関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

岩崎祐己調教助手

陣営が最大の難関と語っていた皐月賞がまさかの11着。トーセンスターダムのポテンシャルを思えば意外な着順ではあったが、そのローテと乗り方を見れば、日本ダービー照準のローテーションであることは明らかだ。今回はダークホース的な存在へと変わるが、厩舎サイドの信念はこれしきで揺らぐことはない。その背中を知る岩崎祐己調教助手に、巻き返しに向けての手応えを聞かせてもらった。

理想はさらにパンパンの馬場

-:トーセンスターダム(牡3、栗東・池江寿厩舎)について伺ってまいります。休み明けのぶっつけだった皐月賞でした。直前になるまで、中山の馬場が硬くセッティングされているというのはわからなかったので、当初はトーセンスターダムには向かない舞台だと思っていました。しかし、当日に競馬場へ行ったら硬目の馬場だったので、これならそこそこ良いところに来られそうだな、というイメージを持ったのですが、レースが終わってみると意外な大敗でした。

岩崎祐己調教助手:「内は結構悪い」とユタカさん(武豊騎手)が言っていました。「中のほうは3コーナーくらいから馬場が悪くて、そこを通らせたら一気に脚がなくなった」とも振り返っていましたね。

-:僕らは馬場を歩けないので、ゴール前あたりを見て推測するしかないのですが、全体の時計の出方としても、その前の週はもうちょっと時計が掛かっていました。その日自体の時計も速くて、前残りのレースも多かったです。やっぱり、G1でちょっと芝を短くしたのかと思いました。ファンが思っている以上に、一周回るとコンディションは結構悪かったのですね。

岩:状態はすごく良さそうでしたし、正直、やれるかなと思ったんです。ただ、ちょっと間も空いたし、そんなにショックではないです。芝を刈ったのはあるかもしれないですね。馬場の見た感じは悪そうで、砂煙もあがっていたような気がしましたし、芝も結構はげていたと思います。

-:その前の週までは2000mのレースでも2分切ることはなかったし、もっと時計がかかっていたので、時計の出方自体は変わっていたと思います。やっぱり、トーセンスターダムはパンパンの良馬場の方がいいですか?

岩:跳びのキレイな馬なので、パンパンの方がいいと思います。

-:そういう意味では、巻き返しの可能性として、府中の今の馬場は申し分ないですね。

岩:そう思います。



-:勝ち馬でいえば、皐月賞二桁着順から巻き返すというのは、過去の歴史を振り返ってもそういないと思います。ロジユニヴァースとかダイナガリバーあたりですか。

岩:そういうデータがあるんですね。まあ、データはあくまでデータなので(笑)。

-:敗因を気にすると、ひとつだけではないと思います。初めての長距離輸送になったんですよね。到着してからの様子はどうでしたか?

岩:別に、悪くなかったです。落ち着いていましたし、ゲソっとしたわけでもなかったです。輸送が原因ではないと思いますが。

-:体重は486キロで、マイナス4キロでした。

岩:そんなに変わっていないですね。

-:では単純に、馬場さえ良かったら、ということですかね。

岩:そう思っていますけどね。あと、ちょっと大人しすぎたかな。競馬のテンションではなかったです。

-:トーセンスターダムもトゥザワールドも中沢助手が担当じゃないですか。本来ならトーセンスターダムも中沢助手が引っ張っるはずなのですが、音瀬助手が引っ張っていました。それから考えたら、もっとハイテンションでもよかったですよね。

岩:いつもは二人曳きしていますからね。もうちょっとうるさいかなと思っていたらえらい大人しかったです。

-:京都でレースをしている時なんか、ちょっと心配になるくらいチャカチャカしていましたからね。

岩:それくらいのほうがいいかもしれないですね。

-:ダービーではパドックを見るファンからしたらその辺も注目ですね。

岩:そうですね。



血統の底力を全面的に信頼

-:皐月賞を一回使ったことで、中間の動きは何か変わってきましたか?

