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宇佐見眞調教助手

宇佐見眞調教助手(栗東・領家政蔵厩舎)


今年で4年連続スプリンターズSに出走することとなる古豪・ビービーガルダン。凌ぎを削ってきたキンシャサノキセキ、ローレルゲレイロらがターフを去る中、今春から新たなパートナーに佐藤哲三騎手を迎え、一時のスランプを脱しつつある。 キーンランドCからの臨戦は、一昨年、(同着といっても過言ではない)2着に惜敗した時と同様のステップ。好調期のリズムを取り戻しつつあるベテランの一発に期待して、近況を探ってみたい。

-:では、佐藤哲三騎手が跨るようになった、高松宮記念以降の動向を振り返っていただけますか?

宇:高松宮記念の時はレースの前から、哲三(佐藤騎手)さんに毎日、調教に乗ってもらって、クセなども掴んでもらったんです。その高松宮記念も4着。中団から差す競馬で最後は届かなかったんですが、それまでは包まれたりと、馬の気持ちが入っていないようなレースが続いていただけに、進境が窺える一戦でした。

-:というと、この馬にとっては、メンタルの部分が大きいということでしょうか?

宇:そうですね。まだ、一時期は内からも外からも包まれて、止めてしまうようなレースが多かったですからね。ただ、次走の安田記念は単純に距離が長かったと…(笑)。

-:キーンランドカップについては、どうみられますか?

宇:北海道でも一週前と直前は哲三さんに跨ってもらったんです。獣医さんの話では、「馬のデキとしては八分くらい」という事でしたが、休み明けも走りますし、洋芝にも、もともと実績はありましたからね。哲三さんが言うには、「これまでは前しか見えていないのが、この前の時は周りも見えていた」と言っていました。レース結果も58キロを背負って、あの競馬ならば価値のあるレースだったと思います。

-:斤量差を考えれば、勝ちに等しい内容でしたよね。哲三さんが乗られるようになって、どういう部分が変わってきたのでしょうか。

宇:それは哲三さんにしかわからない部分もあると思うんですよね(笑)。乗っている人だけにしか分からない領域が。

-:このビービーガルダンは馬体的に見栄えのいい馬ですよね。

宇:青鹿毛なので綺麗で見栄えがすると思うんです。馬体的には、後ろはそんなに強くはないのですが、頸の筋肉や前の筋肉が凄いですね。

-:そんな見栄えのいい馬だけに、毎日、面倒を見ている方でも、見た目でデキの良し悪しはわかるものですか?

宇:毎日見ていると、わからないですね(笑)。冬場でも冬毛もあんまり伸びないですし、皮膚が薄いですからね。だから、洗い場で手入れする時も、触るとすっごく嫌がります。

-:それは皮膚が薄い分、それだけ敏感だということですね。

宇:そうなんです。



-:そんな中で、ファンがパドックでこの馬を見て、デキの良さをジャッジ出来るポイントはありますか?

宇:やっぱり、パドックで気合を表に出して、ちょっとうるさいくらいの時の方が、走る傾向にはありますね。最近、パドックでもうるさくなってきているんです。

-:それは復調モードと見ていいんですね。

宇:そうですね。やっぱり、調子が悪い時は、パドックでもそんなにカッカしなくて、カッカしている時の方が走っていますから。

-:中山千二というと、これまで何度も走ってきていますが、今回、こういう条件が欲しいというポイントはありますか?

宇:できれば、外枠が欲しいですね。速い馬がいて、外から被せられるようなことがあれば、まだ、怯んだりすることもあると思うので…。被されるよりは、外枠を引いて内の馬を見ながら行ける方がいいですね。

-:これでスプリンターズSは4回目の挑戦となりますが、昨年はフタ桁着順でした。

宇:去年は包まれて戦意喪失といった競馬でしたが、函館SSも使っていたので、臨戦過程で一戦余計だったかというところもあるんです。今年は安田記念を終わって、坂東牧場に行ってから、キーンランドという流れなので、2年前と似たようなローテーションですし、理想的なステップかと思います。

-:近年はキーンランドCからの臨戦で成績を残す馬も増えましたよね。

宇:そうですね。あのレースだと、ちょうど一開催と一週間くらいあるので、間隔は詰まらないから調整はし易いと思います。

-:今日(22日)の追い切りはどんな印象でしたか?

宇:哲三さんも「絶好調だね」と言ってくれましたが、いい動きをしていると僕も思いました。来週もおそらく哲三さんに乗ってくれることになると思います。

-:領家厩舎は、ここ最近、一層の活躍をみせていると思いますが、その要因はどう感じられますか?

宇:厩舎としては、先生がいい馬を探してきてくれるからだと思いますね。それが一番、大きいんじゃないかと思います。

-:ちなみに宇佐見さんが、もう一頭担当されているマジカルポケットの近況も教えてください。

宇:この前のセントウルSで初めてG1級の馬と走って、そう差もなかったですし、いい経験になったと思います。一応、今後は放牧の予定ですが、まだまだ伸びシロはありますし、頑張ってくれると思います。

-:わかりました。最後にビービーガルダンはもう7歳となり、現役生活も短くはなってきていると思います。一言まとめて下さい。

宇:そうですね。今後、どうなるかはわかりませんが、自分自身は“ラストチャンス”くらいの気持ちで今回は頑張っています。でも、哲三さんも、この春の高松宮記念の時に「まだ来年の高松宮記念まで行ける」とは言ってくれました。馬も若さはありますし、いい結果が残せるよう頑張ります!


【宇佐見 眞】 Makoto Usami

高校時代、一世を風靡した競馬ゲーム「ダービースタリオン」にハマり、競馬に興味を持つ。卒業後はフリーターを経て、競馬への思いが強くなり21才で牧場へ。
26才で競馬学校の厩務員過程に入学。27才から領家厩舎に配属される。甘いマスクの美形厩務員としてトレセン内でも評判。現在はマジカルポケット、ビービーガルダンを担当している。