関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

伊藤伸一調教師

伊藤伸一調教師


-:ダービーに出走を予定しているフェイトフルウォーについて、伊藤伸一調教師に伺います。よろしくお願いします。皐月賞前はインタビューにご協力いただきありがとうございました。まずは、その皐月賞のレース内容から振り返っていただけますか?

伊:まず状態面ですが、デビュー戦からここまでの中で、本当に一番仕上がりも良かったんですよ。カツハル(田中勝春騎手)も「返し馬に行って、馬の状態、雰囲気共に申し分無い出来だった」とレース後に言っていたぐらいでした。あとはやっぱり、外枠になってしまったな、というのは正直ありましたけど、枠順のことばかりは言ってもしょうがないことですからね。

-:はい。

伊:でも、馬は良い状態だと思っていたので、14番枠という条件からどういうレースになるのかなって、楽しみにはしていたんですけどね。やっぱり勝負ですから、多少のリスクを負ってでも、ということもあって少し出しては行きましたけど、他の馬も勝負を賭けて来ていますから、出して行っても前の方にはつけられませんでしたね。

-:なるほど。

伊:もちろん、もっと出して行けば前へ行けるんですけど、そうしたら最後が厳しくなりますからね。カツハルもそういうことをいろいろと考えて、出して行きながら「ここが限界かな」というあたりで進めたんですね。

-:前へ行ける範囲の限界までは行って。

伊:結局は前へ行けなかったわけですけどね。だけど、向こう流しに入ったときに、折り合いを欠いて手綱をグーッと引っ張っていることも無かったし、凄くリラックスして走っていたので「あ、良いかな」と思って見ていたんです。それで、4コーナーに来て、いざ追われたら、まるっきり伸びなかったので、もう「あららら?」という感じで。

-:残念です。

伊:結局、外枠だったから、向こう流しで気持ち良く走っているときに、気持ち良く走り過ぎちゃったんですね。壁が出来ず、前に馬がいないから自然とストライドが伸びて、本当に気持ち良く走って来て、溜めがきかないレースになってしまったのかな、と思います。

-:なるほど。

伊:やっぱり、溜めて溜めて爆発するようなイメージってあるでしょう?カツハルも、向こう流しで気持ち良く走り過ぎちゃっていることは、本人が分かっているわけですよ。やっぱり、追われても全然伸びませんでしたしね。結果的に、一番大事なレースで、これまでで一番つまらない競馬をしてしまったかな、という気持ちです。あとはやっぱり、敗因は外枠が響いてしまったかな、というのがありますね。

-:分かりました。レース後のフェイトフルウォーの状態はいかがでしたか?

伊:使った後は、当然疲れはありますけども、いわゆるビッシリ追われて走ってきた訳ではないので、思ったよりもダメージはありませんでした。だから1週間楽をさせたら、すぐに回復してくれました。

-:中間はどのように過ごして来られましたか?

伊:順調に来ていますよ。助手が意識していろいろ教え込むというか、次に向けてやりたいこと、馬のハミの受け方とかを含めて、もっともっと馬が溜めて走れるように調教をして来ました。平場よりも坂路の方がその調整をやりやすいということで、坂路中心で。

-:効果はいかがですか?

伊:やれることはやって来ていますし、悪い方にはいっていないと思いますよ。

フェイトフルウォー、1週前追い切りの様子

-:昨日(5/18・水)には1週前追い切りを消化されました。

伊:そうですね。先週までは時計も坂路で出していましたけど、昨日はもう1週前ということで、山(坂路)に行ってから、ポリトラックで併せ馬をしました。

-:動きに関する評価はいかがですか?

伊:良かったですよ。今までは、脚元もスッキリしていない部分があって、ビッシリやったことはありませんでしたけど、今回はダービーですからね。ここのためにやって来ているようなものですから、初めてビシッとやったのかな。昨日やったことによって、今日は更に良くなっていますよ。だから、自然と顔つきがほころんでくるね(笑)。あと1週間、何とか無事に持っていくまでが大事ですね。

-:そのダービーの舞台となる東京2400ですが、以前から距離が延びるのは歓迎というお話でしたが、この舞台に対するフェイトフルウォーの強みというのは。

伊:そうですね、強みというか、新馬戦から東京を使っているので、回りも何も心配していませんし、以前お話したように、距離は延びて問題ないと思います。ただ、一つ心配な点は、スタンド前からの発走ですね。あの子は周りに左右されるところがあるから、周りが大人しければ大人しいんですけど、周りの馬が何かやると、もう人一倍「俺の方が凄いんだぞ」ってやり出しますからね。その辺がどうかな?というのはありますけど…、まあ、皐月賞を勝ったオルフェーヴルもマックイーンの肌にステイゴールドで、まるっきり同じ配合ですからね。ウチだけが不甲斐ない競馬をしてしまったから、今度はリベンジしないと(笑)。

-:期待しています。ちなみに先生にとって思い出に残っているダービーはありますか?

伊:うーん、思い出に残っているダービーですか…、そうですね、どのレースっていうことはありませんけど、僕はトウカイテイオーって好きだったんですよね。あの独特のパドックの歩き方や雰囲気が良いなって思っていました。

-:そうですか。そのトウカイテイオーも圧勝した、同じ舞台にご自身の管理馬が出走されるわけですが。

伊:そうですね。7000、8000の生産頭数の中の18頭ですからね。出たくてもなかなか出られないし、ここに出したくて、みんな馬探しから始まっていろいろな過程があるわけですからね。勝ち負けを意識するのは当たり前のことですけど、とにかく最後まで気を抜かないで、良い状態でステージに出してあげたいですよね。

-:応援しています。今日はありがとうございました。


【伊藤 伸一】 Shinichi Itou

1959年千葉県出身。
1998年に調教師免許を取得。
1998年に厩舎開業。
JRA通算成績は156勝(11/5/22現在)
初出走
1998年11月21日 5回 東京5日 7R ボヘミアンカバリエ(3着)
初勝利
1999年 1月9日 1回 京都3日 7R ボヘミアンカバリエ


主な重賞勝利
・11年京成杯 (フェイトフルウォー号)


98年の開業後、コンスタントに勝ち星を積み重ね、11年京成杯で重賞初制覇を果たす。厩舎初の重賞タイトルをもたらした管理馬フェイトフルウォー号で日本ダービーに挑戦する。