これは強い!トーセンラー、マイル王に君臨!!…平林雅芳の目

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13年11月17日(日)5回京都6日目11R 第30回 マイルチャンピオンS(G1)(芝外1600m)

トーセンラー
(牡5、栗東・藤原厩舎)
父:ディープインパクト
母:プリンセスオリビア
母父:Lycius


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G1マーチが鳴り、場内のボルテージはいつもの拍手で最高となったその時、薄暗くなっていた黒い雲の切れ目から太陽が顔を出し始めた。《太陽が力をくれた》とトーセンラーの勝利の予感がした。
後方から4頭目のインで前半を進めたトーセンラー。直線で鋭角に外へと出してきた時には1頭だけ道が開いていた。左から右に持ち替えたステッキが5、6発。最後はまだゴール前なのに、ガッツポーズなみのステッキを披露してくれた武豊J。笑顔でスタンドを観てゴール板を過ぎ去った。
これが初のマイルとは思えないほどにピッタリの走り。堂々たる脚色で、トーセンラーがG1.100勝の区切りの勝ち鞍をプレゼントしてくれた。

いくら京都の外廻りで3勝といいながらも、マイル戦は初めて。この多頭数で直線で脚を伸ばし切れるのだろうかと心配ばかりしていた戦前の気持ちは、いつの間にか、手拍《勝てた~》と確信を持てた。
それにしてもこの切れ味。春の天皇賞の時、4角を廻る時の手応えからも《勝てる!》と思わず力が入った。しかしフェノーメノを捕え切れなかった。その秋にマイルのG1でこうも強く勝ってくれるとは。
今週の水曜坂路、開場から3組めと真新しい状態だったとは言え、凄い切れ味のある動きを見せてくれていた。坂路の頂上で待っている眼の前を『いいね~…』と馬上から告げていた。動きがいいから、状態がいいからと言って、勝てるものでもない。それを絵に描いた様に綺麗に勝ってくれる。トーセンラーに感謝、厩舎に感謝。もちろんオーナー。関係者全てに感謝でありました…。


ゲートが開いた。ダノンシャークが一番のスタートだった。しかし内からコパノリチャードがポンと出て行く。スンナリと先頭、誰も競りかける馬もなく楽にすっと行けている。《マズイ》と。逃げ切りがよぎる。前半3ハロン通過の表示がオーロラビジョンに出る。何と遅めの《35.1》である。このままだと直線で押切ってしまう前走の二の舞いもあるとあせる。2番手ガルボも動かず、ダイワマッジョーレが内の3番手と実にいい処にいる。外にクラレントダノンシャークでちょうど真ん中。トーセンラーは相変わらず後方から4頭めの内目でじっとしている。坂を下ってくる。トーセンラーは前にいたレッドオーヴァルの外目に出した様だ。しかしダイワマッジョーレの位置が実にいいポジションに見える。4コーナーへと入ってくる。コパノリチャードの外にガルボ、さらに外クラレント、一番外にリアルインパクトと横一列。しかし後続もピタっと固まってどの馬も手応えがいい。

直線に入ってきた。コパノリチャードの真後ろのダイワマッジョーレを観ながら、トーセンラーの動きを追う。外へ首を向けて出してきている。マイネイサベルの内が開いている。まるでどうぞとばかりに、1頭分のスペースが出来ている。当然にそこを狙うはずだが、何かその先で狭くなりそうな予感がする。《あ、狭くなる!》と心の中で叫ぶ。が次の瞬間には、そこを通り過ぎていた様だ。内ではひしめきあっているが、コパノリチャードが懸命に粘っているその外へ出したダイワマッジョーレが伸びそうだ。クラレントの外をダノンシャークが出て来る。しかしトーセンラーの伸び、勢いが違う。ダイワマッジョーレが先頭でダノンシャークが2番手になった外を、一気に伸びてゴールへと向かうトーセンラー。応援して叩いていた手が痛かった…。

検量室前の枠場へ向かう。観覧席から降りてきた厩舎スタッフと次々と握手をする。
やがて馬が引き上げてきた。枠場に入るトーセンラーと武豊J。歓喜の声が廻りで上がっている。いい瞬間である。やがて表彰式に向かうために出てきた武豊Jと握手をする。
G1.100勝の偉業を達成である。表彰式が行われている時間にPVを観る。ダイワマッジョーレは最初、コパノリチャードの内を狙っていた。開かずに待つ時間があった。外に出すまでのロスタイムは微妙だ。クラレントは舌を出しながらの走り。いつもこうなのだろうか。マイネイサベルの内はPVで見ると、終始楽に開いていた様である。ライブで見ている時と実際はこんなにも違うのかと思えるもの。

本当に素晴らしい勝ちっぷりのトーセンラーでありました。ありがとうございます。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。