-小倉記念-平林雅芳の目

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日曜小倉11R
小倉記念(GⅢ)
芝2000m
勝ちタイム 1.57.3

エクスペディション(牡5、ステイゴールド・栗東、石坂厩舎)

小倉の夏だ!浜中だ!エクスペディションが制す!

爽やかだった風も、この時間になると暑さだけがまとわりつく。それでも小倉のファンは熱心、パドック廻りは他のどのレースよりも人が多い。
エクスペディションのテンションが高いのが目につく。これはむしろこの馬らしさ。そして何よりも目についたのはナリタクリスタルだ。いつもは走る気があるのかないのか。ところが、こんなに真面目に闘志をグッと内に秘めているのが良く判るこの馬を見たのは初めて。もしかしたらやる気になったのかも・・と思ってレースを迎えた。

4コーナー奥からのスタート。ミニGⅠなみに手拍子が上がる小倉競馬場。12頭がそんなに差がなくゲートを出た。そんな中から、押してミキノバンジョーが出てきた。絶対内からセイカアレグロも行くはずだし、エーシンジーラインも当然に来るはずと見やる。枠順の利でミキノバンジョーが先頭となって行く。《態勢が出来たな~》と見ていると、最内のセイカアレグロが、まだ押して押してミキノバンジョーの内から抜いて行くのかと思える程のアクション。さすがにこれにはミキノバンジョーが抑えて先頭を主張したが、内からのプレイでミキノバンジョーの後脚が一瞬流れた。

ゴール板あたりでやっとセイカアレグロが引いて、ミキノバンジョー先頭で1コーナーを廻っていった。2コーナーを過ぎて2番手エーシンジーライン、3番手セイカアレグロで、ワルキューレがその後。アスカクリチャンとエクスペディションが並んで6番手を追走。その内へトーセンラーが少し順位を上げてくる。ダノンバラードゲシュタルトが並び、ナリタクリスタルが最残り方。でも先頭から最後尾まで10馬身はないだろう。前半4Fを通過して47秒台でそう遅くもない。向こう正面を過ぎて3コーナーへと入る時には、さらに馬群は短くなる。その中でもエクスペディションが順位を上げて行く。

3コーナーと4コーナーの中間では、3番手ワルキューレが前へと並びかけに行く。その後ろでも、エクスペディションがもう4番手グループの外目と上がりかける。トーセンラーとダノンバラードがアスカクリチャンを間に挟みながら前へと進出し始める。ナリタクリスタルもゲシュタルトと並んで前との差を詰める。
4コーナーのカーヴを廻る時には、もうエクスペディションがワルキューレの外へと並んで追い出しに入った。一瞬の差でダノンバラードも追い出しているが、その動きについて行けてない。馬群の真ん中に入ったトーセンラーは外へと出す機を伺う。しかしその間に、エクスペディションはもう一番前に近い処まで来ている。内で粘るミキノバンジョーだが粘りきれそうもない。

エクスペディションと浜中Jが先頭となっていく。右ステッキを入れていたが、もう押すアクション。その少し後ろではダノンバラードの内からトーセンラーが抜いて行く。外ではナリタクリスタルがいい脚でダノンバラードを抜き去って行く。トーセンラーが猛然と追って行くが、前を捕まえられる脚色ではない。ナリタクリスタルとの2着争いとなって先んじてゴールだった。ダノンバラードがそこから少し遅れて4着でゲシュタルトが5着に入って来た。

実は、新馬戦2鞍を終えたあたりで浜中Jと話をした。その新馬戦が能力を全開していた内容でもなかった様に感じていた。新馬戦のわりには不利の連続とかで目立っていたから声をかけた。その時に実はこの小倉で《あまり乗れていない。乗りきれてないんです・・》との自己分析だった。しかしそれもひとつ前のレースのマイネルバイカの勝利で吹っ切れた様子だったし、何よりもいちばん懸念していた《あまりにスイッチが入らないので、今回はメンコを外すかもと話しているんです・》とエクスペディションの活気のなさを言っていた。それがどうだ、パドックではメンコ着用ながらあのうるさいエクスペディションに戻っていた。レースでは外した様子だが元気、活気が武器の本来のエクスペディションに戻っており、浜中Jも小倉競馬の乗り方、早めの積極策で押し切ったもの。小倉、夏、そして浜中、石坂厩舎のコンビネーションでまたまた大きなヒマワリを咲かせた。そして何よりも、私としてはナリタクリスタルが今日は走るんだと全面に出して好走した事。これが何よりの小倉の土産となったものだった・・・。

『遠征・探検』とJRAのデータ・ファイルにある馬名の意味で、エクスペディションのこれからの探検は続くものであろう・・。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)

競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。