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川島正行調教師

川島正行調教師


泣く子も黙らんばかりの勢いで今年も活躍を続ける川島正行厩舎。 中央勢と互角以上の勝負を続けているフリオーソは勿論だが、3歳クラシック戦線を牽引したクラーベセクレタとマニエリスムの存在も忘れてはならない。
中でもクラーベセクレタは川島厩舎に籍を置いてから、南関東では無傷の5連勝で、あのロジータ以来となる牡馬クラシック2冠を達成した。 牝馬による3冠達成となるのか?今年のジャパンダートダービーの、最大の焦点に期待を寄せて、レースを見守りたいところだ。


-:ジャパンダートダービーに2頭を出走させるということで、お話しを伺わせてもらいます。まず、牝馬による南関東クラシック2冠制覇となったクラーベセクレタの入厩当初から、ここまでについて振り返って頂けますか?

川:こちらに来た頃は冬毛もあって、(飼葉の)食べが細いせいか、線の細い印象がありました。それが食べるに従って毛艶が出てきて、実際、門別では重賞も勝っていましたが、緒戦(東京2歳優駿牝馬)は強い競馬をしてきてくれましたね。ただ脚元が外向していて、不安なところがあったので、私がいる時じゃなければ削蹄もさせないほど、そこには気を遣いました。

前走の東京ダービーを制して、22年振りに牝馬の2冠制覇となりましたが、男勝りの勝負根性というかな?いいモノを持っていますよね。厩の中では牝馬らしさはみられるけれど、競馬場に行くと、やんちゃなお姉ちゃんのような振る舞いをするよね(笑)。それでも、レースでは掛かるところはないし、ゴーサインを出せば、スグに反応出来るところが、いい結果に繋がっているんだと思います。

ダービーでも、3~4コーナーでジョッキーが油断しちゃって(笑)、うちのファジュルに被されてしまったけれど、あの競馬を観て「本当に強い馬なんだ」と感じさせられましたよ。普通なら怯んでしまうところですからね。
その時点で、この先はジャパンダートダービーだと思いました。斤量も(54キロに)軽くなりますからね。でも、戸崎君も力のある馬は力のある競馬をしてやらないといけないな。

ダービーの時は馬体重も減少していましたし、中間の攻め時計を「大事にし過ぎたかな?」というところもありました。今回は食いもいいですし、減った体重も戻ってきて、羽田盃の時と同じようなタイムも出ているので、いい状態で来ていますよ。

そして、今回勝つような事になれば、牝馬のジャパンダートダービーの優勝は初めてじゃないかな?やっぱり、話題になる馬が活躍することは、ファンが競馬場に足を運ぶキッカケの一つだからね。たくさんのファンに足を運んでもらいたいと思います。


-:その前回は幾らか馬体重が減って、パドックでもこれまで以上にテンションが上がっていたように見えました。

川:長距離戦ですから、あまりおデブちゃんだといけないですからね。それを考慮して、多少絞ったところもありますし、餌も乾燥草を控えたんです。原因はわかっているので心配はないですよ。今回は羽田盃の時の体重よりも、マイナス4キロくらいになるんじゃないでしょうか。

-:北海道で実績があったとはいえ、川島先生の元に来られてから、これだけ変わった要因はどんな理由があるのでしょうか?

川:そうだねえ。一つにはそれだけの実績を残せる素質があったということですね。

-:この馬をパドックで観ていると、ちゃかちゃかしたところがあります。厩でも元気がいい方でしょうか?

川:ちょっとした事にすごい暴れ方をするんだ。それが怖いんだよな。だから、「今日は風が強いな。いつもより埃が舞っているな」なんて時は、二人曳きをさせるようにしているんだ。でも、それがレースに行けば大人しいし、押すことがなくてもスッと先行できるからね。そういう意味では学習能力があってお利口さんなんだな。

-:その敏感さは、裏を返せば、頭の良さの裏返しということですね。

川:そうそう。悪い方に出たら困るけどね(笑)。うちにはネームヴァリュー(帝王賞馬)やトーセンジョウオー(交流重賞6勝など)といった強い牝馬はいたけれど、違ったタイプだね。ネームヴァリューも本当に輸送が苦手な馬だった。いつも私がつきっきりだったからね。

-:脚元に不安があるとなると、時計が出過ぎることのない、力のいる馬場の方がいいのでしょうか?

