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吉村圭司技術調教師

吉村圭司技術調教師

3月に父である池江泰郎調教師の引退により、実力馬を引き継いだこともあり、今やオープン馬の宝庫となった池江泰寿厩舎。その池江泰寿師がグレード制導入後、史上初となる同一厩舎によるG1レース5頭出しを敢行する。
一昨年の宝塚記念の勝ち馬であるドリームジャーニーの復活はあるのか?、春の天皇賞でも1番人気に支持されたトゥザグローリーの巻き返しはなるのか?
今年、調教師試験に合格し、池江泰寿厩舎に所属しつつ、厩舎開業の準備を進めている吉村圭司技術調教師に各馬の状態について、語っていただいた。



コース調教を解禁…ドリームジャーニー

-:日本ダービーに続き、吉村技術調教師にお答えいただきますが、よろしくお願いいたします。まずはドリームジャーニーのお話からお願いいたします。

吉:ここ最近は脚元と相談しながらの調整になっていますけれど、先週は久々、下(コース)で調教をやりました。追い切った後も、張りもなかったので、明日(16日)も(池添)謙一が乗って、下でやる予定です。

-:前回、痛めたというのは、スタート時点で寄られた時のものによるものでしょうか?

吉:スタートして前に入られるような時になったこともあったんでしょうね。ただし、もともと一年くらい前から痛めていました箇所ですからね。幸い大事には至りませんでした。

-:ここ最近は休み休みにはなっているものの、宝塚記念は一昨年に勝っているレースです。

吉:阪神は走りますからね。宝塚記念の優勝馬でもありますから、担当している山下さんもそうですが、「なんとか復活させてあげたい」という思い、一心でやっていますね。

-:弟であるオルフェーヴルの活躍で、再び注目を浴びた部分もありますね。

吉:そうですね。やっぱり、ドリームジャーニーは池江厩舎にとって、初めての重賞勝ち(朝日杯FS)を挙げてくれた馬ですし、厩舎の基礎を築いてくれた馬ですからね。スタッフみんな思い入れを持っていますよ。

-:今年で7歳になりましたが、年齢的な衰えといったものは感じられますか?

吉:それは感じないですね!元気一杯ですし、運動をしていても、体のキレなどは変わりないですね。むしろ、元気が良過ぎて、普段から用心しないといけないくらいです。

-:やはり、課題は球節の具合でしょうか?

吉:だいぶ心配はなくなってきたと思います。普通の馬だったら、これだけの怪我で体がもっていないでしょうね。やっぱり、ドリームジャーニーは強靭なんですよ。靭帯や関節なども、他の馬より強いんでしょうね。

-:最近、宝塚記念をステイゴールド産駒が勝ったりと、「ステイゴールド産駒が6月に走る」と、よく言われるようになりました。

吉:そうですね。ナカヤマフェスタも昨年勝っていますよね。ジャーニーもオルフェーヴルも夏の新潟でデビューしていますし、暑さには強いタイプだと思いますよ。

-:池江厩舎の調教をみていると、坂路が主体だと思いますが、この馬は以前から下でやる事が多かったですよね。

吉:脚元がいくらか強くないタイプは坂路が多いですけれど、ジャーニーは丈夫でしたからね。本当はどの馬も先生は下でやりたいと思っていると思いますよ。ただし、リスクを考えるとそうなりますよね。本当にこの馬は丈夫ですよ。休み明けも気にならない馬ですし。

-:確かに仰る通り、休み明けもいつも、G1の前哨戦で斤量を背負わされているだけであって、自分のパフォーマンスはみせてくれますよね。

吉:そうですよね。今回もコース適性は問題ないですからね。僕らがいい状態で仕上げられれば走ってくれると思いますので、楽しみにしています。

天皇賞(春)の汚名返上へ…トゥザグローリー

吉:前走後はノーザンファームしがらきへ放牧に出ていたのですが、順調に調整は消化しております。ダメージもなく、リフレッシュされた状態で帰ってきてくれました。

-:前回、気の悪さをみせてしまった精神的な面もリフレッシュできたでしょうか?

吉:その辺りは、むしろ、落ち着き過ぎてドッシリしているくらいです。祐一(福永騎手)も先週、今週、来週と3本乗ってくれる予定だと思います。

-:福永騎手は前走も騎乗停止中でありながら、調教には騎乗されていましたね。

吉:そうそう、調教もつけてくれていたんですよ。先週も『引っ掛かる感じは全くない』と言っていましたし、距離も適性の高い中距離に戻りますし、阪神も3戦3勝ですからね。期待は膨らみます。

-:天皇賞で引っ掛かった原因は、入れ替わり立ち替わりのレース展開でしょうか?

