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田重田静男厩務員

田重田静男厩務員


昨秋の天皇賞(3着)後、有馬記念を目指すものの右トモの疲れが抜けず回避したアーネストリー。なにかと順調さを欠いた苦しい時期を乗り越え2011年5月28日の金鯱賞で長期休養明けを3着で終えた。更に、この時の馬場はアーネストリーにとって苦手な不良馬場。一度叩いての上積みはあるか?担当の田重田静男厩務員が昨秋に引き続き、語ってくれた。

-:まずは前走、金鯱賞に向かうまでの調整について教えてください。

田:結果的には少し太目残りになってしまいましたね。当日の体重が536㎏でしたから、6㎏くらい太かった。というのも、昨年はいろいろとケガやトモの疲労などに悩まされましたから目一杯仕上げるよりも使える方を優先しなければならない状況でしたから、納得はしていますよ。正直、もう一本追い切りが足らなかったかな、という状態で使った金鯱賞だったんです。

-:馬場も悪かったですし、アーネストリーにとっては厳しい条件が揃う中での3着でした。

田:本当によう頑張って走ってくれましたよ!直前の追い切りは坂路だったんですが、最後、内にモタれていたんです。調子の良い時はまっすぐ伸びるんだけれど…、少し苦しがって走っていたんでしょうね。この馬が復帰するにあたっては休養していた大山ヒルズさんが良くやってくれたと思います。金鯱賞前に帰厩した時にそう感じました。ここまで立て直してくれた大山ヒルズのスタッフには感謝しています。

-:レースでは雨の中ルーラーシップが鮮やかに勝ちましたが、田重田さんから見て、アーネストリーの走りはどうでしたか。

田:前にも話しましたが、アーネストリーにはパンパンの良馬場が合うんです。それに万全とまではいかない状態でしたから「改めて凄い馬だな!」と感心したくらいですよ。哲ちゃん(佐藤哲三騎手)も逃げたキャプテントゥーレについて行きたかったんだろうけれど、勝負処でひと呼吸待ってくれたでしょう?仕上がっていたら、あそこで付いていけるんだけどね。アーネストリーを良く分かっている哲っちゃんだからこそ、出来る乗り方だったと思うね。

-:となると、今回の宝塚記念は楽しみもありますね。

田:他のメンバーも揃っているから強気な事は言えないけれど、アーネストリーの状態は確実に上がっているから密かに期待しているんだよね(笑)。



-:今日の一週前、追い切りを見てどうでしたか。

田:今日は下のCWで一周流してから坂路で追いました。51.2-37.6-25.3-13.1という時計でした。終いの時計が掛ったのは気にしていません。まだあと、一週間あるからね。それより今回良かったのは、追われてからまっすぐ走れた事。思った通りの上昇度合いだったので安心しましたよ。もう一週追って、万全の状態に持っていきたいね。

-:もしかしたら昨年(3着)よりも良いデキで出走できるんでしょうか。

田:昨年はねえ、一週前にトモズレって言って、トモの球節の裏側(地面に接地する部分)に擦り傷が出来ていたんですよ。ちょっと擦れたって感じじゃないよ?皮膚がエグレるような傷ができた。皮膚が弱いのと、トモのキック力が強いから、そうなってしまうだけれど、アレには苦労した。傷が出来ると馬は熱が出るんです。その熱が下がらなくてね、フレグモーネの一歩手前だったので、使えるかどうか心配したほどだったんです。それに比べたら今年は順調に来ていますよ。

-:今はトモズレの心配はないんですか。

田:あれからトモズレ防止のサポーターを特注で作ったんで大丈夫です!でもサポーターだけでは、擦れて皮膚が傷つくからサポーターと脚の間にスポンジを入れて対処しているんだよ。サポーターで保護すると、チップの細かいカスがサポーターと脚の間に入ってくる。それで脚を傷つける事もあるから工夫しなきゃいけないんだよね。馬が走る時には想像以上に強い衝撃が加わるんですよ。知らなかったでしょ?

-:いろんな工夫をして仕上げてきたアーネストリーの今の体をどう見ればいいですか。

田:前走の金鯱賞は+6㎏という数字以上にメタボだったね。それを叩いて脂肪が取れました。締まりが出て良い体つきになりましたよ。

-:飼い葉の調整も大変だったんでしょう。

田:アーネストリーは良く食べるからね~。気を付けて見ていないと食べ過ぎるくらい(笑)。それに見た目の体型だけでなく、競走馬に必要ない内臓脂肪を付けないような飼い葉にしています。一度ついた内臓脂肪はなかなか落ちないんで、あまり高カロリー食にならないように考えています。

-:宝塚記念では上位人気にはならないかもしれませんがアーネストリーを応援しているファンに向けてのメッセージをお願いします。

田:まだ現時点では、どの馬が行くのかわかりませんがアーネストリー自身は調子も上向いています。宝塚記念は天気が心配になる時期のレースですが、晴れていたらアッと言わせる場面があるかもしれません。あと一週間、アーネストリーが最高の状態になるように持っていきたいです。良い脚で差してくる馬が揃っているけれどアーネストリーの武器は前々で渋太く伸びる先行力です。昨年は馬場も発表以上に重かったし、あの馬場で3着なら…、もっと走ってもおかしくないと思っています。どうなるのか、競馬はやってみないとわかりませんからね。アーネストリーを応援しに阪神に来て下さい!よろしくお願いします。




【田重田 静男】Shizuo Tajyuta

1955年1月10日生。久保厩舎からこの世界に入る。S47年の京都牝馬特別など10勝したセブンアロー等をこれまでに担当してきた。
息子は池江泰寿厩舎でダノンバラードなどを担当している田重田調教助手。