寒風の中、グレンツェントが1番人気に応える勝利! 【平林雅芳の目】

グレンツェント

17年1/22(日)1回中京4日目11R 第34回東海S(G2)(ダ1800m)

  • グレンツェント
  • (牡4、美浦・加藤厩舎)
  • 父:ネオユニヴァース
  • 母:ボシンシェ
  • 母父:Kingmambo

東海Sの結果・払戻金はコチラ⇒

今年のダート路線最初の重賞は、この中京競馬場の東海Sから始まる。
関東馬の4歳牡馬グレンツェントが、僅かな差で1番人気の支持を受けた。道中中団でレースを進めたグレンツェントが直線入口で先行集団の外に取り付く。先行集団から最内のモルトベーネが前に出たところを、ゴールに入る少し前で半馬身交わしての勝利。
ここも関東馬と、相変わらずの東の攻勢ぶり。東高西低の風は今年も吹きまくっていきそうだ。人気を二分したアスカノロマンは好枠を生かせずの位置取りとなって、最後まで馬群から抜けられずと、先行できない時の脆さを露呈してしまっていた。

ゲートから観てみよう。
ややゲート内でつっかけ退った時にゲートが開いたアスカノロマンが、半馬身とは言わないまでも、やや体勢が悪かった。インカンテーションもガタガタした後で、これまたタイミングが悪い出となった。リッカルドは躓いてしまった。ショウナンアポロンにモルトベーネが好ダッシュ。トウショウフリークもその2頭に遅れじと、勢いをつけて前へ。そのトウショウフリークが外へ動いて、後ろのアスカノロマンが最初のカーブを弾かれる様に外へ出ていかざるを得ない流れとなる。その間に後ろから、リッカルドとピオネロがすーっと前へ出て行っていた。アスカノロマンの外にはグレンツェントにカラクプアがいた。

最初の1ハロンは13.0はゲートからだから、遅い数字は仕方あるまい。次の1ハロンは各馬が位置取りを主張するところで11.5とやや速い流れ。その後でカーブに入っていくあたりで13.6で次も13.1と、かなりゆったりの流れとなっていく。
ショウナンアポロンが先頭で2番手にピオネロ、その後ろが内にモルトベーネで外にリッカルド。トウショウフリークがいてその後ろにアスカノロマンがカラクプアと並んでいるが、やや外へと出しているのが判る。真後ろの内にモズライジンとグレンツェントが並ぶ。ロワジャルダンから4馬身ぐらいポツンと離れた最後方が、カゼノコ。

流れが落ち着いた向こう正面では、内目を進出するメイショウウタゲの動きが目立つ。よくこんなにスイスイと上がって行けるものだなと思えるほど。馬群が内を開けているのだろうと思える。そのメイショウウタゲの外にはグレンツェントらがいる。同じようなポジションにアスカノロマンがいること自体が、アスカノロマンには良くないだろうと推測する。前々で粘っこいレースをするのがアスカノロマンであろうに。
逃げるショウナンアポロンが絶妙なペースで行っているが、その横にいるピオネロよりも、内目の3番手のモルトベーネの行きっぷりの良さである。やはり稽古の動きがかなり目立っていた水曜の坂路を思い出す。 そして馬群は3コーナーを過ぎてピッチを上げ、4コーナーへと向かっていく。

4コーナー手前ではカゼノコ1頭だけまだ2馬身ぐらい後方だが、後はほとんど差がないほどの塊となってきた。だが相変わらず先頭のショウナンアポロンの手応えは良く、3番手内のモルトベーネの手応えにかなり余裕があるのが見える。そしてショウナンアポロンを頂点にした三角形でピオネロ、リッカルド、カラクプア、グレンツェントに大外ラストインパクトが、横斜め並びで姿を現す。
アスカノロマンは巧くカラクプアの間を抜けて前へと顔を出し始める。ラスト200の手前でショウナンアポロンがまだ半馬身リード。外にピオネロでリッカルドの外では顔を覗かせるアスカノロマンと体半分リードのグレンツェントだ。内ではモルトベーネの内をメイショウウタゲが狙うがかなり狭くて入りきれなく後脚を流し気味となってしまう。

200を過ぎて前はショウナンアポロンとその内のモルトベーネが凌ぎを削る。だがグレンツェントが鞍上の横山典Jのステッキに呼応してジワジワと伸びだし前との差を詰めていく。同じリズムで追いだしていく横山典Jに伸びだすグレンツェント。内から抜け出そうとしたモルトベーネを抜いて体半分リードでゴールをした。

直線に入るあたりでのグレンツェントとアスカノロマンでは、大違いな行きっぷり。グレンツェントは外からすっと反応して前へと出て行けているのに、アスカロノマンは動けない馬のなか。とは言え、勢いに鋭さがなかった。いつもと違う戦法となってしまったアスカロノマンには、苦しい戦いとなってしまった様だ。
またショウナンアポロンの後ろで、モルトベーネがラチ沿いを前へと狙っていた。その後ろのメイショウウタゲが狭さを感じたのか外へ出そうと試みるが、またそこも狭くなったのか、再度内へと突っ込む。そんな内での攻防もあった。スムーズなら、メイショウウタゲがもっと肉薄する2着争いを演じていたかも知れない。

大外を後方からカゼノコが、けっこうな脚を使って差してきた。かなりいい伸びはみせていたが、さすがに3着争いに参加するまで至らず。ピオネロ、アスカノロマンらがその後での入線となった。

ちなみに横山典Jがステッキの使い方で戒告を受けていた。数えてみた。最初に2発、それから14発を連続で入れていた。同じリズムで促していたのだが、数が多いとの指摘なのだろう。最後に締めの1発を入れた後にステッキを右手に収めて、手綱を持ってのゴールと美しいフィニッシュであった。

東のAJCC杯ではタンタアレグリアに騎乗した蛯名Jが勝ち、中京ではその1歳上の横山典Jの勝利と、ベテラン勢が大活躍。蛯名Jと同い歳の武豊Jはマカオ競馬参戦で参戦できなかったが、同じ《ユタカ》の稀勢の里が優勝して横綱昇進を確実にしたりと、その世界で長いこと頑張ってきている名優たちのいい活躍が観られた。

外は雪、雪、雪…と寒いが、ベテラン勢の心は煮えたぎっているのであろうと推測できる。そんな競馬でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。