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兼武弘調教助手

デビュー前からの評判に偽りなく、理想どおりの3連勝でクラシック路線に乗ってきたトーセンスターダム。脚質からもこの皐月賞が鬼門になろうが、父の三冠馬ディープインパクトもそう言われていたことを思えば、同じ武豊騎手を背に難なくクリアしてしまうのかも知れない。トゥザワールドとの二枚看板で挑む池江厩舎・兼武弘調教助手に、僚馬とのタイプ的な比較などをしていただいた。

今回のローテーションを選んだ真意

-:同僚の弥生賞馬トゥザワールドにとっては強敵となるトーセンスターダム(牡3、栗東・池江寿厩舎)についてお伺いします。前走のきさらぎ賞はギリギリのアタマ差でしたけど、勢いはかなりあったので、写真を撮っている側としては「勝った」と分かりました。この時のバンドワゴンは、一旦スタートしてから下げようとした場面が見られました。下げてどれだけ折り合えるかを試そうとして、途中で止めた感じでしたね。

兼武弘調教助手:そういう感じには見えましたね。相手のことですから、僕が言えたことではありませんが。

-:トーセンスターダムは、いかにもディープインパクト産駒というような軽さ、瞬発力を見せてくれましたね。この馬の一番の心配点は、やはりコース形態でしょうか。中山の2000mで届くのか?と思っているファンも多いと思います。最後方からレースを、と決まったわけではありませんが、あれほどの素晴らしいキレを生かさない手もないのかなと。

兼:確かに中山はトリッキーなコースですし、直線も短いですからね。まだまだ未知な部分もありますし、やってきた競馬も少頭数のレースばかりですから、多頭数になってどのような感じの競馬になるのかといったように、もちろん不安はあります。それでも、この馬の成長力、伸びしろを考えると楽しみの方が大きいです。

-:成長力という言葉が出ましたが、新馬戦から3連勝できている中で、どの辺りが一番変わってきましたか?

兼:2歳の時はまだ華奢というか。トゥザワールドは筋骨隆々で、ガッチリしたイメージですけど、どちらかと言うとスラッとしたイメージでこの馬は思っていましたけどね。それでも、心肺機能も相当高いと思います。


「まだキャリア3戦ですし、もっと経験が欲しいところですけど、大目標はダービーという感じで作っています。皐月賞も本当に楽しみですよ」


-:前走はプラス10キロで490キロでした。ディープインパクト産駒にしては、それほど痩せ型ではなく大柄な方ですが、骨太ではなく、シャープなイメージなので、軽さが身上かなと思います。

兼:どちらかと言うと、良馬場で生かせるようなタイプとは思いますね。

-:それだけに、馬体を見るとやはり京都がバッチリ合いますね。逆に中山の舞台は未経験ですし、輸送も初めてになるので、未経験な部分がレースでどう影響するか気になるところです。

兼:まだキャリア3戦ですし、もっと経験が欲しいところですけど、大目標はダービーという感じで作っています。

-:それでも、皐月賞は避けて通れない舞台ですよね。

兼:もちろんそのとおりです。この馬も期待できる能力のある馬ですし、ここまで順調に来れました。

-:きさらぎ賞から間隔が少し空いていますが、その辺は皐月賞に影響しそうですか。

兼:先ほども言ったようにダービーが大目標なのでね、そこに最大のピークを持っていこうと考えて、どれが一番選択肢としていいのかを逆算した時に、このようなローテーションになりました。

-:これだけ能力の高い馬なので、大一番はダービーと見据えたとしても、皐月賞でも十分上位争いはできそうですか?

兼:本当に楽しみですよ。



当日にチェックしておきたいポイント

-:当日に雨が降っているよりは、良馬場の方が良さそうですか?

兼:極端に悪くなければ、というところです。僕が乗っているわけではないですけど、どちらかと言うと良馬場のほうが、となりますよね。

-:今週はCWコースで追い切られましたが、動きはいかがでしたか?

兼:やっぱり抜群だったみたいです。「ちょっと余裕があるかな」という感じでユタカさんは言っておられましたが、1週前の段階で輸送も込みで考えると、これぐらいの余裕があって良いかなと思いますね。あと1週で態勢は整うと思います。

-:「ちょっと余裕がある状態」というのは、体重でいうとどれくらいでしょうか?

兼:498キロで先週から+2キロ。しっかり調教できてプラスなのでいいと思います。

-:前走は成長分を含めて490キロでしたが、よりちょっと余裕がある感じですね。

兼:ええ、非常に成長しているなと感じますね。





-:皐月賞では、トーセンスターダムの着順もそうですが、輸送してどれくらい体重が減るのか、どんな雰囲気で歩いているのか、そういう面もダービーに向けて、チェックしておかないといけないですね。

兼:その必要がありますね。

-:まだ、未知の部分も多々ありますが、その分可能性も期待できます。

兼:本当に、能力ではヒケをとらないものがあると思うんでね。

-:トゥザワールドにとっては、同厩舎に怖い強敵がいますよね。

兼:ということですね。両方1着だと良いんですけどね(笑)。

-:トーセンスターダムの方が、若干展開に左右される危険性はあると思われますが。

兼:その辺はジョッキーにお任せです。どんな乗り方すればいいかは分かっていると思いますから。心配していませんよ。

-:トーセンスターダムとトゥザワールド、2頭を応援しているファンにメッセージをお願いします。

兼:皐月賞で、どちらも人気になる馬を、ウチの厩舎から出走させることができて、大変嬉しく思いますし、本当に頑張ってほしいなと思います。その先のダービーに向けても、良い競馬ができればいいですね。応援よろしくお願いします。厩舎としても、年明けから重賞もたくさん勝つことができていますし、良い状態でクラシックに臨むことができるので、これを持続していきたいと思います。

-:大一番に強い池江厩舎なので、期待しています。

兼:ありがとうございます。

共に皐月賞へ出走
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【兼武 弘】 Hiroshi Kanetake

滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗り(エアラフォンやバトードールを担当)を経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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