関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

太宰啓介騎手

太宰啓介騎手


太宰騎手といえば、騎手生活14年目の今年、初めて福島牝馬Sをフミノイマージンで勝ったことが記憶に新しい。重賞を勝つまでには時間がかかったが、騎手仲間からの評価は高い。 人気薄で穴をあける騎手としても、馬券ファンにはおなじみの騎手。そんな太宰騎手の素顔を訪ねた。

-:そろそろ夏競馬も終わりに近づいていますが、太宰騎手にとっての夏競馬を教えてください?

太:今は小倉滞在ではなく、競馬だけ小倉に通っていますが、数年前までは滞在していたんです。栗東では遊ばないような人とご飯に行ったりしますから、それも楽しみの一つですね。小倉はご飯が美味しいですから大好きです。モツ鍋が好きで、デビューからずっと通っているお店があるくらいです。

-:美味しいモツ鍋の店を教えてもらえますか?

太:銀次郎という店です。安くて美味しいから機会があれば行ってみてください。



-:暑い夏に競馬するのはかなり過酷だと思うのですが、太宰騎手は夏は好きですか?

太:僕は暑さには強いんですよ。むしろ寒い方が苦手で成績にも出ているんじゃないかな(笑)。それに夏は良い馬の依頼が来やすい時期なので、成績を伸ばすチャンスでもあります。例年、夏に成績が伸びるんですけど、今年は……?

-:暑い夏に活躍して、秋の大舞台に行く馬と出会えたら最高でしょう?

太:去年はミキノバンジョーが夏に連勝して菊花賞まで行きました。ミキノバンジョーはその後勝てなかったけれど、今年の小倉で去年と同じ西部スポニチ賞を勝ったんですよ。そういう大舞台に行ける馬と今年も出会いたいですね。

-:太宰騎手といえば福島牝馬Sで重賞初勝利というのが意外だったファンも多いと思います。これまで重賞タイトルに届かなかった理由は何だったんでしょう?

太:運がなかったと言えばそれまでですが、自分の努力も足らなかったんでしょう。自分に足らなかったものが何なのか?気合い、関係者や馬主さんに対するアピールなど、今になって振り返ったら一杯思いつきますよ。実際、重賞を勝てるチャンスはいっぱいありましたからね。

-:悔やまれる敗戦というと?

太:エイシンサンルイスで一つは重賞勝てたんじゃないですかね。プロキオンS、根岸S、シリウスSと3戦連続2着でしたが、その中でもプロキオンが一番悔やまれます。

-:エイシンサンルイスから11年たって福島牝馬Sをフミノイマージンで重賞初勝利。しかもマーメイドSも勝って一気に2つも勝ちました。今まで勝てなかった重賞勝ちとなった福島牝馬Sを振り返って下さい。

太:最内枠がどうかと思いましたが、レースでは4コーナーから自分の前が空いてスイスイ上がって行けたんです。乗っていて「こんなにすんなり勝てるモノなのか?」って思うくらい、全てが上手くいった感じでした。勝つ時ってあんなに楽に勝てるものだと、改めて思いました。

-:フミノイマージンの良さとはどんなところでしょうか?

太:元々、素質の片りんは3歳時から感じていました。僕がフミノイマージンに初めて乗ったのは2戦目の未勝利戦からですが、当時はまだ未完成の状態でしたけれど、良いものは持っていました。オークスにも出れるくらいですから、昔から素質はあったんですよ。それが今年に入って体質的にしっかりしてきたのが大きいと思います。ファンの方が見てもわかる通り、フミノイマージンの良さは4コーナーで前の馬に取りつく時の速さですね。本当に楽にスーッと動くんです。ただ、あまり早目に先頭に立つと、フッとソラを使うから、そこだけ注意して乗っています。とにかく牝馬特有の一瞬の切れが凄い!そんな馬です。



-:太宰騎手と言うと、前目に付けて粘り込むイメージが強いんですが、自分では「逃げ・先行・差し・追い込み」どんな競馬が好きですか?

