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池江 泰寿調教師

池江泰寿調教師


オルフェーヴルダノンバラード、カフナと3頭出しの皐月賞で見事、オルフェーヴルが優勝。ダノンバラードも3着に好走させた池江泰寿厩舎。父である池江泰郎厩舎の有力馬を引き継いだこともあり、今や押しも押されるトップステーブルに登り詰めた池江厩舎だが、ダービーにも皐月賞の上位馬2頭に加え、ブエナビスタの弟・トーセンレーヴと3頭を出走させる。
今回はダービー直前で加熱する取材ラッシュの中、池江泰寿調教師には共同取材に対応。また、今年、調教師試験に合格し、池江厩舎の中でもスポークスマンとしての役割も果たしつつ、実際に調教も施している吉村圭司技術調教師に単独取材をさせていただいた。



好調を持続させるオルフェーヴル


-:今日(5/18)の追い切りはどうだったでしょうか?

池:本当に素晴らしかったね。タイムもそうだし、最後、(池添)謙一君も抑え気味だったからね。えらい時計になっているんだと感じたんだと思います。

-:前回はデビュー以来、初めて綺麗なレースをしましたね。

池:モタれる馬が真っ直ぐ走ると、ああいうレースになりますね。それが今回も出来るかはわからないけれども、それができるように、なんとか無事に当日まで調整したいです。
色々な意味で恵まれたというか、かみ合ったレースでしたし、そういう時じゃないと、なかなかG1って勝てないですよね。実力が拮抗していれば、一番運のいい馬にチャンスがあるだろうし。


-:この馬を初めてご覧になったのはいつでしょうか?

池:産まれてすぐです。今まで早い生まれが多かったのに、前年の種付けがズレこんだので、産まれるのも遅かったんですよね。見栄えはしないというか小さい馬で、これはどうしたものか、なんて思っていましたよ。よく考えると、兄(ドリームジャーニー)は早生まれで、それよりも大きかったんですよね。

-:先生はこの血統は2歳の上旬から成長すると言われていました。

池:それはあるよね。ジャーニーにしても、この馬や妹も、2歳戦から競馬が出来るのかというくらいに、小ささ体をしているけれど、ちょうどこの時期に成長するからね。

-:この馬は普段から気性が激しいタイプなのでしょうか?

池:ここ最近は装鞍所やパドックも、そんなには入れ込まないですよ。ジャーニーなんかの方が普段もやんちゃだし、パドックでもカリカリしていますよ。そういう意味でオルフェーヴルは新馬戦を使う時に落ち着いていて、全兄弟でえらく違うな、と思いました。ただ、新馬戦の時は競馬場に行ってから豹変して・・・。それでも、だいぶ治まってきたとはいえ、競馬にいったら内にササりましたからね。謙一君も内にキレ込むところはわかっているでしょうから、今度は外に行ったりすることもあるかもしれないけれど、気をつけたいですね。



ダービーで更なる上積みが見込めるダノンバラード


-:2月の共同通信杯から、久々のレースでしたが、レース内容について振り返って下さい。

池:開幕週の内有利の馬場の中、正攻法の競馬をして、一旦は(勝利が)決まったんじゃないかと思いました。オルフェーヴルも4角ではどこに出すのか?と心配していた中で、ダノンバラードが先に抜け出して、もう後続に差される事はないんじゃないかと思ったほどです。
1・2着馬の末脚に屈したのは、久々のせいもあるでしょうね。今回は1度使った上積みもあるし、今日の追い切りも、時計こそオルフェーヴルには見劣っているけれど、仕掛けた時のシャープさはヒケはとらないほどでした。


-:共同通信杯から皐月賞へ直行した理由を教えて下さい。

池:3月からウチの厩舎に来て、次は弥生賞かな?と思っていた中で、次は皐月賞まで使わないとオーナーから話がありましたからね。それに従っただけで、弥生賞を使っていれば、皐月賞はもっとやれたのかな、という思いもありますが、ダービーを見据える意味では良かったと思います。

