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宇佐見眞調教助手

宇佐見眞調教助手(栗東・領家厩舎)


2歳新馬戦の圧勝劇から早6年目のシーズンを迎えた7歳馬・ビービーガルダン(牡7、栗東・領家厩舎)。競走馬の世界で7歳というと、高齢馬として敬遠されるのが現実だ。しかしながら、前走の高松宮記念(G1)では、10番人気の低評価を覆すように4着と上位に顔を出し実績馬の意地を見せた。年齢的な衰えはあるのか?それとも老いて、ますます盛んなのか?ビービーガルダンの近況を同馬の育成を担当する宇佐見眞調教助手に聞いた。

-:まずは前走の高松宮記念4着を振り返ってください。

宇:前でゴチャついた時にビービーも不利を受けました。それでも、がんばって盛り返して4着でしたから、かなり復調しているなと感じました。レース後も哲三さん(佐藤哲三騎手)が『不利がなかったらもっとやれた』と言っていました。

-:その後は放牧に出たのでしょうか。

宇:レース後は一旦、近くの宇治田原ステーブルに放牧に出してリフレッシュして5月の上旬に帰厩しました。帰って来たら疲れも取れて、フックラした体になっていました。良い状態で帰ってこられたので調教も順調でしたよ。

-:前走からレースでメンコを外していましたね。

宇:哲三さんからのアドバイスでメンコとブリンカーは外しました。返し馬では頭絡の上からメンコを付けていますが、スタートの直前に外しました。レースでの結果も良かったので、本番もこのまま行こうと思います。

-:調教ではメンコを付けていますね。

宇:哲三さんがいろいろと考えてくれています。普段の調教でも時間をかけて『馬の視野』を利用した調教をしてくれています。(佐藤騎手が)アメリカに行った時に学んだ事をビービーの調教に生かしているんです。
ビービーは首を丸めて顔を下に向けて歩く癖があります。けれども、そのままだと馬の視野は地面に向いていて周りが見えない。視野を広げるには馬の頭を立てて自分のいる状況を正確に理解しなければいけません。周りが良く見えると馬は精神的にリラックスできるんです。ビービーは前の筋肉が発達していますから、リラックスできないと、どうしても前脚の動きが硬くなってしまう。力まない歩き方から見直す調教でビービーの新しい面が引き出せたらと考えています。この辺は、哲三さんでないとわからないレベルの話ですけどね(笑)。


-:歩き方に関して以前と変わった点はありますか。

宇:ビービーに乗ったことのある騎手ならわかると思いますよ。以前はもっと一歩一歩が頼りない感じで歩いていました。哲三さんが乗るようになって、歩き方にも力強さが出てきました。一歩一歩の踏み込みが強くなった感じです。

-:精神的な面での変化はありますか。

宇:やはり視野を広げる意識で調教しているからか、馬がリラックスできるようになりました。以前よりもONとOFFの切り替えが出来るようになりました。調教に向かう時はリラックスしていますが、哲三さんが乗るとスイッチが入る。それに馬がリラックスしていると飼い葉の食いも良いですね。今はバリバリ食べています。ビービーは暑さに弱く、夏場はどうしても飼い葉を食わなくなる。そういう意味でも夏前の安田記念は結果を出したい一戦ですね。



-:ビービーガルダンの距離適性を心配するファンもいると思います。

宇:マイル戦は09年のマイラーズC以来ですもんね。こればっかりはやってみないとわかりませんが最近、雨が多くて府中の馬場も少し痛んでくると、切れ味勝負の馬にはキツイでしょう?その点、ビービーは北海道の洋芝も得意ですから、上がりがかかれば面白いかもしれませんね。
それに、前走の行き脚を見ても(現状で)1200mがベストには見えません。もう少し距離があった方が良いはずです。年齢的な衰えはないし、以前よりも後半のラップが速くなっていますから、道中リラックスできれば距離はこなせると思います。調教での工夫が距離適性にどう反映されるのか?僕自身も興味あります。


-:今回の安田記念での馬体重について教えてください。

宇:体重は大幅な変動はないと思いますよ。前走が508㎏でしたから輸送して500㎏前半か前走時と同じくらいじゃないでしょうか。あまり増え過ぎると良くないんで、そのだけ気を遣って調整しています。

-:ビービーガルダンはチーフベアハート×オールザチャットという珍しい血統ですね。

宇:サンデーサイレンスの血がまったく入っていないですね(笑)。しかも、チーフベアハートって、マイネルキッツとか距離が伸びて良い産駒が多いですよね?ビービーは母系の影響が強いんでしょうか。母父のWestministerって何ですかね?この辺になると知識がなくてわかりません。

-:宇佐見さんは血統には詳しくないんですか。

宇:いや、けっこう詳しいはずなんですが。元々、高校時代はダビスタにハマっていたのでめちゃくちゃ詳しかったんです。その頃から競馬も見ていましたし。ナリタブライアンとかノースフライトなんかが高校時代の思い出の馬です。ただ、厩務員になって現場で働くようになると自分の担当馬に手いっぱいで、なかなか血統をしらべる時間がないんですよ。

-:思い出のノースフライトも勝った安田記念に向けての意気込みをお願いします。

宇:ファンの方にとっては7歳という年齢、1600mという距離が気になると思います。しかし、ここに来てビービーの状態は間違いなく上がっています。もしかしたら今までで一番良いかもしれないデキです。ある程度、流れた展開で上がりも少し掛ってほしい、など条件はつきますが、状態の良さで上位に食い込みたいと思っています。当日のパドックで黒光りするビービーの馬体を見て欲しいです。経験だけは、どの馬にも負けていませんので応援よろしくお願いします。


【宇佐見 眞】 Makoto Usami

高校時代、一世を風靡した競馬ゲーム「ダービースタリオン」にハマり、競馬に興味を持つ。卒業後はフリーターを経て、競馬への思いが強くなり21才で牧場へ。
26才で競馬学校の厩務員過程に入学。27才から領家厩舎に配属される。甘いマスクの美形厩務員としてトレセン内でも評判。現在はマジカルポケット、ビービーガルダンを担当している。