気分良く、トウケイヘイローが逃げ切る!!…平林雅芳の目

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13年6月1日(土)3回阪神1日目11R 第66回 鳴尾記念(G3)(芝2000m)

トウケイヘイロー
(牡4、栗東・清水厩舎)
父:ゴールドヘイロー
母:ダンスクィーン
母父:ミルジヨージ


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『距離が長いんですが、宜しくお願いします』と騎乗依頼がきたのが木曜の朝9時過ぎ。それからビデオを観たり戦績を調べたり。そう言えば、以前に一度乗せて貰ったな…。ダイワファルコンが3着と届かないダービー卿の勝ちっぷりも悪くない。問題はやはり未踏の距離であろうかと。ジョッキーも《前半は様子を見て、向こう正面から行かせる方がいいかも…》と。
その通りのレースぶりとなった3角で後続が接近した時でも、涼しい顔で行けている。4角を廻っても勢いが衰える感じもない。坂を上がったあたりで《これは、いただいた!》と思わず体が前と出て応援する。そして検量室前の枠場、清水久師とガッチリと握手をした…。うまくいくもんですな…。

開幕週の綺麗な馬場。絶対に先行有利、イン有利であると思ってはいた。後はモズとの兼ね合いだけ。パドックで見ていてやや太目に映る体型だが、落ち着きもあるし、悪い状態ではないと確信したトウケイヘイロー。朝には5番人気でスタートしたオッズだったが、トランスワープに抜かれて6番人気となる。《でもダイワファルコンには負ける気がしないんだけどな~》と心の中で思っても口には出せぬ。
エアソミュールも前走の敗けっぷりが悪い。ダノンバラードパッションダンスも、そう抜けて強いイメージはない。パドックでエクスペディションがけっこううるさく周回してた。《この馬が出てくると夏だよな~》と思いながら返し馬を見た…。

スタートでやはりモズが出ていった。トウケイヘイローも五分に出たが、最初のカーヴまでに2番手の体勢をつくれた。後はどこで交して前に出ていくのか、だ。その後で2番手となるモズが巻き返して、もう一度行く気を見せるのかもある。パッションダンスが3、4番手。ビッグウィークを間に挟んでいる。
800メートルを過ぎたあたりで、モズを抜き先頭に立っていくトウケイヘイロー。1000メートルを通過する時には3馬身ぐらいのリード。1.00.4で通過する。

3角を過ぎていく。モズが接近しだす。最後方にいたロードオブザリングが1000を通過するあたりで動きだし、中団まで上げていたダイワファルコンも、同じ様に前へと動きだす。その動きに4番手にいたパッションダンスも同じ様に前へと出て行く。しかしモズのすぐ後ろで待つ形まで。
武豊Jが《3角過ぎあたりで息が十分に入っていた》と述懐していた。モズの鞍上の手が動きだす。そして半馬身から1馬身と少し差を広げつつ、最後のカーヴを廻って直線へと入ってきた。

あと300のオレンジ棒を通過する時に、まだそんなに追いだす体勢に入っていない。それでいて、パッションダンスとダイワファルコンの2番手グループとの差が縮まらない。中からダノンバラードが顔を出し始める。
あと1ハロンの少し手前で、初めてのステッキが入ったトウケイヘイロー。追い上げてきている馬群と同じ脚色である。これなら何とかなりそう、と思いながらも心穏やかではない。
エアソミュールが大外を来ていたのは見えた。しかし真ん中を黄色い勝負服が伸びてきている。エクスペディションだ!内でダノンバラードが3着。パッションダンスは、最後に最内を突いたスマートギアにも差されての6着であった。

かくしてトウケイヘイローは、上手く貯めて逃げて勝ってしまったのである。今年、これで4戦3勝。まさしく昇り馬だ。失礼、朝日杯で4着もある実績の馬だ。これで距離の選択肢も大きく広がった感もある。この後、函館記念へと向かってくれるなら嬉しいかぎりである…が。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。