復活ローマンレジェンド 秘策を講じて一昨年ぶりのV2へ
2014/12/27(土)
-:去年の東京大賞典を使ってから休養してエルムSへ、それからまた休養して。休み休みで来たローマンレジェンド(牡6、栗東・藤原英厩舎)のチャンピオンズCでしたが、見た目的にやはりちょっと"休み明けかな"という感じがあったと思います。
牧つばさ調教助手:その通りだと思います。僕も「なんぼ休み明けでもこの馬は走る」といっても、ずっと触っている方からしたら、やっぱり叩き良化型なんですよ。
-:いい時の体というのは、筋肉の張りとかも、もうちょっと硬そうな筋肉の鎧を覆ったような時が、いい時のローマンレジェンドだったので、それがまだ柔らかそうな、ソフトな感じが体に残っていたので、チャンピオンCのレース内容は正直驚きました。
牧:僕も驚きました。
-:良かったのは、中京の馬場状態が初夏の開催に比べて、不凍剤が入っているのか、時計がかかるスタミナ傾向に変わっていたので、それがローマンレジェンドに良かったのかと思ったのですが、流れは向かなかったですね。
牧:間違いなくそうですね。あのスローペースになったら、やっぱりタルマエが残っちゃうし、あそこからのヨーイドンだと、最後は息が切れた感じがありました。
-:でも、休み明け、長期休養明けの一戦としたら、もう満点の内容じゃないですか?
牧:よく走っていると思いますよ。
-:それだけに、今回の東京大賞典はかなり上積みが見込めるだろうという、楽しみがあるのですが。
牧:あると思います。
-:チャンピオンCを使った後の良くなってきた点を教えてもらえますか?
牧:馬が"自分から走ろう"という気がありますね。2週続けて追い切って、別々のジョッキーに乗ってもらったのですが、前回チャンピオンズCを使う時の追い切りは「まだ少し道中力んでいた」と。やっぱり休み明けの分、変にハミを噛んでいました。競馬でも道中外から被せられてきた時にグッとハミを噛んで、サーッと上がっていったのですが、それはそのまま出ていたと思うんです。今回はその「変な力みが抜けてる」というふうに乗っているジョッキーも言ってくれてます。
-:それは岩田さんですか?
牧:岩田さんもそうですし、1週間前は鮫ちゃん(鮫島良太騎手)が乗ってくれたのですが、鮫島くんも「全然、前回よりいいわ」と言ってくれてますし。僕が自分で乗っても、休み明けよりかは馬が走ろうという気が出ています。
-:去年もJCダートから東京大賞典という同じローテーションでしたね。
牧:みやこSで3着に来たレースがあったんですが、3~4コーナーで外側に出す時に、馬にぶつけて出しているんですよ。右も左もボンボンとぶつけながら、キツめに当てて出ているんです。それから馬を怖がるようになったんですよ。馬が馬を怖がるようになって。自信をなくしたというか。
-:あんな体なのに。
牧:繊細なんですよ、この馬。他の馬が暴れた時に取る行動、反応の良すぎる行動が女馬っぽい動きをするので。それが連勝していた時はいい方に出ていたのですが、そのみやこSでぶつけて。あの時も調子は良かったのですが、あれで馬が怖がって、自信をなくしていました。JCダートは1枠1番を引いて、包まれてしまって、"怖いし、ヤメよう"と。
-:難しい……。
牧:難しいですね。
-:その後遺症があった東京大賞典。そして、エルムSまでは、骨折での休養期間でしたね。
牧:東京大賞典でトモを骨折しましたね。
-:逆にそれがリフレッシュできる期間になったのですか?
