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引退の安藤勝己騎手「これからは少しでも競馬の魅力が伝えられれば」
2013/1/30(水)
30日(水)、滋賀県の栗東トレーニングセンターで安藤勝己騎手(52)の引退会見が行われた。
安藤勝己騎手は76年に笠松競馬でデビュー。03年に地方競馬所属の騎手として初めて中央競馬へ移籍し、これまでJRAでは通算1111勝。G1は04年にキングカメハメハで制した日本ダービーなど22勝。重賞81勝。09年後半からは騎乗数を絞り、昨年11月24日の京阪杯(パドトロワ)を最後に騎乗していなかった。
会見は、安藤勝己騎手の挨拶、代表質問、個別質問という流れ。内容は以下の通り。
安藤勝己騎手:自分ごとですけど、お集まり頂いてありがとうございます。明日をもって免許を返上して、引退することに決めました。
引退の理由としては、体的にどうのこうのということはないんですけど、やっぱり1年位前から自分のイメージのような競馬ができなくて、このままぼちぼちでも乗った方がいいのか悩んだ末に、期待して乗せてくださる競馬関係者や、ファンのためにも、ココはやっぱり引退した方がベストじゃないか、ということで引退するに至りました。
これからも競馬はすごく好きなので、携わることができれば幸せかなと思います。今まで本当にありがとうございました。
引退会見に臨んだ安藤勝己騎手。時折笑顔をみせながら会見に応じた
(代表質問)-:まず、ジョッキーご自身が引退を決断された時期、またキッカケとなった出来事、また誰かに相談した、などあればお聞かせください。
安:時期は大体、去年の春先かそれくらいですかね。キッカケになる直接なものはないですけど、徐々に「自分のイメージのような競馬ができてないな」というのは感じてましたし、やっぱり年のせいか、体の硬さも自分で感じるようになったので「上手く馬のコンタクトできてないな」というのをすごく感じるような競馬が多くなったので、そのときから徐々に「もう潮時かな」っていうのは考えてました。誰かに相談したってことはないですけど、家族にだけは相談しました。
-:今日、引退を発表されて、率直な今の心境をお聞かせください。
安:決めてからは案外サッパリしたもんで、全然さびしくないと言ったらウソのような感じですが、JRAにきてちょうど10年になるんですけど、一昨年までは毎年G1を勝たせて頂いて、色んな名馬にも乗せて頂いて、ホントに幸せな騎手生活だったと思っています。
-:安藤さんご自身、思い出のレースとか、思い出の1頭とかあればお願いします。
安:やっぱり思い出に残っているレースというのは、中央に移籍してすぐにG1を勝たせて頂いた、ビリーヴに乗った高松宮記念ですかね。あのレースはすごく印象に深いですね。馬で言えばやっぱりダービー馬のキングカメハメハ。ホントに素晴らしい強い馬で、安心して乗ってられる馬でしたからね。それとあともう1頭は、やっぱり素晴らしいスピードのダイワスカーレットですね。
-:今のところでは白紙というふうに仰ってたんですけど、今後どういった活動をされるのか、どういった形で競馬に携わっていくのか、考えてるプランがあればお願いします。
安:調教師になるわけでもなく、助手になるわけでもないですから。競馬だけは大好きなので、もう毎週競馬見てると思うので、そういう意味でも何か競馬に携わることができれば、競馬に関してプラスになって、応援できることがあればやりたいと思ってますけど。
-:今、後輩ジョッキーに何か伝えたいことがあればお願いします。
安:もう、みんなホントに技術はスゴイ上手いし、まだまだこれから勉強して伸びることもできるだろうし、みんなで切磋琢磨して、競馬を盛り上げるような騎手になってほしいですね。
(個別質問)-:去年の春頃から引退を考え始めたということなんですが、ちょうどお兄さんの安藤光彰さん(現・調教助手)が引退をされたのが去年の春先でした。あの引退というのは何か影響は……。
安:やっぱり少なからずさびしいような気持ちもしていて……。ただ、やっぱり自分でも年も年ですから。そういう意味でも考えてたんですけど。どういうのかな「例え1頭や2頭でもぼちぼちのんびり乗ろうかな」という気持ちも正直あって、葛藤とかもあったんですけど。やはりそれじゃあファンにも、乗せてくれてるオーナーや先生や関係者に申し訳ないなということで。ただ、兄貴に関しては影響ありましたよね、確かに。
-:ご家族には相談されたと仰ってましたけど、引退のことについて「迷っている」という形で打ち明けられたんでしょうか?
安:いえ、相談したときにはもう辞めるって決めていて。「もう辞めるぞ」って。相談ってことになるかどうか分かんないですけどね(笑)。
-:そのときは奥様はどんな言葉を?
安:「できればもうちょっと」ってのは最初に言ってましたけど、あとは「体が健康なうちにっていうのは良いことだから」っていうので納得してもらいました。
-:今朝もトレセンでは引退を惜しむ声が色んなところから上がってたんですが、松田国英調教師が、先ほど馬名を出されましたが「キングカメハメハとダイワスカーレットの子どもに乗ってほしかった」と仰ってました。そういったことについてはいかがでしょうか?
