関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

吉田豊騎手

格上挑戦、10番人気の身で挑んだ青葉賞は、直線で鬼気迫る追い込みを見せ、今期で定年となる大久保洋吉調教師と最後のコンビでのダービー参戦を確定づけた吉田豊騎手。それも叔母にメジロドーベルを持つショウナンラグーンでと言うのだから、血統におけるドラマを感じずにはいられない。デビューから7戦で全ての手綱を取ってきた主戦騎手に、日本ダービー出走までの軌跡を語っていただいた。

勝って権利を取れた青葉賞

-:ショウナンラグーン(牡3、美浦・大久洋厩舎)の前走の青葉賞へ向けての調整時に気を付けていたポイントなどがあれば教えて下さい。

吉田豊騎手:1勝馬で抽選対象だったので、レース自体に出られるか分からなかったのですが、府中の長い距離は合いそうな雰囲気がありましたし、(出走枠に)入ってくれればいいな、という感じでいました。除外になれば、翌週にでも自己条件の500万に使ったと思いますし、そこまで青葉賞を意識したイメージでの調整というわけではありませんでしたが、どんな条件でも、レースに出走するということに関しては良い状態だったと思います。

-:レース当日の気配はいかがでしたか?

吉:その前にちょっと体が減ったので、どれくらい戻っているのかな、という気でいました。プラス体重で出られたので、そういう意味では良かったなと思いました。この馬は使っていくたびに、どんどん大人しくなっていくので、無駄な力を使わずに競馬に臨めます。

-:実際のレースは、スタートから振り返るといかがでしたか?

吉:折り合いは意外と上手な馬なので、長い距離ですし、力ませないように上手く運んで、リズム良く走っていました。最後は脚を使う感じでいたので、あとはどうやって捌こうかな、と考えていました。

-:直線を向いてからはいかがでしたか?

吉:上手く間を割ってこられたので、そこそこ皆と走れるな、という感じでした。外側の集団の中で、1番抜け出せそうになったので、これは何とか権利を取れると思いましたね。内側に抜けていた馬がいたので、外側の集団を抜けば2着で権利が取れると思っていたら、最後の最後にもうひと伸びしてくれました。

-:伸びそうだなという手応えで道中は追走していたのですか?

吉:そうですね。力まずに走ってくれました。ここ3戦くらい、抑える競馬をしだしてからは、終いきっちり伸びてくれます。



使えるかどうかの初戦から確実に成長

-:最初の頃から乗られていての変化について教えて下さい。函館でデビュー前の追い切りから乗られていますが、1番最初に跨った時の印象はいかがでしたか?

吉:まだそういうところはあるのですが、全く力がなくて、緩い馬でした。柔らか味があったので、しっかりしてくれば良くなる雰囲気ではいたのですが、入ってきた頃は走る方に真面目じゃなかったり、何かあるとパニックになったりしていました。

-:若さでしょうか。

吉:そうですね。だから最初は、無事に使えるのかな、競走馬としてデビューできるのかなという感じでいましたが、函館に行って上手く使えるようになりました。

-:まずは使えるかどうか、というレベルだったのですね。

吉:そうですね。そういう意味では、緒戦はそれほど勝ち負けを意識できる感じではありませんでしたが、まずは無事にレースを終えることが出来て良かったと思いました。

-:レース後の状態はいかがでしたか?

吉:またすぐにレースを使う予定で追い切りもしていましたが、その後にトモにちょっと疲れが出たので、放牧に出ました。


「抑える競馬を意識的にやったら、500万で良い脚を使ってくれました。それからあの馬の形が決まってきました」


-:放牧から美浦に戻ってきて、北海道の時とは変ってきたなという感触はありましたか?

吉:乗り手の言うことを聞くようになってきていたので、だいぶ大人になったなという感じはありました。調教も、終いも動くようになってきましたので。

-:そこからすぐに勝利しましたよね。

吉:休み明けですぐに勝ったのが大きかったです。どれくらいやれるのかなと思っていたのですが、すんなり勝ってくれたので、使い過ぎにならず行けたのが大きかったです。

-:良いタイミングで勝てたのですね。次の京成杯では、これまでよりも前に行く形になりましたが。

吉:好位から脚を使って勝てたので、京成杯も前に行こうと思っていましたけど、ちょっと擦られて、その時だけ掛かったんです。それで3番手くらいまで行ってしまって、4コーナーでは苦しい感じになってしまいました。掛かったのはその時だけですが、その後からちょっと抑える競馬を意識的にやったら、500万で良い脚を使ってくれました。それからあの馬の形が決まってきました。

型が定まったセントポーリア賞

-:ここまでのキャリアで、大きな転機になった一戦はどこになると思いますか?

吉:京成杯の次のセントポーリア賞(3着)だと思います。こういう感じで行けば、これだけ脚を使えるのだと、先生(大久保調教師)も僕も分かりました。上手く道中を運べば脚を使える、と分かったあそこが転機だと思います。

-:現状でのショウナンラグーンの良さや強み、特徴はどんなところですか?

