最強馬復活!ジェンティルドンナがハナ差でJC連覇!!…平林雅芳の目

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13年11月24日(日)5回東京8日目11R 第33回 ジャパンカップ(G1)(芝2400m)

ジェンティルドンナ
(牝4、栗東・石坂厩舎)
父:ディープインパクト
母:ドナブリーニ
母父:Bertolini


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スタンドから右手に見える彼方には、白化粧を装った富士の山。土曜はもっとクッキリと見えたと隣人は言う。見下ろすテラスは人、人で溢れている。近場にいる外国人の方々は半袖、ノースリーブと、廻りのジャンパー姿の日本人親父達とやや温度差がある。
手拍子の中、ゲート入りが始まった。そしてゲート・オープン。今日もジェンティルドンナの出は早い。少し外からエイシンフラッシュが前へと出て行った。場内の小さなドヨメキが伝わる。超スローで流れて、直線半ばまで追い出しを遅らすエイシンフラッシュ。しかしその内から一気にジェンティルドンナが先に仕掛けて出て行って、そのままゴールへ向かう。ゴールドシップが伸びあぐねるその前を、デニムアンドルビーがグイグイと脚を伸ばしてゴールへ迫る。内のジェンティルドンナか、外のデニムアンドルビーか。白熱のゴールはやや内が優勢に映った…。


レースの少し前に今日の入場者数が場内放送で発表された。9万人に満たない数字だった。そう言えば、スタンド前のテラスの右手がまだ隙が見られる。本当に多い時はそこもびっしりと人、人で埋まる。真上の空には気球船が浮かんで、映像を取り込んでオーロラビジョンに時折映し出す。そんな、眩しい陽射しの中でゲートインが終る。
真っ先に出たのがジェンティルドンナ。この馬、本当にスタートセンスのいい馬で出が早い。そしてゴールドシップもそう悪くないスタートだ。いつも馬群から遅れていくデニムアンドルビーも、今日は普通だ。いちばん内のヴィルシーナが行くのかと見ていると、エイシンフラッシュが先頭に立って行く。
トーセンジョーダンが外から2番手に上がって最初のカーヴに入っていく。ジェンティルドンナは5番手で廻る。外にルルーシュ、内にヴィルシーナがいる。ゴールドシップは最後方だが、内目で前とそう差はない間隔だ。結局、エイシンフラッシュが先頭を切って行く。2コーナーを廻って淡々とした流れが続く。前半3ハロンが37.0と本当に遅い。馬群の切れた処にアドマイヤラクティ。そこから塊の最後にデニムアンドルビーが。ゴールドシップは最後方で、前から12馬身ぐらい。

向こう正面に入って、エイシンフラッシュ先頭で後ろに1馬身半。後続が切れ目なく楯長で続く。1000メートル通過《1.02.4》と発表される。思わず場内がどよめく。
3コーナーを過ぎて3番手グループがやや混み出す。あまりの遅さに少し動きが出た様子。ヒットザターゲットが外目を上がっていく。ゴールドシップも最後方からポジションを上げて塊となる。
4コーナーが近づく。エイシンフラッシュの外にトーセンジョーダン、さらにその外にヒットザターゲットが並び加減でカーヴを廻っていく。後ろでゴールドシップの鞍上内田Jの手が動いているが、馬が上がっていく気配、勢いではない。まだ他に追い出している馬はいない。

直線に入ってきた。残り400を過ぎても、まだエイシンフラッシュのデムーロJは追い出さない。その内へジェンティルドンナが入ってきて追い出している。エイシンフラッシュも追い出したが、反応が悪い。ジェンティルドンナが伸びて行く。トーセンジョーダンがもう一度前へ出ようとしている。エイシンフラッシュの内から、アドマイヤラクティが伸びて来ようとしている。と、その時、外からデニムアンドルビーがいい伸び脚で上がってきた。ジェンティルドンナがムーアJの右ステッキでゴールへめがけている処へ、デニムアンドルビーが一気に襲いかかっていく。勢いは外のデニムアンドルビーの方がいい、が、判らない。

戦い終えてダートから引き揚げていった後に、ジェンティルドンナが芝の上を帰ってくる。まだ電光掲示板のいちばん上と2番目には《写》の文字。それを何度も振り返り見ながら、日迫助手の処へ向かうムーアJ。するとその瞬間に写真の字が消えて、一番上に《7》番が出る。思わずガッツポーズ、その後に日迫助手と握手。トンネルに入る前にゴーグルを外して、ウイナーズサークル傍のファンに投げつけた。

勝ち時計の2.26.1が物語る超スローな流れ。逃げたエイシンフラッシュが追い出しを遅らせる程の上がり勝負。ゴールまでの上がり4ハロンが11.6~11.1~11.1~11.9。ジェンティルドンナも残り400から脚を伸ばした。デニムアンドルビーの方が、4角でもゴールドシップと同じぐらいの位置だが脚が溜まっていた。そこから馬をさばいて脚を伸ばしてきた。メンバー最速の上がり脚だ。トーセンジョーダンがあの流れで3着に粘っているのだから、エイシンフラッシュが粘れなかったのは距離なのか。そしてゴールドシップ。前の馬から少し離された感じで、まったく伸びがなかった。反応してない感じであった。今までに考えらない程の負け方である。こんなゴールドシップを観た事はない。競走馬の不思議さであろう…か。

それにしても牝馬達だ。昨年の年度代表馬ジェンティルドンナの勝利は驚かないが、3歳牝馬デニムアンドルビーである。この秋の3戦とはまったく違う印象のレース。普通にレースできてなかなかの脚。53キロの斤量も生きているのだろうが、凄い脚を使えているのが凄い。
有馬記念は、また別なメンバーとなりそうだ。果たして今年の最強馬はどの馬になるのであろう…か。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。