岩:一瞬だけ牧場へ出したのですが、帰ってきてからは順調に乗れています。先週は僕が追い切って、まだ余裕がある調教でしたね。Cウッドで楽に、70-40くらいかな。息遣いもすごく良かったです。今週はユタカさんに乗ってもらって、反応もすごく良くて、「いいね」って言ってくれたので。来週やったらちょうど良くなるんじゃないかな。

-:もちろん、上積みがないと困るというか、見込んでの皐月賞だったと思います。

岩:上積みはもちろんあるはずです。血統の力で、東京2400mを走ってくれますよ(笑)。やってくれますよ。

-:お母さんのアドマイヤキラメキが、トーセンジョーダンとトーセンホマレボシの兄弟なんですよね。

岩:トーセンホマレボシの甥っ子になりますね。近親でも走っている馬が多いですね。ダービーはやってくれますよ。

-:もともと東京に標準を合わせていましたし、長い直線はこの馬には絶好のプラスになりますよね。ただ、母系にエンドスウィープが入っていることを考えると、距離的なベストはどうなんでしょうか?

岩:2000mとかになってくるんですかね。

-:ただ、ゆったりと折り合いを欠かずに走れますし、3歳春の限定戦なら能力の絶対値で距離はこなせそうですね。トーセンスターダムは新馬戦から3連勝ですが、全部が京都というのが引っ掛かります。それだけ、馬場が良いところへの適性があると思います。初めての左回りというのは心配ないですか?

岩:大丈夫だと思います。癖がある馬でもないので。



極めつけはダービー5勝騎手の手綱

-:左回りのコースを乗られたことはありますか?

岩:あります。基本は右回りが多いので、僕は気持ち悪かったです(笑)。ユタカさんはダービーを5回も勝ってますし、皐月賞の感じで、ダービーはこうしたらいいとか考えは持ってると思いますし、名手に安心して任せます。

-:この馬自体は、道中そんなに引っ掛からないですよね。

岩:そう思います。調教を乗っていてもないです。コンタクトを取れるし、ムキになったりしません。競馬と調教は違うので、はっきりは分からないですが。

-:皐月賞の疲れを癒して、体重はどれくらい回復していますか?

岩:前回とほぼ同じです。



-:レースから換算すると10キロくらい戻ってるんですね。2回目の輸送で、少しは慣れも見込めますね。ただ、ここまできた以上、キャリアがないとか言ってられないですよね。今年はレッドリヴェールという牝馬も侮れない強敵として出てきます。牝馬が出てくるレースに心配はないですか?

岩:馬っ気があるわけではないので、大丈夫です。

-:男だけのダービーとはちょっと違う雰囲気になる気がします。皐月賞を休み明けで3番人気というのは、相当ファンがいると思います。スターダムを応援しているファンへ巻き返しを誓うコメントをお願いします。

岩:素質と血統は抜群に良いので、ここは血統とユタカさんの力を信じます。やってくれると思いますので、応援よろしくお願いします。

-:ありがとうございました。

●皐月賞前
トーセンスターダムについてのインタビューはコチラ⇒


ディープインパクト産駒 ダービー全成績
馬名 人気 着順
2013年 キズナ 1人気 1着
2013年 ヒラボクディープ 5人気 13着
2012年 ディープブリランテ 3人気 1着
2012年 トーセンホマレボシ 7人気 3着
2012年 ワールドエース 1人気 4着
2012年 エタンダール 13人気 8着
2012年 ベールドインパクト 12人気 9着
2012年 スピルバーグ 9人気 14着
2012年 ヒストリカル 6人気 18着
2011年 トーセンレーヴ 5人気 9着
2011年 トーセンラー 7人気 11着
2011年 コティリオン 6人気 14着
2011年 リベルタス 17人気 中止
父ディープインパクトは、ここまで3世代で13頭もの産駒をダービーに送り出し、現在産駒が2連覇中。3年連続でダービーのタイトルを父にもたらすことはできるか。
ちなみに「3年連続で産駒のダービー制覇」記録を保持しているのはシアンモア(第2~4回)とサンデーサイレンス(第65~67回)の2頭のみ。


【岩崎 祐己】Yuki Iwasaki

京都府出身の1983年1月8日生まれ。2002年に騎手デビュー。マイネルイースター(加用厩舎)で2004年の阪神スプリングジャンプを制す。現役時代は田中耕太郎厩舎、岡田厩舎、西橋厩舎に所属し、2012年2月に騎手引退後は池江泰寿厩舎の調教助手となる。馬を仕上げる立場になって心掛けていることを「やっぱり池江厩舎の馬は元がシッカリしているし、血統も良いので、本当に変な癖を付けないように、馬を壊さないようにだけ気を付けて、後は普通にやっていれば走る馬たちなので」と語る。元騎手である技術を生かして、名門厩舎の躍進を支えている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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