待望のスプリント路線参戦 ベルカントがCBC賞に
2014/6/29(日)
直前の取材でも距離が懸念されていた桜花賞は、控える競馬で新たな一面を見せたものの、ベルカントらしさは出ず。かねてからほのめかしてきたように、その後はオークスに目もくれず、迷わずスプリント戦のCBC賞に照準を充ててきた。この中間は栗東坂路で驚愕のタイムを計時するなど、古馬との初対戦に準備万端。今回は角田晃一調教師の見据える未来をハッキリと聞かせていただくことができた。
－：CBC賞に出走予定のベルカント(牝3、栗東・角田厩舎)ですが、桜花賞以来のレースになります。4番人気に支持された桜花賞では、予想外に後ろから行ったなと思いました。
角田晃一調教師：あんなものかなと思います。前には行かないと思っていました。予想外と言うほどではなかったです。
－：むしろスピードが勝ったあの馬が、あれぐらいゆっくり走れた、という点ではどうですか？
角：そういう調教もしていましたし、朝日杯FSの時は前に行って止まったので。もともと距離適性に疑問もありましたからね。マイルは全てが挑戦的な感じだったのですが、それで2度、距離の壁に跳ね返されました。もともと新馬から1200で使って、ユタカさん(武豊騎手)も「スプリントの馬だけど、1400で勝ったから行くしかないだろう」という感じでしたからね。今回は1200を目標にしているので、折り合いよりも、この馬の本来の形を見せられます。あとは、古馬が相手になる点ですかね。
－：フィリーズレビュー前も先生に取材をさせて頂いて、スピードのコントロールが難しいとおっしゃっていました。そのへんは1200になってあまり考えずに競馬ができますか？
角：そういう心配事が排除できますよね。
－：古馬と戦うのもありますが、左回りも初めてですよね。
角：初めてですが、G3もG2も勝っている馬ですし、目標とするのはG1です。それに向けて、左回りを使って行きます。今年はスプリンターズSも(新潟競馬場で行われるため)左回りですしね。
－：早々とCBC賞のプランもありましたし、夏のスプリント王を目指すかと思っていました。
角：人間は欲深いので、全部が全部獲りたいですが、その先がありますからね。
－：それほどの期待ができる馬ですが、桜花賞後、3歳の春を越えた牝馬として、変化はありますか？
角：桜花賞が終わってリセットして、オークスやNHKマイルには行きませんでした。そこから3ヶ月くらいで、仕上がっている割には体重も乗ってきています。成長面でも進歩が窺えますし、調教も動いています。今日(6/26)も49秒ジャストでした。
－：デビューしてから10キロくらい増えています。小倉でデビューした時が466キロで、桜花賞の時が472キロですね。
角：ちょっとずつ増えている感じです。先週、追い切りをやって480を切るくらいだったので、今週やって477くらいですかね。
－：数字的には桜花賞と変わりませんか？
角：数字はあまり気にしない方がいいです。もうキッチリできているので、そこに数字が乗るだけと思ってくれればね。
－：坂路で49秒フラットは速すぎますね。坂路で49秒台が出る馬はなかなかいません。
角：短距離の馬になってきていると思います。3歳の春はそこまで出なかったですし、スピードに磨きがかかってきたと思います。49かつかつなら分かるけど、ジャストですからね。48秒台に行こうかとしているレベルですよ。追い切りが6時40分くらいの時計なので、これが開門直後だったら、もっと速くなるだろうし、あとは開けてみないと分からないです。
－：それは前脚のフットワークですか？
角：もともとがスプリンターですし、全体的に力をつけていますよね。精神的にも、今でも危ういところはありますが、2歳の頃よりはだいぶ成長して、使って行くうちにもっとタフで鈍感になって欲しいです。それが大人しくなり過ぎてしまうと、今度は走らないかもしれません。そこが競馬の難しさです。
－：短距離馬特有のピリピリしたところですか？
角：特に牝馬なので気で走りますし、それが大人しくなれば、俗に言う「お母さん」という感じでしょうが、まだ3歳なのでそこまでではないです。
－：楽しみが多いですね。
角：楽しみも多いですが、左回りなど、色々な不安もあります。今回のメンバーを見ても見劣りはしないと思いますが。
－：好時計が出る馬場だったら、余計に楽しみが増えますね。
角：来週はユタカさんに最終追い切りでサッと感触を確かめてもらって、あとはバトンタッチするだけです。休み明けもよく走ってくれる馬ですので。今回使ったら、どちらにせよ放牧に出す予定です。
－：今後の夏の予定は決まっていますか？
角：セントウルSからスプリンターズSに行く予定です。
－：ここを使ったあとは、1回休めるのですね。
角：ここに置いておく意味がありませんし、1回オフにさせます。気持ちがピリッと競馬モードになっていますが、それを維持させるのはいくらなんでも難しいですから。
－：セントウルSで叩いて、スプリンターズSというのが理想なのですね。どれだけのスピードを見せてくれるか、そっちを期待したいです。
角：逆に暴走とかしなければいいですが……。
－：1200の中でも、どこかで緩急をということですか？
角：古馬が相手なので、これだけのスピードを持っていても、どうなることか、という心配はあります。
－：長い直線と坂があります。
角：それはあまり関係ないと思います。距離が距離なので。1400の外回りも勝っていますし、どういう競馬になるか予想もつかないです。
－：もしかしたら、ちぎって勝つかもしれないですよね。
角：それはそれで良いことですし、ちょっと変わっていますからね。難しいとは思いますが、ユタカさんに任せます。難しさを一言では言えないタイプではあると思いますよ。
「馬はちょっとずつしか良くなりませんし、滑らかに良くなっていきますが、悪くなる時は一気に悪くなります。一気に悪くならないように、徐々に仕上げていきます。これが究極の仕上げ、というわけではなく、まだ始まりで、さらに上がある、と思いながら高めていきたいです」
－：パドックでこういう風だったら良いんじゃないか、というファンが見る上でのアドバイスをいただけませんか？
角：発汗があまりなく、落ち着いて、しっかりとチャカつかずに歩いてくれることですかね。
－：テンションが高いような仕草よりは、適度にということですね。
角：ジョッキーが乗ったらテンションが上がるので、なるべく消耗しないようにということですね。状態などは自信を持って出せると思いますが、あんまり仕上げると空回りする可能性もあります。
－：そのために、今週は速い時計を出して、来週はちょっと抑え目という感じですか。乗り役さんが乗ったら、馬も分からないですよね。
角：馬はちょっとずつしか良くなりませんし、滑らかに良くなっていきますが、悪くなる時は一気に悪くなります。一気に悪くならないように、徐々に仕上げていきます。これが究極の仕上げ、というわけではなく、まだ始まりで、さらに上がある、と思いながら高めていきたいです。それに精神と肉体がついてきてくれるかという感じです。
－：ありがとうございました。
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栗東の渡辺栄厩舎所属として騎手デビュー。89年のデビューイヤーに43勝を挙げ、同年のJRA賞で最多勝利新人騎手として表彰されると、翌年のエプソムC(サマンサトウショウ)で重賞初勝利。3年目には桜花賞(シスタートウショウ)で初G1制覇。
その後もジャングルポケットでダービーを制覇など、ヒシミラクル、フジキセキ、ノースフライトなど、幾多の名馬と共にG1通算10勝をマーク。JRA通算8322戦713勝を挙げ、一時代を築いた。 |
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