芦毛のディープインパクト産駒、スマートレイアーが重賞初制覇!

トピックス


14年4月12日(土)2回阪神5日目11R 第57回 阪神牝馬S(G2)(芝1400m)

スマートレイアー
(牝4、栗東・大久保厩舎)
父:ディープインパクト
母:スノースタイル
母父:ホワイトマズル


【このレースの全着順・払戻金はこちら】

ひとつ前のレースで出遅れたルナフォンターナが、馬群の真ん中を割って1200芝で勝った。以前の阪神ではあまり見られない光景であった。そして傍の馬がゲート内で立ち上がるのを観て嫌な予感がしたスマートレイアーのゲート。秋華賞でもゲートが巧くいかなかった事があった。そんな予感どおりに、今度はスマートレイアーもつられて立ち上がった瞬間にゲートが開いて3馬身の出遅れ。万事休すかと思いきや、直線で大外から伸びてくる白い馬体。思わず口笛が出る様な切れ味でゴール板を通過していった、スマートレイアーの仕事ぶりに感嘆をしたものであった…。


『届いた~?』とスマートレイアーの上から訊いてくる武豊J。思わず、《頭ぐらい出ているよ~》であった。検量室前で握手したり会話をしたりしてたが、意外と時間がかかった。それもそのはず、ハナ差であり、あまり大きなハナ差ではなかった様子だ。
それにしても、この1400芝でそれも出遅れての差し切り勝ちとは、シナリオにはまったくないアドリブすぎる勝ち方であった。

レースはクロフネサプライズの逃げで始まった。1ハロン過ぎて先頭となったクロフネサプライズ。ミナレットエピセアロームを引き連れての逃げも、4コーナーを廻って残り300で、外からローブティサージュが来た時はまだ堪えていたが、残り200で内からエピセアロームが出てきた時に、ついに失速気味となる。
先頭となったローブティサージュ。内で脚を貯めていたウリウリが残り100過ぎから進路を前から外へと切り替えて出てきた。時を同じくしてスマートレイアーが大外を加速して来ていた。ローブティサージュの外へ出してゴールに駆け込んたウリウリ。その外を、スマートレイアーが僅か先にゴール板にたどりついていた。

このレースは、検量室のすぐ上の階段で双眼鏡を片手にレースを観ていた。後ろにはカメラマン席があって、あまり邪魔にならない様に体を縮めながらの観戦だ。近くにはJRAの職員も必ず二人ぐらいは観戦している場所だ。
ゴールが近づく程に、後ろで声がする。それもけっこう野太い声でだ。後で気が付いたのだが、どうやら須貝師がローブティサージュの応援をしていた声だった様だ。愛馬の復活を告げる走りに思わず声が出ていたのか、常々、声を出して応援するタイプなのかは知らない。ハナ・クビの際どい差であったのだから、応援する方にも力が入るのも良~く判る。

PVを観て思ったのはウリウリの進路である。内から最後は少し外へ出しての伸びだったが、あれが真っ直ぐに開いていたら、そのままロスタイムがなくいち早くゴールへ先んじていたかとも思える。
もっとも、スマートレイアーも3馬身近い出遅れがあってのこの芸当なのであるから、タラレバは通用しない勝負の世界である。

ともあれ、短いのではないかと思えた1400芝で、この結果を出してくれたスマートレイアー。これで昨年の桜花賞の日のデビューから1年で5勝。そして重賞初制覇と、すっかり成長もしてくれた。これで晴れてヴィクトリア・マイル(5月18日・東京)へ行けるはずだ。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。