米三冠最終戦を前にアイルハヴアナザー突然の引退

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第144回ベルモントSの前日、大本命のニ冠馬アイルハヴアナザーが突然の引退を発表した。7日(木)に左前脚に熱を持っていることが分かり、8日(金)朝のルーティン~軽い運動をこなした後、獣医に見て貰った。そこで腫れが見付かり、どうやら腱に傷害があるようなので詳しい検査の結果、屈腱炎、全治3ヶ月と診断された。オーナーのポール・レッダム氏とダグ・オニール調教師は、早速記者会見を開き引退発表となった。

フラワーアレー産駒の3歳の牡馬、アイルハヴアナザーは、サンタアニタダービー、ケンタッキーダービー、プリークネスSとG1・3連勝、今季負けなしの4連勝で通算成績は7戦5勝、2着1回。1978年のアファームド以来、34年振り史上12頭目の三冠馬なるかで注目されていた。この突然の引退で興味が一気に削がれてしまったが、レース当日はベルモントSの1時間前に引退式が行なわれ、ファンに最後の別れをした後、11日カリフォルニアに送られた。

三冠最終戦のG1ベルモントSは、3番人気のペインターがペース駆けに持ち込んで、しぶとく粘った。しかし、好位内の5番手からレースを運んだジョン・ヴェラスケス騎乗の2番人気ユニオンラグズが、直線残り1.5ハロンで2番手に上がり、残り100ヤードでクビ差に迫り、逆に首差ペインターを捕え優勝した。ユニオンラグズはこれが2つ目のG1優勝、通算成績は8戦5勝となった。尚、1番人気に推されたドゥラハンは後方で見せ場無く7着に敗れた。

さて来週19日の火曜日から連続5日間開催で、英ロイヤルアスコット開催が始まる。世界で最も華麗な舞台は、映画「マイフェアレディ」の舞台としてもお馴染みである。1日6レース、毎日G1レースが組まれ、ステークス競走の数22、内グループ競走は18レース、G1レースは7レース組まれる。第1レースの発走は午後2時半、最終レースの発走は5時半、毎日午後2時からスタンド前の直線コースで、恒例の女王陛下のロイヤルパレードが行なわれる。即位60周年の今年はより華やかなロイヤルミーティングになりそうだ。

初日の第1レースは恒例のG1クイーンアンSから始まる。ロイヤルパレードが行なわれる直線の1マイル戦である。4歳以上による競走で、目下10連勝を続ける欧州年度代表馬フランケルのレース振りが楽しみだ。また3歳以上による直線の5ハロン戦、G1キングズスタンドS、3歳牡馬による右廻りのオールドマイルコースで行われるG1セントジェームズパレスS、3つのG1レースが華やかさを盛り上げる。

2日目のG1は4歳以上による距離10ハロンのプリンスオブウェールズS。ソーユーシンク、シリュスデゼーグル、ドバイワールドカップ勝馬モンテロッソなどがエントリーしている。3日目はロイヤルミーティングの中でも最も人気のある距離20ハロンのマラソン競走、G1ゴールドカップ。ジェイミー・スペンサー騎乗のフェイムアンドグローリーが連覇を狙っている。4日目は3歳牝馬によるオールドマイルコースで行われる、G1コロネーションS。そして最終日は直線6ハロンで行われるG1ダイアモンドジュビリーS。7日に、シンガポールとUAEを経由して30時間の長旅の末イギリスに到着した豪州年度代表馬、目下21連勝中ブラックキャヴィアが出走を予定している。

アスコット競馬場はロンドンのウォータールー駅から電車で1時間、駅を降りて真っ直ぐ進んだ突き当りになる。尚、19日と23日の2日間は香港でも馬券発売が行なわれる。現在のアスコット競馬場の馬場コンディションは重い馬場になっているが、天気予報によると例年とは対照的にロイヤルミーティングの間中強い雨が予想されている。



海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。