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収穫はポジショニング、精神力、語学力

-:そういう理論的なことは分かっても、日本での体感というか、持っていたものがあるだろうし、最初はなかなか上手くいかなかったんじゃないですか。

坂:本当に、全然内に入れなかったですね。こんなにも入れないんだ、というくらい、最初の方は外枠を引いたら全然競馬をさせてもらえませんでした。それでも3~4カ月経てば多少は慣れてきたのですが、その頃は騎乗依頼をもらえなくて、ずっともがいている状態でしたね…。そんな中でオファーをくださったのが先述のライアン・バルフォー調教師だったんです。競馬開催がある度に騎乗馬を用意してくださって。

-:その頃はコミュニケーションが取れるようになっていたのですか。

坂:ようやく…ですね。少しずつ英語も話せるようになってきていました。調教で感じたこと、レースのVTRを見て思ったこと、それを自分の言葉で伝えることができるようになって、良い流れがきたんだと思います。

坂井瑠星騎手

-:オーストラリアではポジショニングの難しさがあって、褒められるポジショニングをしたとしても、勝てる訳じゃない。勝ちに結びつけるのが難しい中で健闘されましたね。騎乗技術的にはどこが一番進歩しましたか。

坂:ポジショニングでしょうか。向こうのタイトな競馬が少しは身に付いた気がします。捌けないリスクもありますが、それでも昔より対応出来るようになったのかなと思います。日本では流れが全然違いますが、活かせる場所はある。その引き出しは増えたと思います。

-:より内ラチに近いところにいるということですか。

坂:基本、ロスなく内に、という意識は本当に強くなりましたね。

「向こうのタイトな競馬が少しは身に付いた気がします。捌けないリスクもありますが、それでも昔より対応出来るようになったのかなと思います。日本では流れが全然違いますが、活かせる場所はある。その引き出しは増えたと思います」


-:この1年で相当成長しましたね。

坂:いやいや、まだまだ全然なんですけどね。2着になったレース等、取りこぼしたと反省することもありますから。

-:これは上手く乗れたと紹介出来るレースはありますか。

坂:う~ん、上手く乗れたなというのはないですけど…。オーストラリアの競馬ならありますけどね。レーシングドットコムというサイトに登録して頂ければryusei sakaiで検索したらレースVTRを観ることができます。

-:ジョッキーとしての体の使い方というのは、海外に行って変わりましたか。

坂:全然違います。体格も何から違うので、乗り方は明らかに自分で変えました。自分が行って学んできたものなので、細かくは伝えないでおきますね(笑)。

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-:ただ、オーストラリアの食事は高カロリーのものが多いですよね。

坂:僕は体重が軽いから、何も気にしなかったです。減量も1回もしたことがないくらい。ただ、食事はおいしくなかったですね(笑)。本当にハンバーガーやジャンクフードばっかりで。それに、体重管理への意識は日本人ジョッキーの方が高いかもしれませんね。体重オーバーをしたり競馬に来ないジョッキーまでいたり…。こういう人もいるのだな、というのは向こうに行って感じたことです。結果を出せばいい、といった感じでしょうか。

-:何もかも文化が違うということですね。タイトな競馬を経験して、日本の競馬場に戻ると大回りに感じますか。小倉や中山は小回りコースと言われますが。

坂:やっぱり日本はどこの競馬場も乗りやすいですよ。ラチ一つとってもちゃんとしています。向こうのラチはボコボコですし、馬場もボコボコ。すごいアップヒルやダウンヒルがあるんです。これだけ素晴らしい環境で乗れている日本の競馬はありがたいと思います。これだけ良い環境で、しかも賞金も高いとなれば、外国からジョッキーが来るのも当然だと思います。

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▲師匠の矢作芳人調教師と

-:久し振りに日本で乗ったら、坂井騎手自身も短期免許で来日した外国人騎手になった気分がしませんか。

坂:それは、みなさんにそう思っていただいたらありがたいですね。減量も、あと30勝分くらいあるので活かさないといけないかなと思います。

-:オーストラリアを経てアメリカ、香港もドバイも経験されました。若手の中では、経験豊富な騎手になりましたね。日本の競馬で一番強みになりそうなところはどこですか。

坂:オーストラリアで学んだポジション取りや、タイトなレースを重ねた経験もありますが、1年間海外でやってきたという精神的な自信が大きいかもしれないですね。また、まだまだですが、英語力がついたことで、オイシン・マーフィー騎手や香港のジョアン・モレイラ騎手と話をしたり聞いたりできるようになりました。ここも活かしていきたいですね。

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勝負の2019年へ まずは重賞制覇を

-:コミュニケーション能力はどの仕事でも上を目指すのに必要な要素ですからね。ところで2019年の予定は決まっていますか?