川:時計が出ないと勝てないもんな(笑)。でも、それは日々のケアもそうですし、厩での仕草を10分くらいみていると、どこかの脚に体重を掛け続けるようなことなく、バランスよく四肢を使って立っているからね。問題はないですよ。馬は早期発見、早期休養が重要ですからね。



-:もう一頭出走するマニエリスムに関してはどうでしょうか?

川:道営の時はクラーベよりスピードがあるような噂はあったんだけれど、ゲートで立ち遅れたりで不甲斐ない結果が続いていたんだ。でも、ウチへ来てから幾らかよくなってきたな。

-:条件的には長距離は向いていそうですね。

川:この馬もかかっていくタイプではないからね。ゼンノロブロイの仔だから長いところがいいのかな?ただ、馬体は胴が詰まったようなタイプだね。ただ、クラーベと比べるには、ちょっと時計が足りないんじゃないかな。

-:先生は東京ダービーではド派手なピンクのジャケットでした。来週の衣装はどんな服装になられるのでしょうか?

川:あれは「牝馬のレースの時に着たいな」と思って、京都で染め抜きしてもらったんだけれど、トーセンジョウオーの時に着て、もう2戦2勝していたんだ。本当は「これで東京ダービーは(調教師)過去最多勝利になるんだ」と思っていたから、紋付き袴を用意していたんだけれど、まだ出川己代造さんと同じ回数だというから、閉まってピンクに変えたんだよ。
ウィナーズサークルって馬が勝った時も、(馬主の)栗山さんが紋付き袴を着ていたように、日本人は和服が一番。自分も昔から和服をよく着ていたし、いい服を沢山持っていますよ。




-:先生は競馬場でのファッションにも拘りを感じられますね。

川:やはり、海外の競馬もみてきたけれど、向こうはスーツやタキシードじゃなきゃいけない場所もある。昔は批判を受けたけれど、間違っていないと思って競馬場でも服装には気を遣ったよ。
開業当初、ニュージーランドの厩務員にレースの際にスーツを着させたら、主催者が「制服を着てください」なんて言うから、「制服ってなんだ?」と思って聞いたら作業着のような服装だったんだ。何百・何千万という馬をお預かりしているんだし、競馬というのはステータスの一つだからね。それじゃあいけないんだ。私がスーツを着るようになって、他にも浸透してきたけれど、そうじゃなくちゃ駄目だと思うんです。


-:先生の仰る通りですね。ジャパンダートダービーは2頭のパフォーマンスは勿論のこと、先生のファッションにも注目しています。ひとまず、JDDへ向けての意気込みをよろしくお願いいたします。

川:今回のジャパンダートダービーのメンバーを見ても、東京ダービーの結果を振り返ってみると、牡馬を負かせるくらいの力は持っているんじゃないかな。ぜひ、ファンには期待をして、競馬場に観に来てほしいですね。よろしくお願いいたします。




【川島 正行】 Masayuki Kawashima

1947年千葉県出身。
騎手を経て、1990年に厩舎を開業。
初出走日 1990年7月25日
初勝利日 1990年7月26日
地方通算成績は1083勝(11/7/5現在)


■最近の主な重賞勝利
・11年かしわ記念(フリオーソ号)
・11年東京ダービー、羽田盃(クラーベセクレタ号)
・11年さきたま杯(ナイキマドリード号)
・11年東京プリンセス賞(マニエリスム号)


1947年千葉県出身。 騎手時代を経て、1990年に厩舎を開業。
近年はコンスタントに年間100勝前後の勝ち鞍を挙げ、地方競馬では、もはや顔と言うべき存在に。05年には地方馬初としては、初めて管理馬・アジュディミツオーをドバイワールドカップに送り出した。 今年は遂に重賞100勝を達成。5月にはかしわ記念を皮切りに立て続けに重賞を制した。また、ジャパンダートダービーはこれまでに2勝をしている。