タグルーダ無傷でキングジョージ制覇[和田栄司コラム]

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26日、英アスコット競馬場で行なわれた上半期の総決算、第64回キングジョージ6世&クイーンエリザベスSは、ポール・ハナガン騎乗のオークス馬タグルーダが3馬身差で完勝、1976年のポウニーズ以来となる38年振りの同一年でのオークス/キングジョージ・ダブルを達成した。

ノーブルミッションが27日ミュンヘン競馬場で行なわれるG1ダルマイヤー大賞(2着)に回り、愛バリードイルのペースメーカー役ホールオブミラーズとマイケル・オウエンの自家生産馬ブラウンパンサーが回避、更に当日昨年のパリ大賞典勝馬フリントシャーが取り消して8頭立てに変わった今年のキングジョージ、人気はテレスコープ、タグルーダ、イーグルトップ、マジシャンの順で続いた。

レースはトレーディングレザーが用意したレティモアがペースメーカーになった。2番手にコーラルエクリプスを勝って臨んだムカドラム、テレスコープは3番手、その後ろは内ロムスダル、外トレーディングレザー、マジシャンが6番手、後ろにタグルーダ、最後方イーグルトップの順。レティモアは序盤で5馬身のリードを取り、ムカドラムは更に2馬身半差を付けて2番手で回る。

オールドマイルコースに出て来て、4コーナーに向かうところで後続が一気に差を詰めて来た。残り3ハロンで体半分差に迫るムカドラムが4コーナーで早くも先頭、1馬身差でテレスコープ、その後ろは残り3ハロンで6番手だったタグルーダが残り2ハロンで3番手に上がり追い込んで来た。前の争いは粘るムカドラム、並びかけるテレスコープの激しい追い比べになったが、タグルーダが残り150ヤードで2頭を簡単に交わして行く。

優勝タグルーダ、グッド表示の馬場、タイムは2分28秒13、3馬身差が付いて2着はテレスコープ、短頭差3着ムカドラム、4着には残り1ハロンで4番手に上がったイーグルトップが入ったが、マジシャンは良いところなく6着に沈んだ。ポール・ハナガン騎手は初めてのキングジョージ、2011年のナサニエルを送り出したジョン・コスデン調教師は、近10年で2頭しかいない3歳馬優勝を独占した。

キングジョージは28頭の3歳馬の優勝を見て来たが、近10年は2頭のクラシックホースが挑戦したものの、2005年のオークス馬エスワラーは8着、2010年のダービー馬ワークフォースは5着に敗れている。1991年のジェネラスや2001年のガリレオは英愛ダービーダブルに続いてキングジョージを勝ったが、最近はキングジョージをパスする傾向が強い。その点で、ゴスデン調教師はハムダン殿下が1週前の愛オークスを使わなかったことに感謝している。

シーザスターズの初年度産駒タグルーダは、昨年9月ニューマーケット競馬場でデビューして以来、今季は準重賞に続きオークスとキングジョージを勝って4戦4勝。英ブックメーカーのスカイベット社は、タグルーダの凱旋門賞前売り人気を14/1から5/1に引き上げた。これに続くのは英愛ダービーダブルのオーストラリア、ドイツダービーを11馬身差で圧勝したシーザムーン、ディフェンディングチャンピオンのトレヴ、3頭が6/1で並んでいる。

今年は、コーラルエクリプスで先行したサムワットが3着、これに続くG1でタグルーダがキングジョージ、翌27日ミュンヘン競馬場のダルマイヤー大賞では、独2000ギニー勝馬で独ダービー2着のラッキーライオンが、G1タタソールズゴールドカップ勝馬のノーブルミッションを半馬身交わして優勝している。3歳クラシックホースの活躍で、オーストラリア、タグルーダ、シーザムーンに俄然注目が集まるのも当然である。

タグルーダの次のレースは、来月21日ヨーク競馬場で行なわれるイボア開催のG1ヨークシャーオークスに決まった。既に牡馬/古馬を相手に頂点に立った彼女が、古馬相手の牝馬戦での1戦になる。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。