吉:折り合い面に苦労しないところです。京成杯の時は出して良いところに行こうとした時に擦られて掛かりましたが……。意外と掛かる馬ではないです。

-:終いを生かそうという形に方向転換してからは大丈夫ですよね。

吉:馬の後ろに入ってしまえば、そこにいよう、という感じの馬です。



-:最初の頃は子供っぽいところがあったという割りには、レースでは大人しいんですね。

吉:意外と前に出たがらないんですよね。だから、勝ち味の遅い馬という感じで、500万の時も2、3着というのは、グーンと行く感じではなく、馬がこの辺でという感じでした。だから、青葉賞の時も相手なりに走れるなという感じで、そこから突き抜けるという感じのタイプではまだないなと思っていました。

-:それが青葉賞では良い脚を使ったのですね。

吉:最後きっちりと頑張ってくれました。勝つにしてもああいう感じなんですよね。2、3馬身とかちぎるタイプではないです。相手なりに頑張って走ってくれる馬です。

師匠の馬で挑む最後の日本ダービー

-:次はもっと強いメンバーになりますが、どれくらいやれるという気持ちですか?青葉賞後の調整過程はいかがでしょう。

吉:1週前追い切りで乗りましたけど、変わりなくきていますね。ウッドで併せましたが、テンの入りも良かったですし、追走もラクでした。気持ち良く走らせることが出来ましたし、前走の反動も無さそうです。

-:東京2400mを青葉賞で経験しましたが、ダービーではどんなレースをしますか?

吉:まだ全然考えてないです。枠順が出てからだと思います。ここ何戦か良い競馬をしているのが、道中で上手く立ち回って、最後に脚を使っているので、そういう競馬になると思います。

-:結果を残してきているスタイルですね。

吉:なるべくなら、本当に後ろというのはキツイので、上手く良いところにもぐり込むのが1番良いとは思います。


「先生にとっては本当に最後です。チャンスに勝って権利を獲れましたし、悔いの残らないようにダービーまで迎えて、競馬に臨みたいと凄く思っています」


-:吉田騎手と大久保先生のコンビでのダービー出走が今年最後ということで、注目が集まります。吉田騎手のダービー初挑戦は大久保厩舎のトピカルコレクターでしたが、当時のレースの思い出はありますか?

吉:あれはダート馬だったのですが、ダートでポンポンっと勝ってトライアルのプリンシパルSに行ったんです。そこにダンスインザダークがいたので、皆が避けてあまり使わなかったんですよね。それで、前に行って2着で権利が獲れたんです。初めてダービーに乗れるということで、ワクワクしていたのは覚えています。

-:それから時を経て、先生が最後の年に一緒に迎えられる訳ですが、競馬ラボの読者に意気込みを聞かせて下さい。

吉:最後のチャンスといったら大袈裟ですが、先生にとっては本当に最後です。チャンスに勝って権利を獲れましたし、悔いの残らないようにダービーまで迎えて、競馬に臨みたいと凄く思っています。



吉田豊騎手&大久保洋吉調教師 師弟コンビでのG1勝利
レース名 馬名
2004年 阪神ジュベナイルF ショウナンパントル
1999年 エリザベス女王杯 メジロドーベル
1998年 エリザベス女王杯 メジロドーベル
1997年 秋華賞 メジロドーベル
1997年 オークス メジロドーベル
1996年 阪神3歳牝馬S メジロドーベル
吉田豊騎手はデビュー21年目の今年も大久保洋吉厩舎所属。これまで師弟コンビでG1を6勝。うち5勝をメジロドーベルで挙げている。
そのメジロドーベルの孫、ショウナンラグーンで挑むダービーは、来年に定年を迎える師匠にとってのラストチャンス。有終の美を飾れるか。


【吉田 豊】Yutaka Yoshida

1975年 茨城県出身。
1994年に大久保洋吉厩舎所属からデビュー。
JRA初騎乗:
94年3月6日 2回中山4日2R チャーリーブラボー
JRA初勝利:
94年3月6日 2回中山4日5R エリモハヤブサ


■最近の主な重賞勝利
・14年 青葉賞(ショウナンラグーン号)
・14年 福島牝馬S(ケイアイエレガント号)


1994年のデビューから一貫して大久保洋吉厩舎に所属。厩舎の看板馬であるメジロドーベルとのコンビで、3年目にしてG1初勝利を収めると、その後もビッグタイトルを総なめにし、自身も名を上げた。 引退が来年に迫っている恩師の最後のダービーに、メジロドーベルの孫にあたるショウナンラグーンで挑戦。所縁の人馬の想いを乗せて、競馬の祭典に挑む。
また、吉田隼人騎手と兄弟ジョッキーであることも知られており、2009年の福島記念ではワンツーフィニッシュを決めている。