関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

堀部光弘調教助手

12年日本ダービー以来となった長期休養明けの2走は、ダート戦で惨敗。しかし、満を持した芝での復帰緒戦(都大路S)は日本レコードのオマケつきで、誰が見ても目を疑うような圧巻の5馬身差圧勝。札幌2歳Sではゴールドシップ、スプリングSではディープブリランテをも下した素質馬が大舞台に帰ってくる。その復活を支えてきた堀部光弘調教助手に、反動も懸念される安田記念に向けての態勢を聞かせてもらった。

脅威の日本レコード復活を振り返って

-:グランデッツァ(牡5、栗東・平田厩舎)について伺っていきます。ダービー後の屈腱炎で1年7ヶ月の休養を余儀なくされました。後にダートを2戦使うも結果は2桁着順。ところが、前走の都大路Sで鮮やかな復活劇でした。レース前には復活の感触はありましたか?

堀部光弘調教助手:ダート戦のアルデバランS後、放牧に出しました。使ったからどうこうではなく、冬毛も抜けて以前の綺麗なグランデッツァになっていましたね。長休後のダートで2回使ったときの状態と比べて、見た感じが違いましたね。

-:体重的にみると、ダービーから1年7ヶ月休んでからプラス22キロ、そこから都大路Sまで10キロ減っているだけでした。結局、使ってきているわけですから、馬体の締りと張りは違ったと。

堀:体重のことはあまり気になりませんでした。牧場で増えているのは仕方ないですから、ベスト体重だったと思います。もっと軽くしてやろうという故意的なものはありませんでした。


「勝つとは思っていましたからね。もし、勝てないのなら、この馬の闘争心はなくなっているだろうと割り切れましたね。(レース後は) レースを使ったという疲労はありましたよ」


-:少しずつ良化して、2戦のような大敗はないだろうと思って挑んだ芝のレースですが、あそこまでの内容となると思っていましたか。

堀:勝つとは思っていましたからね。もし、勝てないのなら、この馬の闘争心はなくなっているだろうと割り切れましたね。勝つイコールあの勝ち方ではなく、勝ち負けするレースはすると思っていましたけど、あんなに強いとはね。レコードは逃げた馬の加減なので、ただのおまけだと思っています。

-:レースは驚異的なペースで進んでいました。スタートだけが12秒台、それ以外は11秒台でしたからね。1000m通過がハナに行っていた馬が57秒台でした。その2番手からバテずに突き放すというのは、過去最高のパフォーマンスではないでしょうか。2歳から注目されてきたとはいえ、恐れいったな、という感じです。強くなったなという衝撃とともに、激走の反動が心配でした。レース後の疲れはどうでしたか?

堀:レースを使ったという疲労はありましたよ。

-:賞金面で不安があっただけに、運も持っている感じですね。

堀:ただ。賞金を加算しなくても今回使えたみたいですが(笑)。

-:その割に、ジャスタウェイをはじめ相手関係も揃いましたね。

堀:そうですね。ガラッと変わりますからね。

-:同じメンバーを都大路Sに走らせても、レコードになっていなかったと思うんですよ。それが競馬の難しいところなんですけど、舞台が府中に替わって左回りのマイルとなります。これまでグランデッツァは1800mの相性が良かったですが、1ハロン短縮してマイルとなります。合いそうですか?

堀:1600を使った事はないけど、合いそう、というよりこなせそうですね。



安田記念は石橋脩騎手と初コンビ

-:都大路Sから中2週のローテは若干キツイ印象を受けるのですが、疲れをとって、サッとやって出るという感じになりますか。

堀:先週で疲れはとれている感じで、今週は来週の追い切りに向けた体づくりをしています。来週はサッとやって競馬に向かえそうです。

-:昨日、体を見させていただいたのですが、ちょっと痩せている印象を受けたました。体重を気にする必要はないとは思うのですが、これからカイバを食べていって気合が乗ってくれば体もパンと張ってくるでしょう。今はその過程にあるということでしょうか。

堀:疲労ピークで競馬を使って、超回復という段階にあります。今週が終わって、来週は良い状態になるかと。

-:乗られている堀部さんとしては、期待している馬が屈腱炎から復活できたのは、嬉しかったのではないでしょうか。

堀:我々が復活をさせたわけではないので。屈腱炎なので時間もかかるし、大変だったのは牧場スタッフさんじゃないでしょうか。我々は馬が入ってきたら、決められたレースに向けて予定を消化するだけですから。

-:グランデッツァは、フットワーク的に変わった走り方というか、あまり首を使わないで突っ張っているような感じがします。アグネスタキオン産駒はそういうタイプが多いと思うのですが、堀部さんが乗っていてどんな感じかを教えて下さい。繋ぎが長くて寝ている馬は多いのですが、この馬みたいに立っているのは珍しいですね。

堀:見た感じで想像するのとは違って、角のない、柔らかい滑らかな走りをする馬です。

-:そうだとしたら、キレイな良馬場でレコード駆けするのも頷けるのですが、スプリングSの時に馬場の悪いところでも結果が出ていますね。

堀:馬場の悪さの程度によると思います。スプリングSから中4週で皐月賞だったんだけど、そこでちょっと馬場状態が変わりました。ミルコも「同じようだけど今回の馬場はこの前とは全然違う」と言っていました。

-:むしろ、道悪歓迎でしたか?

堀:相手にとって不利になるのかな、と思った程度です。うちのは気にしないから、相手にとって不利になるだけだと思っていたけど、やっぱりダメでした。

-:本質的には、パンパンの良馬場で時計勝負になるくらいの方がいいですか?

堀:悪い馬場で走るよりはいいです。後のことを考えてもね。


「走るのは多分好きなんだと思います。キャンターにおろすと、いつもグイグイグイグイハミを取っていくんだけど、『早く俺を走らせろ』って言っているのかな」


-:今週のグランデッツァの気持ちとしては、走りたそうにしていましたか?

堀:走りたそうにしていました。走るのは多分好きなんだと思います。キャンターにおろすと、いつもグイグイグイグイハミを取っていくんだけど、「早く俺を走らせろ」って言っているのかな。フッと抜けて、そして、またグッとしっかり走りだすような感じです。

-:そういう前向きな良さがあって、しかも単に引っ掛かるだけじゃないというところがあの馬のいいところだと思います。今回初コンビを組む石橋脩ジョッキーもそんなに苦にすることはないですか?

堀:大丈夫。来週、栗東へ乗りに来てくれるらしいけど、そこで1回乗ったら感じるんじゃないかな。感じると思いますよ。

-:美男子に美男子が乗るわけですね。平田厩舎と石橋脩ジョッキーのコンビは珍しいですね。

堀:たまに乗ってもらっているかな。初めてではなかったと思います。僕らは楽しみにしていますよ。

グランデッツァの堀部光弘調教助手インタビュー(後半)
「長期休養中に体も骨格も成長」はコチラ⇒

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【堀部 光弘】 Mitsuhiro Horibe

広島県の福山市出身。福山からきた岡田騎手とは幼馴染みで、実家が福山競馬場で厩舎をしていた。中学卒業後は内藤繁晴元調教師の外厩(牧場)で働き、17歳で競馬学校に入学。平成元年に内藤厩舎に入り、現在所属する平田修調教師とは30年近い付き合い。平田師の調教助手時代の代表産駒はダイユウサクで、同馬を牧場で世話していたのは堀部助手という縁がある。普段馬に乗る時に心がけていることは「邪魔をしないこと」。年々、馬質があがる厩舎の屋台骨を支えている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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