関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

笹田和秀調教師

笹田和秀調教師


スプリンターズS、マイルCSを連覇したデュランダルを父に持つエリンコートが、その父とは異なるフィールドの中距離戦線で素質を開花させた。
母のエリンバードは伊1000ギニーGⅡの勝ち馬で、イタリア、フランス、アメリカ、イギリス、日本、と世界各地で走り、1994年、フランスのロンシャン競馬場で行われたオペラ賞で武豊騎手が斜行により1着入線後、降着になったことでも著名な馬でもある。 そんな個性溢れる両親から産まれたエリンコートについて、管理する笹田調教師はどう見ているのだろうか。


-:競馬ラボでのオリジナルインタビューに出演頂くのは、初めてのことになります。まず、笹田先生が初めてエリンコートを見た時の印象から教えてください。

笹:社台さんの馬はエリンコートに限らず、馬主さんが『この馬をやってください』という風に馬を指定されてお預かりするシステムなんです。ですから、お話を頂いて牧場に見に行ったのは、ちょうど1歳になった春ですね。その時の、第一印象は『華奢な馬だな』という感じでした。

-:そう感じられたのは、現役時代のデュランダルを見て体つきなどが頭にあったからですか。

笹:そうですね、デュランダルは短距離馬のイメージでコンパクトにまとまった馬でしたし、馬力も感じるような体でしたから。そのイメージからすると華奢に見えた、という事です。

-:その後、順調に成長したエリンコートは夏にデビューしました。

笹:2歳の夏になると体がしっかりしてきたので、新馬戦は芝の1000mか1200mを使えば楽勝出来るだろうと考えていました。父がデュランダルだから短距離で走るというイメージがこの頃はまだあったんです。

-:実際、新馬から2回1200m戦を走ったわけですが、レース後の印象はどう変わりましたか。

笹:僕が思っていたよりも1200mでは追走でモタついてしまいエリンコートの良さが出ないと感じました。そこそこは付いて行けるけど、もう少し距離を伸ばしてあげた方がこの馬にはいいだろうと考え、3戦目は1500mを選んだわけです。その狙いがすぐに結果に出てくれたので秋以降の楽しみが出ました。

-:エリンコートの良さや特徴を教えて下さい。

笹:切れるタイプではないので、道中は前々の良い位置につけて、最後まで頑張って伸びる競馬がエリンコートには合っています。『一瞬の切れ』はありませんが『ポジションのアドバンテージ』で勝つタイプだと考えています。
切れる馬は道中のポジションが後ろになり過ぎてしまう事が多いでしょう?エリンコートの強みは良いポジションで走れる事なんですよ。その為にも、良いポジションでちゃんと折り合って走れるようにしなければいけません。


-:課題といえば、やはり折り合いですか。

笹:そうですね、一生懸命走る馬ですが少し掛るんです。掛るといっても御せる範囲のもので抑えは利くのですが、普段の調教には気をつけていました。その効果が出たのが500万を勝った阪神の1800mだったんです。
あそこを勝って中一週だった忘れな草もクリアしてくれました。3歳春の時点で2000mを経験して勝った経験は大きなアドバンテージになると思っています。


-:忘れな草賞を勝った事で、ゆったりとしたローテーションをとってオークスに向かえます。

笹:この中間は『馬に苦痛を与えない』ことを重点に置いて調整しています。2400mを走るのに必要な精神力を維持するには苦痛を与えてはいけません。調教をハードにするよりも、馬の精神面を尊重するメニューを組んでいます。それがレースでの折り合いにつながれば2000mを勝った経験が生きるはずです。

-:初の長距離輸送もありますが、エリンコートは輸送しても能力を落とす事はないでしょうか。

笹:実はエリンコートは輸送を経験済みなんですよ。札幌で2戦していますが、あの時は函館で調教して札幌に輸送したんです。前走後もグリーンウッドに短期放牧に出していますから、輸送には慣れている馬ですよ。

-:という事は、馬体重的には大幅な変動はない、と考えて良さそうですね。

笹:エリンコートは普段から調子の波がないタイプですから状態は安定しています。牝馬にしてはレースを重ねてもイラつく所がありませんから。なんとか今の安定した状態を維持していきたいです。東京競馬場までの輸送でナイーブになる心配はゼロではないですが、前走と同じくらいで出走できると思っています。

-:では、エリンコートを応援しているファンに向けてメッセージをお願いします。

笹:エリンコートは優等生的な競馬ができる馬です。府中の2400mはどの馬にとっても未知の距離です、そこで良いポジションにつけて折り合いがつけば楽しみもあります。この時期に2000mを勝った強味を生かして頑張って欲しいと思います。

-:お忙しい時間にインタビューさせていただきありがとうございました。

笹:こちらこそ、ありがとう。相手は強くなるけどうちの馬も応援してくださいよ!



【笹田 和秀】 Kazuhide Sasada

1956年広島道出身。
2008年に調教師免許を取得。
2009年に厩舎開業。
JRA通算成績は41勝(11/5/15現在)
初出走:
09年3月7日 1回阪神3日目8R ヴェルトマイスター(2着)
初勝利:
09年3月21日 2回中京3日目8R ヴェルトマイスター


重賞勝利
・11年中山牝馬S(レディアルバローザ号)


1980年から栗東トレセンに勤務。83年に名門・伊藤雄二厩舎に移籍すると、師の定年となる2007年まで調教助手として厩舎に貢献した。 その後、梅田智之厩舎を経て、09年に厩舎を開業。今年4月の中山牝馬S(レディアルバローザ)で初めての重賞タイトルを手中に。年々、成績は上昇一途で、今後の活躍にも注目が集まる。