凱旋門賞の傾向[和田栄司コラム]

トピックス

オルフェーヴルとキズナが出走する第92回凱旋門賞が迫って来た。5歳牡馬のオルフェーヴルと3歳牡馬のキズナでは、データ上キズナが有利と出た。なぜなら過去10年の傾向では、古馬2勝に対し、3歳馬が8勝と圧倒しているからである。しかし、日本馬2頭で競走する訳ではなく、今年は目下1番人気オルフェーヴル、3番人気ノヴェリストを相手にチャンスありと見て多くの3歳馬が挑戦して来た。

凱旋門賞過去10年の傾向を更に半分に割ると、古馬1頭、3歳馬4頭は変わらないが、前半と後半では大きな違いがある。前半は、ダラカニ、バゴ、ハリケーンラン、レイルリンクなどがニエル賞を前哨戦に使って勝った。ところが2007年の4歳牡馬ディラントーマスが勝った凱旋門賞ではニエル賞2着のサガラが3着、また2009年はニエル賞を勝ったキャヴァリーマンが同じく3着とニエル賞組が精彩を欠いた。

これは2006年に仏ダービーが2100mに距離を短縮、パリ大賞典が2400mに伸びたことと大きな関係がある。初年度はパリ大賞典を勝ったレイルリンクがニエル賞を勝って臨み優勝したが、その後が続かないのは他に理由があるからだろう。変わりに後半はザルカヴァ、デインドリームの2頭の牝馬を含み、シーザスターズとワークフォースの英ダービー馬が勝っている。

また2011年のデインドリームの年は、2着に3歳牝馬シャリタ、3着に4歳牝馬スノーフェアリーと牝馬が上位を独占、更に昨年の4歳牝馬ソレミアの優勝に繋がっている。元々凱旋門賞は牝馬の活躍が顕著で、1979年のスリートロイカスから、デトロワ、ゴールドリヴァー、アキイダ、1983年のオールアロングまで5年連続で優勝、凱旋門賞の歴史の中でも18回優勝馬を送った。

オルフェーヴルが5歳で優勝するとなると、2002年のマリエンバード以来11年振りになり、古馬の連勝では2001年のサキー、2002年のマリエンバード以来となる。更に前哨戦のフォワ賞を勝って凱旋門賞を勝つとなると、1984年のサガス以来(サガスは1985年にもフォワ賞を勝って臨み1位で入線したものの、2着降着になった)29年振りと言うことになる。

このようにデータ上では、オルフェーヴルやノヴェリストには不利な傾向が出ている。それならやはり3歳馬が有利である。しかし、今年の3歳馬は例年の3歳馬に比べてどうなのだろうか。英ダービー馬ルーラーオブザワールド、仏ダービー馬アンテロ、愛ダービー馬トレーディングレザー、パリ大賞典勝馬フリントシャーと揃ってはいるが、絶対的な信頼は寄せられない。

ルーラーオブザワールドは3歳デビューで3戦3勝の成績で英ダービーを追い込み勝ちしたが、愛ダービーではトレーディングレザーの5着に敗れた。バリードイルは、その敗因を使い過ぎと考え、夏を全休してニエル賞(2着)に備えた。トレーディングレザーは凱旋門賞が今季8戦目、使い過ぎの感は否めない。アンテロのスタミナにはファーブル調教師も心配しているし、フリントシャーでは物足りない。

そうなるとニエル賞を勝った日本ダービー馬キズナにも大いにチャンスがある。日本ダービー以来となる前走であれだけのレースをして、しかもルーラーオブザワールドに短頭差で勝った。両馬は久々の実戦であったことを考えれば当然上積みは期待出来る。そして最大の惑星となると仏オークス馬で前哨戦のヴェルメイユ賞を勝ったトレヴになるだろう。

モーティヴェーター産駒のトレヴは、昨年9月のロンシャン競馬場のマイル戦でデビュー勝ち、今季は5月サンクルーのマイル戦を3馬身半差で勝った後、6月に仏オークスで4馬身差、2分03秒77の驚異的なコースレコードを樹立した。2週前に行われた仏ダービーが稍重の馬場2分07秒89で勝ったアンテロ、いくら良馬場に変わったとは言え4秒以上も違うのでは話にならない。

トレヴは前哨戦でも仏オークスと同じレース振りで勝ち、ニエル賞より100分の82秒速いタイム(因みにフォワ賞より4秒65速い)で追い込んでいる。ヴェルメイユ賞/凱旋門賞の連勝はザルカヴァ以来となるが、ここまで4戦4勝の内容が凱旋門賞馬に相応しく思える。同世代の牡馬よりも一歩も二歩もリードしているようだ。

気になる天気の方は、昨日と今日がくもり時々雨、昨日のメゾンラフィット開催は気温21度の中、馬場は稍重だった。天気予報では金曜日に激しい雷雨が予想される。ウイークエンドロンシャン6日当日の気温は12度と、かなり冷え込みが予想されるが乾燥するらしい。土日で金曜に降った雨が、どの位回復するかも気になるところである。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。