生もおこしになっていました。矢作厩舎に入厩される予定ということですか?

田:ええ、そうですね。セリの場合、ごく一部の先生、矢作先生(矢作芳人調教師)等とはセリでの狙いが合致してしまわないよう、事前に情報交換しています。万が一、こちらがそこまで肩入れしていない馬なのに、矢作先生サイドの他のお客さん(馬主)と無駄な競り合いになってはいけませんからね。「もし、私が落とすことができれば、管理をお願いします」と依頼することもありますが、それは本当に一部なのでね。他の馬は全て、ウチが落札した後に調教師さんに管理を委託するやり方ですね。今回に関しては、矢作先生もスターアイルを事前から注目していたのは知っていましたから、「取れるかどうかは分かりませんが、落とせたらお願いします」とは言っていたのです。

田中成奉オーナー

田中オーナーがクラシックを嘱望するスターアイルの2014


-:期待の一頭はリーディングトレーナーのもとで管理されることも決定しており、期待が膨らむばかりですね。どういった距離、条件での活躍をイメージしていますか?

田:血統的にもクラシックを狙える馬だと思っています。それだけ高い値段を出した訳ですから、そういう期待がないと、あそこまで高い馬はなかなか買えないですね。競馬ですから走ってみないと分からないですが、クラシックを狙うには、ある程度高い馬も買っておかないと狙えないかな、という考えもあるので。そんな期待を込めても、スターアイルでクラシックを狙いたいですね。

-:オーナーの希望としてはクラシック、王道路線も目指したいですよね。

田:もちろん1頭、2頭はそんな活躍馬が欲しいなと思いますよね。安く買った馬からそういう馬が出てくるのが何よりですが、今まで馬主をやってきて、クラシックに乗る馬はそういう血統馬が活躍する確率が高いのは分かっていますので。必ずしもそうとは限りませんが、可能性的には高まるので、やっぱりそれなりの値段を出して買わないと、王道路線は難しいかと思っています。

田中成奉オーナーSPインタビュー(2ページ)
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