エリート街道だけがダービーじゃない。重賞ウィナーの母ながら、初勝利は3戦目。前走の京都新聞杯では11番人気の低評価を覆したレッドジェニアル。しかし、近3戦で手綱をとる酒井学騎手に伺えば、敗戦を踏まえての重賞初勝利という。末脚は常に堅実だが、これまで以上の相手、初物尽くしの一戦で、経験を武器にどこまで迫れるか。

2走前の敗戦が結びついた京都新聞杯

-:レッドジェニアル(牡3、栗東・高橋忠厩舎)と日本ダービー(G1)に挑まれる酒井学騎手に伺います。よろしくお願いします。京都新聞杯は、伏兵の扱いだったと思うのですが、改めて見れば、力はある馬だと感じさせられる馬ではあったと思います。勝因はどういったところにあったのでしょうか。

酒井学騎手:一番大きいのは、京都新聞杯の前(アザレア賞4着)のレースですよね。あの負け方で色々と知り得た課題もありました。というのも、上手く乗ることが出来なくて、思い通りの競馬をさせてもらえませんでした。

しかし、負けはしましたけど、馬のテンションがすごく高くなってしまっていたので、京都新聞杯に向けて、スタッフが本当に上手く持っていってくれたことが一番大きいんじゃないかと思うんですよね。

レッドジェニアル

▲2014年の菊花賞以来の重賞制覇となった酒井学騎手

-:アザレア賞では、外枠でもありましたよね。

酒:アザレア賞は少頭数で外枠(9番)だったのですが、頭数的にもペースは速くならないだろう、という見立てもありました。ただ、先を考えると、あまり後ろからポツンと行くのも避けたかったので、ポジションを取りにいくくらいのつもりで乗ったんですよね。それが、団子状態で前に壁を作れず、終始、馬を力ます形で走らすことになってしまいました。それでも、直線に向いた時に、一旦は先頭に立つくらいの姿勢は見せてくれていましたからね。その競馬を考慮すると、しっかり前に壁を置いて、道中リラックスさせて、溜めれば脚は使えるだろうと思っていましたしね。

-:前回、ゲートは以前よりも出ましたよね。

酒:未勝利勝ちの時はゲートを出てから馬にフッと寄られて、頭を上げて気にする部分があったんですよ。ただ、京都新聞杯はスッと出てくれて、その後も変に周りを気にすることなく、スムーズに馬の後ろに付けていけるポジション取りが出来ましたからね。僕が乗せてもらってからは、ある程度、出していくような競馬をしていたことが、実を結んだのかなと思いますね。一戦毎に成長はしてくれていると感じましたね。

レッドジェニアル

-:そして、スタートしてすぐに馬群の中に入れていられました。

酒:予想よりも周りが早め早めに動いてくれました。ただ、今回は腹を括っていたといいますか、末(脚)を信じて乗ってみよう、という意識がありました。そこで、自分も一緒になって動くというよりも、2箇所くらいで一呼吸遅らせて、そういうイメージでは乗っていたんですけどね。

-:この馬の上がりは堅実ですからね。

酒:そうですね。本当に、それをしっかり発揮してくれたのが、この間の京都新聞杯でしたね。一つ武器があるというか、そういう脚を持っているので。一方で、テンションの兼ね合いなどの条件や要素が力を出し切れるかどうか、関わってきますよね。

-:正直言えば、かなり使い込んでいますね。

酒:そうですね。ローテーション的には、厳しいところもありますが、このタイミングで権利を使うのだから、やっぱりそこに臨むことは当然のことですよね。

-:そういう意味では、馬群の中には入れていましたけど、あまり外から被されるような隊列では、競馬をされていない点は課題かと思いました。

酒:そうですね。動いてきた馬がスッと来たところや、直線を向く時に一瞬、外を狙おうかなと思ったのですが、前に(柴田)大知さんが乗っていたナイママがいて、こちらにはユタカさんのトーセンスカイがいたんですよ。レッドジェニアルが思ったよりも手応えがありそうで、直線まで辛抱できる程。逆にユタカさんの馬は脚色が鈍っていたので、外に捌くよりも、ここにいたら空くわと思って、それで4コーナー手前でここに嵌め込みに行ったんですよね。

