-阪神牝馬S-平林雅芳の目

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土曜阪神11R
阪神牝馬S(GⅡ)
芝1400m
勝ちタイム1.21.9

クィーンズバーン(牝4、父スペシャルウィーク・栗東、浅見厩舎)

※※クィーンズバーンが逃げきって初重賞勝ち!!

一昨年の3冠女王アパパネに昨年の桜女王マルセリーナと、一足早い桜を観にパドックはけっこうな人。遠い向こう正面からのスタートだが、真っ先に飛び出したのがクィーンズバーン。そのまま結局は押し切った形。マルセリーナが直線で外へとヨレながらも伸びを見せて最後はクビ差まで迫ったが、そこまでであった。一方のアパパネはいつものピンク帽。外々を廻る競馬は仕方ないものの、直線で最後に少しだけ伸びただけ。やっぱりエンジンのかかりの悪いこの1400は似合わない感じであった。

クィーンズバーンは、まだ条件の身の上での重賞制覇だが、前々走の京都牝馬特別でも逃げて5着。後で思えば納得の内容ではあったものだ・・・・。

12.4~11.0~11.5~11.5~11.4~11.6で、最後の1ハロンが12.5がこのレースのラップである。一度も10秒台のないラップで充分に息を入れて行けていたのが判る。

藤岡祐Jに翌日の日曜、阪神競馬場で出会った時に聞いた。『エエ、行くつもりでいました。実は前走もそのつもりだったのですが、福永先輩にサッと行かれてしまったんです』と最初から先手の気持ちで臨んでいた様子である。続けて『思う通りに行けましたし、直線も良く辛抱してくれました~』と振り返ってくれた。この馬にずーっと乗っているからこその、良さを引き出す乗り方がこれだと言う事だろう。

カトルズリップスのスタートが決まらず、出た瞬間に後ろ。そこから追い上げて前へと来たが、先手を主張することのない流れになったのも良かった。3コーナー過ぎから半馬身から1馬身と付いてきてはいたが、十分に息の入る流れ。前半3ハロンが34.9である。

アパパネは中団の外目。やや行きたがる感じだ。マルセリーナはその少し前の7番手でレディアルバローザの後ろぐらい。1番人気のスプリングサンダーがその内のラチ沿いを進んでいる。先頭のクィーンズバーンとカルズリップスは,そのまま4コーナーへと入ってきた。

カーヴを廻りながら、クイーンズバーンは気合を入れた様に見えた。外のカトルズリップスもまだ手応え十分で、勢いは衰えていない。そして直線に入ってきた。スプリングサンダーが一旦はカーヴのあたりで外へと進路を取りかけたが、レディアルバローザが上がってくる時で狭くなると判断したのか、もう一度内目へ戻って順位を上げてくる。外ではマルセリーナが追い上げにかかってきた。

残り300のオレンジ棒を通過するあたりで、藤岡祐Jの左ステッキが飛んでゴーサインを出す。残り1ハロンを通過。クィーンズバーンのリードは2馬身と広がる。
スプリングサンダーがカトルズリップスの外から顔を覗かせ前を追う。外ではマルセリーナが猛然と襲いかかってきている。そのマルセリーナが大きく外へ逃げ加減となる、その後ろからフミノイマージンが来ていたが、今度は外へ行ったマルセリーナが内へもう一度戻ってきた様に見えた。

その間にクィーンズバーンはゴールを目指す。しかしマルセリーナの勢いが加速して、2馬身あったリードがかなりなくなる。必死にステッキで何とか最後の粘りを促す藤岡祐J。

大外からエーシンリターンズが凄い脚をみせて迫ってきていたが4着まで。スプリングサンダーが内で、いつもの伸びがなく5着。アパパネは流れこんでの7着であった。

条件からの挑戦のクィーンズバーンが勝利。逃げの手に出たのが勝因であるが、展開だけの勝利でもない。そんなに力差はないと言う事であろう。もっともアパパネやマルセリーナには距離の絶対的な適性があったかは何とも言えないところだろう。そして惜しまれるのはフミノイマージンで、これからと言うところで眼の前をマルセリーナが左から右へと横切っていた。まともなら・・と思えたもの。これも競馬であるが、少し残念なものだった。

5月13日の東京。GⅠ・ヴィトリアマイルでの再戦は果たしてどんな結末になるのだろうか・・。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。