坂:ひとまず日本でずっと乗る予定です。まだまだ技術的に物足りないと思うので、もっと技術を上げて結果を出したいです。それに、僕が勝つことで“海外に行ったら上手くなれるんだ”と思ってくれる後輩もいるかもしれません。そうすれば、海外遠征する後輩も増えて、若手騎手全体のレベル向上にもつながると思いますから。

-:具体的な目標はありますか。

坂:数字は特に決めたくないですね…。言ったらそれ以上勝てなくなりそうなので。でも、重賞は勝ちたいです。これから少しでも上位を目指していきたいです。

「昨年は海外で乗って、今までの人生の中でも最も濃い1年でした。ミルコも20歳くらいで来日し、オイシン・マーフィーも23歳で世界の中で戦っている訳じゃないですか。そういうジョッキーにならないといけないと思います」


-:それは楽しみですね。2019年の坂井瑠星にとって、どんな飛躍の年になりそうですか。

坂:昨年は海外で乗って、今までの人生の中でも最も濃い1年でした。でも、世界を見れば珍しいことじゃない。ミルコ(・デムーロ騎手)も20歳くらいで来日し、オイシン・マーフィーも23歳で世界の中で戦っている訳じゃないですか。そういうジョッキーにならないといけないと思います。

-:オイシン・マーフィーがベンバトルでドバイターフを勝つところを、実際に観ている訳ですからね。

坂:ドバイのメイダン競馬場でリアルスティールの追い切りに乗せていただいたのですが、その時の景色が忘れられないくらい綺麗でした。4コーナーから直線に入るときのスタンドの威圧感が壮大でした。“ここで勝ちたい!”と思いました。

香港も直線に向いたところから見るスタンドの威圧感はありますね。リスグラシュー(牝5、栗東・矢作厩舎)やステファノスクロコスミアの追い切りに乗せていただきました。シャティン競馬場以外にもハッピーバレー競馬場に行って、ユタカさん(武豊騎手)やクリストフ(・ルメール騎手)の乗ったレース(「2018 ロンジン・インターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップ」)を見に行きました。いずれ自分もあの舞台に立ちたいと思いました。

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-:まだ若いのに、色々な競馬場で乗っていて凄いですね。

坂:コーフィールドCでは初めてG1に乗せてもらいましたが、同世代のジョッキーもいました。オイシン・マーフィーは遠い存在ですけど、やっぱりそういう立場を目指さないと。

-:日本でベンバトルのようなスーパーホースと出会えるようになれば良いですね。

坂:夢ですね。いつも大事ですけど、今年が勝負だと思っています。支えてくださっている関係者の方々には本当に感謝しています。日本に帰ってきてからはまだ思うような結果が出ていなので、早く期待に応えられるよう頑張らなきゃいけないと思っています。

-:馬券ファンも2019年の坂井瑠星に注目ですね。さっき教えてくれなかった、“体の使い方の進化”も含めて。

坂:進化したことを結果に出していきたいですね。

-:結果の背景には、馬が強くて勝ったというケースもあれば、上手く乗れたとケースもある。この2つが噛み合わないと勝てないレースもありますからね。楽しみにしています。ケガなく、制裁もなく。

坂:頑張ります。制裁もそうですね。2年目にフェアプレー賞をもらったことがありますが、この気持ちはずっと維持していきたいですね。これはずっと変わらない目標です。昨年、海外で乗ってみて、改めて日本の競走馬のレベルは高いと感じました。JRAという恵まれた環境で乗れることに満足せず、少しでも上を目指して努力したいです。

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