-金鯱賞-平林雅芳の目

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土曜京都11R
金鯱賞(GⅡ)
芝2000m
勝ちタイム2.02.4
勝ち馬
ルーラーシップ(牡4、栗東・角居厩舎)

※※ スタートの不利も何のその。ルーラーシップが粘勝!!

降るしきる雨の中のスタート。ルーラーシップがゲートをヨロけて出て大きく出遅れる。そんなアクシデントを知らずに、キャプテントゥーレはマイペースの逃げ。誰にも並ばれずに最後のカーヴを回って直線に入ってきた時も、まだ手応えは十分。ライバルのルーラーシップが外から敢然に迫って来た時も、まだ抜かせない余力は残っていた様に見えた。しかしゴールが近づくにつれ、大きな飛びのルーラーシップが1完歩ずつ迫って、かわしての勝利。帰国緒戦を勝ち星で飾った。

スタンドが大きくどよめいた。ルーラーシップがゲートで出遅れてしまったからだ。パトロールビデオで見ると上へジャンプして出てその後、スタンド側へヨロけた様子。危うく鞍上の福永Jのバランスが大きく崩れた。《落ちると思った》と福永J。右のアブミも外れた様だが、入れ直してやっと前へ。この間にもう3、4馬身のビハインドはあったのではなかろうか。その間に前はキャプテントゥーレがいつもよりもスムーズに先頭に出て、楽な感じで最初のコーナーへ入って行く。ここらではもう十分に貯めての先行となっているキャプテントゥーレで、2番手にアーネストリー、その外へ復活のアンライバルド、キャプテントゥーレの真後ろにはマンハッタンスカイ、外にナリタクリスタルが続き一団となっている。ルーラーシップはブービーのホワイトピルグリムより2馬身ぐらいの最後方。

1コーナー、2コーナーのカーヴで、より楽にキャプテントゥーレの逃亡劇が始まる。2番手に2馬身ぐらいの差で、向こう正面に入って行く。やや久々のアンライバルドが頭を上げて遅い流れに不満そうだ。800メートルを過ぎたあたりでは、先頭集団から続く好位グループが10頭。そこから2馬身ぐらい開いた後方グループが6頭。ルーラーシップは最後方でも、外へと並び追い上げ態勢が近づいているのが判る。

1000メートル通過する時には少し差を詰めたアーネストリーで、1馬身差の2番手。アンライバルドが少し前へ出て、3番手の外。1.01.8とキャプテン・ペースで半分が過ぎた。坂を下って残り800のハロン棒までに、ルーラーシップはかなり順位を上げていた。もう真ん中付近まで来ている。
ここではキャプテントゥーレは再び2番手に2馬身と差をつけ出し、いよいよピッチを上げる所作に入ったあたりか。
もうステッキが入る馬もいてかなりペースは上がった。アーネストリーにアンライバルドが前との差を詰めてカーヴへと入って来た。もうルーラーシップは4番手の外まで来ている。
内ラチピッタリを行くキャプテントゥーレ。追いかけるアーネストリーがかなり手綱を押している。アンライバルドの外へルーラーシップの姿が見え始めた。

水しぶきを上げてキャプテントゥーレが先頭を行く。残り200のハロン棒あたりで2番手アーネストリーに2馬身。ルーラーシップはその外1馬身差まで来た。そしてアーネストリーをかわしたルーラーシップが、前を行くキャプテントゥーレに少しずつ迫って行く。右ステッキを小さく回して追う小牧J。左ステッキで追う福永Jのルーラーシップが一完歩ずつ迫って、ついには捕えて前に出たところがゴールだった。
そこから3馬身近い後ろにアーネストリー。アンライバルドをかわして4番手に、後方からホワイトピルグリムが入って来た。ナリタクリスタルは、終始追いっぱなしの手応えで追走が楽でなく、直線に入る時にはもう手応えがなく、後方のままで終わった…。

《もうヴィクトワールピサの乗り方で行こうと思った》と福永Jが一段落着いた後の検量室前で、ブーツの泥を洗い流しながら語っていた。あのドバイの時のヴィクトワールピサのデムーロの乗り方をだろうと思える。キャプテントゥーレの完璧な逃げを、あのスタートのハンデがありながら差し切ったルーラーシップの底力。改めて能力の高さを知った思いだ。
久々のアーネストリーも、次はもっと良くなってくるだろうし、アンライバルドの復活も嬉しい限り。そしてこの後、宝塚記念ではトゥザグローリーがいる。《福永Jはどちらに乗るんだろうか》なんて事まで心配してしまう。しかし、《やっぱり強い馬は強いんだ》と、毎度ながら思う結末でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。