そう言えばイクイノックスが逃げて勝ったのが《ドバイ・シーマクラシック》だった。あの馬でさえも逃げの手に出れる鞍上の度胸の良さだ。

去年秋の天皇賞、パンサラッサの逃げ切り確定!と思った直線で差し切ったイクイノックス。ドウデュースのダービーで将来は末恐ろしい馬になるのかもと思った予感が当たった。もう、有馬記念は勝利を疑いもしなかった。

ただ解せないのは宝塚記念を使った事。あの暑い時期に戦う意味があるのは何?といろんな調教師に聞いて廻った。《勝ちに来たんでしょう》が多数の返事だった。あのツケがない事を願う。

ドウデュース、ダービーまでは思う競馬、思う結果を出した。秋、ニエル賞、凱旋門賞と??の連続。京都記念で少し留飲を下げたがドバイでドクターストップのアクシデント。この秋は完全復活を狙う。脇を固める同じ4歳世代も多い。また、黄金コンビのプログノーシスが国内GⅠ初挑戦も見逃せない。

【菊花賞の回顧】

23年10月22日(日)京都11R 菊花賞(G1)芝3000m)
  • ドゥレッツァ
  • (牡3、美浦・尾関厩舎)
  • 父:ドゥラメンテ
  • 母:モアザンセイクリッド
  • 母父:More Than Ready
  • 通算成績:6戦5勝


好天に恵まれた京都競馬場。画面に映る、人、人の多さに驚く。観客の前での菊花賞は何年ぶりだろう。これこそが競馬だと嬉しくなった。そしてスタートして直ぐに湧いた菊花賞もそうは記憶にない。

大外のドゥレッツァが今までにした事もなかった、ビックリする逃げの手。そして一旦は3番手と下がったが脚を貯めていたのか、4コーナーでの抜けだし。まさしく《ルメールマジック》と言えようか。マジックマンの異名を持つモレイラの3馬身半前を涼しくゴールして見せた。

最大のポイントは逃げたのもあろうが3コーナーに入る前で、外に居たリビアングラスが内へと入ってきた処だと思える。ルメールはそこで後ろをチラっと見て、リビアングラスの外へと進路を出してきた。内ピッタリだったそれまでと変えた。

そして坂を下り、直線でリビアングラスの外を難なく抜けて後300の赤い棒から追いだして行った。そこの少し前の地点ではタスティエーラをソールオリエンスが被せるかの様にあがって行った。タスティエーラは外へ行けないから内へ入らざるを得ず。逆にそこはポカッと開いた空間。スンナリと前へ出てすぐ前にはドゥレッツァ。かなり近づいた時もあった様に見えたが最後はもうひとつ離された。

外を追い込むソールオリエンスはまたいつもの脚を使うのではと固唾を飲んで見守ったが、リビアングラスを交わすだけだった。今の淀だから差しが利くと思ったのだがそうは行かなかった。先週の当欄ではドゥレッツァが馬体回復、それも大きく増えてきていいと書いた。まさしく12キロ増。夏の昇り馬のメジロマックイーンを彷彿させた。距離3000をほぼ最短で進めて勝利したルメールのテクニックが光った一戦だった。

これで牡馬3冠は全て関東勢。全てを分かち合った形となったが新星のドゥレッツァが出てきたのがいい。牝馬は3冠の関西馬。牡馬は東高西低。この先はどうなのか。