牧:そうですね。精神的なリラックスもあるし。
「自信は付いているので、たぶん大丈夫だと思いますね。エルムSはとにかく外をブン回してもいいから、砂を被らない位置で包まれないように回ってくれば勝てるんじゃないかなと思っていました」
-:後遺症が癒えたはずのエルムSで、これまたゴール前は厳しい競馬でしたね。
牧:ただ、あの時もまだ馬が自信を持っていなかったと思うんです。僕はエルムSには行けなかったのですが、レースを見る限り、斤量を背負っているとはいえ、あの着差しか付けられないというのは、まだ本調子ではないのかなと。馬がスムーズに回ってきて、1回でもいいから、"レースは怖くないんだよ"というのを馬が分かってしまえば、また同じようなレースができるんじゃないかと思っていたので、それは何回も負けている間に伝えてはいたんですが。
-:テーマは自信回復ですね。
牧:連勝していた時もそうでしたが、馬込みに入っても怖くなかったし、あの馬のレースシーンといえば、3~4コーナーから外をブン回して、一気に4コーナーでは先頭に立つ勢いを付けて勝つというレースぶりだったので、1回でもそういう競馬ができて、勝ってしまえば、馬に自信が付くんじゃないかな、とは言ってましたね。
-:たぶん怖がっていない時期も、ある程度気にはしつつも、馬の中で我慢してくれていたということでしょうか。
牧:そうですね。
-:それだけに繊細に乗ってあげないといけないわけですね。
牧:でも、もう自信は付いているので、たぶん大丈夫だと思いますね。エルムSはとにかく外をブン回してもいいから、砂を被らない位置で包まれないように回ってくれば勝てるんじゃないかなと思っていました。
-:この馬のフットワーク、大トビでダートの馬にしては独特なフォーム。乗った感じはどうなんですか?
牧:けっこう柔らかいんですよ。もうちょっと硬い感じには見えるかもしれないですが、柔らかくて、キャンターに下ろしたら、凄いパワフルなんですよね。グングン、グングン行くくらい。
-:体を凄く伸ばしますよね。写真を撮ってたらトモが伸びた時、前が伸びた時の横長感が凄い。だから腹筋、背筋とかを凄く必要とする馬ではないですか?
牧:競馬が終わった後、追い切りが終わった後、ちょっとしんどくなりますよね。背腰が。
-:そういう伸ばして縮めてというのもあるし、首の使い方とかも関係しますもんね。顔が凄くキツそうなんですが。
牧:顔は怖いですね。目とかも。殺し屋みたいな目をしていますからね(笑)。ファンの書き込みを見ていても「目が殺し屋だ」「スナイパーだ」みたいな書き込みをされているんですが、そういう目をしている時はやっぱり走っている時です。ちょっと「情けないなぁ」みたいな弱そうな目をしてるなと思う時は全然走っていないですよね。
-:馬って意外に表情や体にコンディションを出しますもんね。今朝(12/25)は良かったんじゃないですか?睨まれたんかなと。撮ってたら「睨むなよ」みたいな感じで。
牧:そんな感じになってました(笑)?それはいい目だと思います。ギローっと「目で殺す」ぐらいの目をしている時は調子がいい時だと思います。
-:でも、洗い場で昨日会った時は結構ホワっとしていて。
牧:そうなんですよね。馬房でも全然おとなしいんですよ。
ローマンレジェンド・牧つばさ調教助手インタビュー(後半)
「東京大賞典の敵は雨、長距離輸送?」はコチラ⇒
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プロフィール
【牧 つばさ】Tsubasa Maki
大阪府出身。競馬を好きになったきっかけはマヤノトップガンが勝った1995年の有馬記念で、馬と携わる職業に興味を持ち始めたのもこの頃。観光で行った鳥取の大山乗馬センターで「ここに来たら馬術の大会に出してやるぞ」と言われ、高校入学と同時に鳥取へ行くことを決意。高校3年時の国体では入賞を果たした。
卒業後は栗東ホース倶楽部に移り、競馬学校を志すも挫折。元々、牧場勤務への関心の方が強かったため、トレセンへの思い入れはそれほどなかった。しかし、牧場で勤めていた際に出会った藤原英昭調教師に「ウチに入ってみないか」と誘われ、もう一度競馬学校を目指すことに。
競馬学校修了後は師の言葉通り、藤原英厩舎に所属し現在に至る。ローマンレジェンドは自身が担当した中で、初めて重賞勝ちを収めた思い入れのある馬。栗東トレセン勤務6年目で、モットーは「誰が乗っても乗りやすい馬を作ること」。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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