勢いを付けて、遠心力を利用してスッと張れるように、グッと外に押しにいって、そこでしっかりと馬も嵌まってきてくれたので。勝負どころでフッと抜きそうになるようなところがあるんですよ。それでも、押せばちゃんと反応して、ポジションを下げずにスッと行ってくれたから。あそこでポジションが下がっちゃうと、厳しいんでしょうけどね。

レッドジェニアル

-:そういう意味では、東京でも3~4コーナーでは、そこまで忙しくないでしょうし、近い感覚で行けるのではないでしょうか。

酒:コース自体は問題ないと思いますけどね。左回りも大丈夫じゃないかと思っているので。それよりも、輸送は気になっていますね。

-:平坦に近い方が、この馬には良さそうですね。

酒:そう思います。阪神コースでも、ここからというところで脚色が一緒になった感じだったので、坂の影響はあるのかなと思いますね。

-:課題という意味では、未勝利勝ちの時は、直線ではステッキに反応して、尻尾を振っていましたね。

酒:やっぱり気難しいというか、上(乗り手)に対してまだ従順な訳でもないところはあるんですけどね。

-:キングカメハメハ産駒としては、繊細な気性といいますか、少し意外ですね。

酒:そうですね。お母さんがレッドアゲートですからね。そちらの方が出ている気はしますけどね。

レッドジェニアル

-:イレ込み対策として、前回は厩舎装鞍にしたということでしたね。

酒:そうですね。今回(京都新聞杯)からは厩舎装鞍で、なるべく競馬前に変なスイッチが入らないようにしましたね。繰り返しになりますが、それも先生とスタッフで色々考えながら、対策を講じてくれたところだと思います。中間も速すぎる時計は出していなかったんですよね。

-:それに、前回は坂路だけの調整になりましたね。

酒:そうですね。テンションをコントロールしていく方が重要だと考えながらやってくれていましたし、僕も中間は追い切りに乗らず、普通キャンターしか乗っていないんですよ。そこで、感触といいますか、どんな雰囲気か、コンタクトだけは取っていたのですが、速いところはやっぱり…、僕が乗ったら2秒くらいは時計を詰めちゃうと思うんですよ。自分でもセーブしなきゃと思っても、乗ると、どうしても時計を出しちゃうと思うので、その辺もスタッフの方が考えて、上手くやってくれたなと思って。

レッドジェニアル

-:前回は楽に流れに乗れたと思いますけど、ダッシュしてちょっとワンテンポ遅れる感じは、周りの馬を気にしてのことですか?

酒:未勝利を勝った時もそうですし、初戦に(北村)友一が乗っていた時も、完全に周りの馬を怖がって逃げているんですよ。それがあるから、友一もあえて馬群の中に入れないで、馬のリズムでジワッと行くというイメージで乗っていたと思います。ただ、それだと展開が向くかどうか、イチかバチかだなという気がしたから、僕が乗せてもらってからは、ある程度、ポジションを取りにいくというか、出来ればいつもよりも2~3列前で競馬をしたいなというイメージで乗りましたね。

-:今までの競馬を見ていると、外側から圧を受けている感じはあまりないですし、未勝利の時は道中から外を回ったのか、外にモタれていたのか、どうでしたか?

酒:外に張っている感じもありましたね。やっぱり馬が逃げようとする格好は見せちゃうので。コーナーのところは別に外に壁があっても、逆にそこで壁を作って、直線でスッとスペースが出来たところに出せた時にバッと脚を使いたい。道中で気にしていても良いけど、力みだけは早めに抜いて、スッと折り合えるところで競馬をしたいなとは思いますね。

待ち遠しい5.26 最善のイメージを膨らませて
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