オークス馬、メイショウマンボが貫禄勝ち! …平林雅芳の目

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13年10月13日(日)4回京都4日目11R 第18回 秋華賞(G1)(芝2000m)

メイショウマンボ
(牝3、栗東・飯田厩舎)
父:スズカマンボ
母:メイショウモモカ
母父:グラスワンダー


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前日の土曜に、川田浜中岩田Jの順で今年のJRA100勝を達成した。そしてこのひとつ前のレースで、福永Jも達成。後はウチパクJが秋華賞で見事達成か。もっと凄いのが武豊JのG1.100勝目がこのレースになるのかと興味はつきない。
しかし真っ先にゴールに飛びこんだのは、オークス馬のメイショウマンボ。
残り100メートルから先頭に立って、後続をシャットアウトする強さで2冠めを達成した。2着にはスマートレイアーが大外から間に合って、武兄弟のワンツー。1番人気のデニムアンドルビーは2着争いの大接戦だったが4着。3着には人気薄のリラコサージュが入って、馬券的には波乱となった…。


スタンド前でのゲート入り。ファンファーレが鳴って、いつもの場内の手拍子が湧く。スマートレイアーが、輪乗りの時から少しずつテンションが高くなってきている。ゲート入りしてからも枠内でソワソワしだす。

タイミングがヤバイかもと思っていたら、やはりだった。せっかくの1番枠なのにと瞬間に思う。しかしユックリ出ていったスマートレイアーを、鞍上は外目へと進路を持っていく。
真っ先に飛びだして行ったのセキショウだったが、これを猛然と外から交わして前と出て行ったのはビーナストリックだ。短距離、それも1000を使っている馬だけに、これは予測内。その後をセキショウ、そしてノボリディアーナと続いて1コーナーを廻り、2コーナーへと向かう。
2コーナーを過ぎたあたりでは、先頭から5馬身ぐらいで2番手。すぐに3番手がいて、そこから離れて4頭目がティアーモ。ブービーを行く白いスマートレイアーまではかなりの縦長となっている。

ちょうど、レースの半分となる残り1000を通過。場内モニターに《1000m参考タイム=58.9》と出る。少し場内がドッとする。
前の先行する3頭と後続組との差がだいぶ縮まってきて、3コーナーを迎える。メイショウマンボが人気3頭の中では一番前にいる。それでも全体の半分のまだ後ろめ。
残り800を過ぎるあたりで、デニムアンドルビーの鞍上が仕掛けだす。メイショウマンボとの間合いを詰めに行った様だ。それにつれてエバーブロッサムが一緒に動く。ひと呼吸置いてスマートレイアーも前へと進みだす。

馬群があっという間に短くなって、4コーナーへと入っていく。前にいたローブティサージュとの間隔が狭くなったのか、メイショウマンボが手綱を操作して外へと促す。その瞬間に外からデニムアンドルビーが一気にステッキを入れながら上がってきた。まるでメイショウマンボに蓋をするかの様に。だがその動きに併せる様に、内から外目へと進路を造っていくメイショウマンボの幸四郎Jの動き。どうやら前ではセキショウが先頭に立っていた様子だが、もうメイショウマンボ、デニムアンドルビー、そしてその後ろで機を伺っているスマートレイアーの、外めの馬達しか見ていなかった。

セキショウを交してメイショウマンボが先頭に立ったのが残り50メートル。脚色から、もうこの馬の前に出ていける勢いの馬はいなかった。
そして熾烈な2着争いというか、前を追っていく馬達。デニムアンドルビーを交してスマートレイアーが先に入ったのは判った。デニムアンドルビーの内にどの馬がいたのかが判らない。後でリラコサージュだと知って、慌てて専門紙を観たぐらいだった…。スマートレイアーの外から、ちょっとくすんだ芦毛のリボントリコロールが来ていたのも知らなかった…。

豊Jも当然にいた。やってくる大勢の人中に、顔がクシャクシャになってしまっている武邦元調教師がいた。幸四郎Jの勝利、それもメイショウさんの馬での快挙に、感極まったのだろう。それを冷やかすこちらの集団。武豊Jが『あそこに偉大な種牡馬がいる。サンデーサイレンスが』と報道陣に笑いを入れる。幸四郎Jと自分を創造した偉大な親父が…と。なかなかに微笑ましく、悪くない時間でもあった。

そんな武豊Jに合間をみて聞く。《あの出遅れって、逆に良かったんじゃない?》…と。すると『今日はゲートを出てからもついていけてなかった』と言う。流れを観ると、3頭が前に行って後続はけっこう密集していた中団であった。上位に来ている馬は、後方グループの馬ばかり。外々を廻っても、直線でスパートできている馬達ばかりだ。もし普通にゲートを出て枠なりに内々のレースとなっていたら、果たしてスムーズに前へと出られてきていたかは判らない。ゲートの出が悪かった後をすぐに外目に出しての追走、その時点でこの乗り方を選択した鞍上である。
災い転じて副となった感のスマートレイアー。G1と言う大舞台で初めてこんなレースぶりとなって、それもキッチリと横並びのゴール前で差して来たのだから。なかなかに勝負根性のある馬である。

そして勝ち馬メイショウマンボである。4角で外からデニムアンドルビーが被せに来た時に、逆に手綱をしごいて阻止しに行った幸四郎Jの手腕だ。外へ少し張り出してスペースを造り、そして前へと出て行った。しかしその後でもまだ追い出さなかった。先に内田Jが追っているのに、幸四郎Jはまだゴーサインを出さず。一拍、二拍ぐらいも置いてから追い出していった。そしてそのまま先頭を譲らずゴール。ここらが気持ちで余裕の業だったと思える。

今年の秋華賞のポイントは、4角から直線への入り口、ここでの攻防が全てだったと思う。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。