太:僕はけっこう「差し」が好きなんですよ。ただ、どう乗るかは僕だけで決めれる事ではありませんから難しいところなんですけれど。なるべくコースロスなく乗るように心がけています。

-:では、太宰騎手にとって会心の競馬とは?

太:難しい質問ですね。やはり騎手としては1番人気で勝てるのが理想ですよ。ただ、調べてもらえばわかると思うのですが……、あまり結果は良くないんですよ。逆に人気薄で穴をあけるのも楽しいです。馬券を勝った人の人数は少ないでしょうけど、少数派のファンの期待に応えるのも、また楽しいものです。例えば福島牝馬Sのフミノイマージンなんて、人気無さ過ぎたと思いませんか?

-:太宰騎手は父である故・太宰義人師が亡くなる前に兄も交通事故で亡くなっています。当時20代の若者にとって、親族の死というのは精神的にかなり応えたと思うんです。そこから立ち直れたのはどうしてでしょうか?

太:兄が亡くなってから父の病状も段々悪くなってしまいました。あの時はどうしていいかわからなかったけれど、自分自身に「頑張らな」と言い聞かせました。父が亡くなった後、いろんな方が応援してくれて少しずつ強くなれたんだと思います。父の厩舎の馬は吉田厩舎と本田厩舎に行き、そこで本田(優)先生との出会いがありました。(先生の)現役時代はそれほどお付き合いはなかったのに、本田先生は僕をバックアップしてくれたんです。

-:辛い悲しみを抱えながら仕事である競馬に毎週乗るのは大変だったはずです。

太:確かに辛い時期もありましたが、毎日の調教や競馬が苦になったことはないです。大げさかもしれないけど、僕は騎手という仕事に誇りを持っているんです。それくらい騎手って仕事が好きなんですよ。だから落ち込んでばかりはいられないんですよ。馬に乗るって本当に難しいし、だから奥が深いわけですから。



-:そんな強い面があったとは意外でした。太宰騎手がどんな人か知らないファンに向けて「太宰啓介の競馬」を見るポイントを教えてください。

太:競馬で一番気にしているのは見ているファンが喜んでもらえる事です。多くのファンが支持してくれた上位人気の馬も大事だし、少数のファンが期待する穴馬も大事です。感覚的ですがペース判断は上手い方だと思うので、極端な位置取りにはならないように乗っています。距離損をしないように気にしていますが、一つ間違うと前が詰まって出れなくなってしまう。なかなか経済コースを走らせるのも難しいんですよ。
例えば外枠ならなるべく早めにインに入る努力はします。僕が気にしているのは、そんなところです。もしも人気薄の馬でゴールまで後方を走ったままでいたら見ているファンは面白くないと思うんです。だから時には、後ろからマクってみる。そうすると観客席から「オ~!」って歓声が聞こえる。そんな競馬を心がけています。


-:競馬ラボ初登場ということでいろいろと伺ってしまいました。これからも僕たちを喜ばせて下さいね!ありがとうございました。

太:こちらこそありがとうございました。

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【太宰 啓介】 Keisuke Dazai

1979年 滋賀県出身。
JRA初騎乗
98年 3月 1日 1回中京2日 1R ターフプロテクター(6着/14頭)
JRA初勝利
98年 3月 8日 1回中京4日 8R エンジェルスポート
JRA通算成績は346勝(11/08/21現在)


■重賞勝利
・2011年 福島牝馬S/マーメイドS(共にフミノイマージン号)


父が騎手であり、調教師も経験した太宰義人氏(故人)。98年に父の太宰厩舎所属騎手としてデビュー。同期には池添謙一、酒井学、白浜雄造ら。デビューイヤーに34勝を挙げて関西フェアプレー賞を獲得。 例年、夏の小倉での活躍が目立つジョッキーとしても知られるように、デビュー以降、コンスタントに勝ち星を積み重ねてきたが、度重なる重賞勝利のチャンスから見放されていた。 しかし、今年4月、未勝利勝ち時にも手綱をとっていたフミノイマージンとのコンビで待望の重賞初勝利を挙げると、マーメイドSでも連勝。秋の大舞台・エリザベス女王杯へ名乗りを挙げている。