吉:G1なので、馬をギリギリのところまで持っていきますからね。悪く言えば、気が乗り過ぎていたんだと思います。ゲートも一番に出て行ったくらい、速かったですからね。
それに、あの距離も初めてで、一周目のスタンド前を走ったところでカッとし過ぎたかなとも思います。G1だから、それなりに造っていかないといけないくらい、甘くはないんでしょうけれどもね。結果的にそういう面が悪かったのかもしれません。


-:中距離に戻るぶん、いつも通りの競馬はしやすいわけですね。この馬の本来のベスト条件はどう思いますか?

吉:う~ん、どうでしょうね…。

-:池江先生はオールウェザーの2000mといっていました。

吉:そう言ってますねえ。2000~2200くらいじゃないでしょうか?でも、昨年の有馬も3歳で入着しているわけですからね。実質、まだデビューしてから、1年くらいの訳ですからね。そう考えても、本当に凄い馬だと思いますし、馬格もあって雰囲気を持っている馬ですよ。

-:その馬体は、前回と比較してどんな状態でしょうか?

吉:いい意味でゆとりがある状態です。本番にちょうどいいくらいで持って行けそうですし、それを考慮して、向こう(牧場)でも造ってもらっていますので。



前走取消の影響は?…トーセンジョーダン

吉:右前のアクシデント(ハ行)があって、前走を回避する運びになりました。その後はしがらきのスタッフの御蔭で、なんとか宝塚記念に間に合いましたし、その脚もすごく落ち着いてて、順調には来ています。ただ、ぶっつけになるという点に、不安はありますね。

-:今の硬めの馬場は抜きにして、コースは合うんじゃないでしょうか?

吉:そうですね。ただ、時計勝負になるより、力がいる馬場の方がいいかもしれないですね。コースは問題ないけれど、速い時計が出るような馬場ですと、いくらか割引かもしれません。

-:この馬は使ってよくなるタイプですよね。

吉:そうなんですよね。馬の性格的につかってから、グッと調子をあげてくるタイプなんです。

-:ジョッキーはピンナ騎手になります。

吉:追えるジョッキーですよね。調教にも跨って貰っていますから、そのあたりは気にならないです。

-:追い切りはしっかりやる予定でしょうか?

吉:ハードにやると思いますね。G1なので、(レースに使った上積みと同じようになるくらいの)しっかりした仕上げにはなると思います。

闘志が戻れば…フォゲッタブル

-:ここ最近、不振といえる結果が続いてしまっているフォゲッタブルですが。

吉:もう一つ気持ちが戻ってこないところがあるんですよね。体調面は全然悪くはないんですが。

-:このところ、ゲートもいま一つだった気がしますね。

吉:春天の時もかなり出遅れましたよね。どうも気が乗って来ないんですよね。

-:過去の実績や、去年のステイヤーズSも強い内容だっただけに、復活に期待したいところです。

吉:そうですよ。重賞を2勝もしていますし、昨年のステイヤーズも勝っているレースですよね。気持ち一つだとは思いますが…。馬体的にもいい状態ではありますし、まだまだ、5歳ですから、衰えるのは早いですよ。

良馬場なら侮れない…トレイルブレイザー

吉:菊花賞も出したように、早くから期待していた馬です。前走の目黒記念は伸びそうで、最後は脚色が同じようになってしまいましたね。それでも頑張ってくれたといえますし、馬場も悪かったでしょうからね。

-:レース後、安藤さんは『内に入れていれば、良かったかもしれない』と仰っていました。

吉:ああ、言っていましたね。あの週は土曜日が内伸びで、日曜日が外が伸びていたんですよね。それでも、一瞬、突き抜けそうな脚色でした。

-:この馬にとって、今回、距離が短くなる感じでしょうか。

吉:いや、そんなことはないと思いますよ。スパッとキレるタイプではないですけれど、G1で相手が強くなりますけれど、頑張ってくれるデキにはあります。




【吉村 圭司】Keiji Yoshimura

1972年熊本県出身。
2011年に調教師免許を取得。


1996年に競馬学校厩務員過程に入学。同年の夏には飯田明弘厩舎に所属すると、2004年から池江泰寿厩舎に在籍。
有力馬を多数抱える池江泰寿厩舎で調教も担当しつつ、今年は見事、調教師試験に合格。技術調教師として、厩舎に従事しつつ、自身の厩舎の開業を控えている。