不敗神話は続く ソウルスターリングが早めの先頭で押し切る!【平林雅芳の目】

ソウルスターリング

16年12/11(土)5回阪神4日目11R 第68回阪神ジェベナイルF(G1)(芝1600m)

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父フランケルがマイルを主戦場にして、16戦無敗で戦いを終えた。その血が日本にも入ってきて、ミスエルテと2頭の牝馬が無敗を引き継ぐ。
ミスエルテとの戦いは先延ばしになったソウルスターリング。2番枠から絶好位の3、4番手でレースを進める。逃げたアリンナが1000mを59秒2と、緩みのない流れを造ってくれた。直線の坂を上がってくる脚色からも、勝利は約束されたものとなった。対するリスグラシューは18番枠からのスタートミス。出た瞬間に馬体が全部見えたぐらいの差。当然に外々を廻っての追い上げ。最後までジワジワと詰め寄っては来たが、馬体を並べるところまでは行かず。全てでソウルスターリングに女神がほほ笑んでいた。
来年はミスエルテとの闘いが待っている、フランケル産駒の圧倒的な勝利だった。

香港競馬も同時に進行していて気になる。メインの香港カップはだいぶ遅く、日本時間の5時半だが、それまでのレースもチラチラとグリーンチャンネルで写しだす。目の前の戦いも香港をもと、“二兎を追う者何とか”で、定まらない気持ちで推移する。
馬体重の発表があって、ウゼットジョリーがマイナス10キロ。これがどうなのかはパドックでの周回で探るしかない。そのパドック、ソウルスターリングは長距離輸送もなんのその、じつに落ち着いて周回をしている。一方のリスグラシューは馬体が6キロ増えたのはいいが、少しうるさい。前回のアウェーでの東京とそう変わらない。レーヌミノルは変わらずしっかりと歩いている。下見の段階では、ソウルスターリングに強みがある様に感じた。

スタートが切られた。内枠のエムオービーナスが立ち上がった時に切られた。と言うか、ゲート内で何度も立ち上がっていた。隣のソウルスターリングはそのうるさい仕草につられずジッとしているのに正直、大人だなと感じいってもいた。18番枠で最後入れかと思いきや、リスグラシューは数頭残して先にゲートに入れられ、ややうるさいところを見せてもいた。

ウゼットジョリーが最後に入ってゲートが開いたが、内のエムオービーナスは仕方ないにしろ、リスグラシューの体が残っているのに驚く。どうやらゲートが開いた瞬間に、体が外へと流れてしまった様子。発馬自体は五分なのに、その後に外へ流れてタイムロスとなったか。
ソウルスターリングは、二の脚ですっと前に出て行っていた。絶好枠を当然に理解している鞍上だ。レーヌミノルが好発も、真ん中からアリンナの田辺Jがすっと先手を取っていった。2番手に松若Jのショーウェイが続く。レーヌミノルの後ろを、ソウルスターリングがピタっとマークするかの様だ。外からゴールドケープが上がって3番手キープ。レーヌミノルの内からソウルスターリングが交わして、前へと上がった。

ソウルスターリングは、どんどんと前へ出て行って2番手まで上がろうかの勢いだ。前はアリンナが3馬身ぐらい離して、最初の3ハロンを通過していく。後ろにいたジャストザマリンが外を追い上げて行く。ウゼットジョリーは集団の塊の一番後ろのインにいる。リスグラシューはまだもっと後ろだ。
先頭のアリンナは3、4馬身の差をつけて軽快に飛ばして行く。ちょうど中間の800mも46. 7と、まずまずのペースか。リスグラシューは後ろから4頭目で、随分と縦長の隊列でのけっこう後ろ気味である。
そろそろ各馬が前との差を詰め始める1000m通過地点。2番手グループが外へと並び加減となってきた。リスグラシューも一気に前との差を詰めて最後のカーブへと入っていく。内でソウルスターリングのルメールJが、ジッと時が来るのを待っていた。

4コーナーを廻って、内廻りとのポカっと開いた空間をルメールJは後ろを確認して、内ラチ沿いへとソウルスターリングを誘導する。その時のリスグラシューはまだ前のグループに取り付けていない。
ラスト300mのオレンジ棒を過ぎて、一気にトップギアに入れたソウルスターリング。ラスト200mのハロン棒を通過していく。その真後ろのディーパワンサが続くが、加速ぶりが敵わない。アリンナを交わして、レーヌミノルが2番手に上がる。やっと外をリスグラシューの姿が見え始める。

手綱を押すだけの所作だったルメールJ、ラスト100mぐらいの地点で、左ステッキを1発入れる。その時にソウルスターリングも手前を替えて、最後の仕上げに向かう。また手綱を押して後ろを確認するルメールJ。リスグラシューがグーンと加速してソウルスターリングに迫っていくが、時すでに遅し。PVで見ると、4コーナーを廻る時にやや外へ流れ気味。その後でも戸崎Jが手前を替えようとする動きが二度ばかりあった。その後からの追い上げ。全てスムーズに運んでいたソウルスターリングとは大きな差が出ていた、そんな感じであった。
レーヌミノル、ディーパワンサと続いて、ウゼットジョリーが和田Jのステッキ連打で渋太く脚を伸ばして5着。ジューヌエコールは11着。直線入口で内から出て来るレーヌミノルに弾き飛ばされていた。脚もなかったかと思える。

かくして、現時点で無敗の牝馬はソウルスターリングの3戦3勝と、朝日杯フューチュリティSへチャレンジするミスエルテの2戦2勝が、大きな括りかと思える。この直接対決は、来春までないのかも知れない。
そして昨日のチャレンジCも関東馬であり、夕方、香港で13頭遠征のなかで勝利したのも関東馬だけ。競馬サークルの今年の言葉は、『東』である。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。