安:そういうことも聞いてたし、色々イイ馬を頼まれることもあったでしょうけど、さっき言ったように、やっぱりそのパフォーマンスをちゃんと出せる自信がなくなったので、こういう結果になったんだと思いますけどね。
-:中央に入ってくる過渡期の中で、ライデンリーダーという馬がいて、桜花賞、オークスと戦ってこられたんですが、今の地方競馬の騎手の中央参戦のシステムを考えると、もうちょっと安藤さんが馬場を知った上で、ライデンリーダーを導けたかもしれないとか、そういったタラレバというのはありますか?安藤さんは先駆者なわけですから、先駆者なりの苦労というのがあったと思うんですが。
安:ライデンリーダーのときは、まだ特指っていうか、普通の交流戦がなかったので。芝っていうのは全然乗る機会がなかったので、やっぱり全然分かんない状態で乗ったんですけど。できれば芝の経験が何回かあった方が色々分かると思うんですけどね。
-:そういうことも全て通して、騎手として、何かやり残したことがもしあれば。
安:まあ、ないですね。正直、自分の中ではホント恵まれて、JRAにまでこれて、G1をこれだけ勝たせて頂いて、自分の中では満足しています。
衝撃的な引退発表に報道陣も詰め掛けた
(個別質問)-:先ほどライデンリーダー号のお話が出ましたのでもう少々お聞きしたいのですが、地方から中央への道を切り開いてくれたいいパートナーだと思うのですが、想いというのは?
安:今も質問であったように、自分の経験がないせいで桜花賞を勝てなかったというのはすごく感じましたし、そういう点では「ホントに悪いことしたな」という気持ちはありますね。
-:この騎手人生を振り返って、どんな騎手人生だったなと思われますか?
安:そうですね。16でデビューしたんですけど、最初はとにかくガムシャラで「勝ちたい」ばっかりで、30近くまではそういう感じだったんですけど。中央に来る頃には反対に落ち着いてというか、ガムシャラさもなくなって……。まあだから、反対に「いい時に中央にきたのかな」という気もしますけどね。地方含め、中央にきてからも、馬とか、周りの人とかにはすごく恵まれてるな、というのは感じましたね。
-:騎手人生を支えてきたものというのは何かあるんですか?
安:やっぱり、自分の中の動物好きっていうのはすごく大きいと思いますけど。
(個別質問)-:「馬と上手くコンタクトが取れなくなった」と仰っていたんですけど、どういったことなんでしょうか?
安:やっぱり関節の硬さと、重心が上手く合っていないなっていうのもあるから、その分、いい位置を取りに行くと、昔のようにスッと抜けるところが抜けなくなって、変に馬に負担をかけてしまうので、思ったより先生方の指示とか、自分のイメージより競馬が後ろからになっちゃうっていうのは何回も感じましたね、最後の方は。
-:そのあたり、やきもきというか、悔しい気持ちが募っていったという感じなんですか?
安:言われたように位置を取りに行くと、以前のようにスッと折り合いをつけられないというか、そういう部分が多いので、どうしてもそういう部分を気にするだけでも競馬にはマイナスですから。ただ自分では分かっていても、正直、体が思うようにならないっていうのはありましたから。
-:さきほどもありましたけど、1年前からですか?
安:いや、急に1年前ってことはないですけど。徐々になんですけど、まあ確実にそう思ったのは1年前くらいかなって感じですね。
-:地方と、中央と、その両方の大変なところを良いところをご存知だと思うんですけど、改めて笠松の良かったところ、中央競馬にきて良かったところを教えてください。
安:笠松の頃はあそこでホントに調教なんかもスゴイ数を乗ったし、レースでも色んな馬に乗ったし、小回りで「少々人の邪魔をしても勝つぞ」くらいのガッツは磨かれたと思うし(笑)。中央にきてからは全然設備が違って、ガッツだけじゃ勝てないというか、やっぱり折り合い面とか、距離もいろいろありますから。「ソフトな部分も」という乗り方も勉強になったし。そういう意味ではJRAにきてからまた違った乗り方を考えたり、勉強したり、まあそれがまた楽しくて。だからこうやって色々考えて、楽しんで競馬に長く乗ってこれたと思うんですけど。
-:地方で言いますと、オグリキャップの主戦でもいらっしゃったんですけど、中央でも乗ってみたかったという気持ちは?今とは全然状況が違いますけど。
安:いえ、もうアノ頃は乗れないというのは確実に頭にあったから。正直、オグリキャップの競馬はいつも見てたけど、普段の中央の競馬は全然興味なくて見てなかったです(笑)。
-:じゃあ、そのときの悔しさというか、どうしようもないところが爆発して中央に、ということじゃなかったんですね。
安:オグリの頃は全然そんな感じじゃなかったですね。ただ、ライデンリーダーの頃にやっと開放になって、G1に乗せてもらって、やっぱり華やかさとか全然違いましたから。「是非、中央のG1を勝ちたい」と思って、それからですね、中央に夢を抱いたのは。それまではもう全く無理な話でしたから。オグリの頃はそんなことは全然思ったことはなかったです。
-:その無理なことを成し遂げられたパイオニアだと思うんですが、中央入りを達成されたときのことを改めて振り返って頂けますか?
安:ホントにこれはもう幸せなことで、藤沢先生から「こういう試験も受けれるんだぞ」って話を頂いて、「じゃあやってみようか」って気になって受けたんですけど。まあ最初の年は案の定、受からなかったですけど(笑)、それでマスコミの方やファンの方が色々後押ししてくださって、新たな試験制度を作って頂いて、それで晴れてJRAに来れたという。それは今でもホントに感謝しているし、ホントに夢のような感じだったし、そのときもう42でしたから「これがラストチャンスだな」と思ってたので。ホントに嬉しかったことを今でも思い出しますね。
-:今後のことを白紙と仰ったんですけど、希望というか、そういったものはおぼろげにありますか?
安:ファンに競馬のよさを伝えられるような仕事ができればいいと思うんですけど。ただ、喋るのもあんまり得意じゃないんで(笑)。これからは色々勉強をしながらでもね「少しでも競馬の魅力が伝えられればな」と思ってますけど。
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