-:今回、2400mに距離が延びます。

池:絶対いいと思います。皐月賞に出走させた馬の中で、東京二千が嫌だな、と思ったのはこの馬ですし、まだタイプが掴みきれませんが、ウチに来る前にコーナー4つの競馬を勝っていますからね(そういう意味でも今回はいい条件である)。

過酷なローテーションも撥ね退けたトーセンレーヴ


-:前走は厳しい条件の中で、見事、ダービーの権利を獲得しました。

池:こういう過程でダービーに出た馬は聞いたことがないけれど、無理な連闘ではなかったし、むしろ、プリンシパルSの時の方が、青葉賞よりも歩様は良かったですね。レース前には放馬などのアクシデントもありましたが、先週も角馬場には乗っていましたし、ジックリと疲労をとって、ガソリン満タンという状態です。

-:今後の調整はどういうメニューになりそうですか?

池:日曜に15-15、来週の水曜日にジョッキーが乗って上がり重点でやれば、大きな上積みはないけれど、前回のデキにはなるんじゃないかと思います。

-:この馬を一番、最初にみたのはいつでしょうか?

池:当歳の4~5月じゃないでしょうか。セリの下見でみた時ですね。ディープインパクト産駒らしく、小ぢんまりとしていて、かわいらしいなという印象です。あの歳のセレクトセールの目玉商品でしたね。

-:この馬のセールスポイントはどんな点でしょうか?

池:キレ味ですね。去年も爪を傷めたこともありましたが、歩様もだいぶ一番良かったころに戻ってきました。

-:デビューもだいぶ遅れましたが、ダービーに出走させることは思い描いていましたか?

池:こういうローテーションになるとは想像はしていませんでした。それでも、助手時代や海外にいた頃の経験が役に立ったと思います。

-:管理する08年産の3歳世代を総括していただけますか?

池:この3頭は若い頃から、凄い才能があったと思いますが、牧場サイドや努力の結晶もあっての結果だと思います。複雑なのは、もう一歩でダービーに出走させられなかったり、故障や能力を出し切れなかった馬もいますからね。
その馬達も、馬主さん達はダービーに出したいと思って、ウチの厩舎に預けてくれたわけでしょうから、こんなことを言ったら欲張りかもしれませんが、出られなかった馬達の事も気になりますね。オーナーが違うので「3頭で出られなかった馬の分まで」とは言えませんから。


吉村圭司技術調教師インタビュー
「兄・ドリームジャーニーを凌駕するか、皐月賞馬・オルフェーヴル」などへ→

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過去10年の同年の皐月賞馬の日本ダービー成績
馬名 人気
10 ヴィクトワールピサ 1 3
09 アンライバルド 1 12
08 出走せず
07 ヴィクトリー 2 9
06 メイショウサムソン 1 1
05 ディープインパクト 1 1
04 ダイワメジャー 4 6
03 ネオユニヴァース 1 1
02 ノーリーズン 2 8
01 出走せず
上記の通り、皐月賞馬は意外に本番で苦戦傾向で、勝ち負けがハッキリとした結果になっている。ただし、過去10年と異なり、今年は皐月賞が東京で行われている点は忘れてはならない。2Fの距離延長さえこなせば、オルフェーヴルの上位争いは多いに期待出来そうだ。




【池江 泰寿】Yasutoshi Ikee

1969年滋賀県出身。
2003年に調教師免許を取得。
2004年に厩舎開業。
JRA通算成績は244勝(11/5/22現在)
【初出走で初勝利】
04年3月20日 1回阪神7日目5R ソニックサーパス(1着/14頭)


■最近の主な重賞勝利
・11年 スプリングS/皐月賞(オルフェーヴル号)
・11年 日経賞(トゥザグローリー号)
・11年 アメリカJCC/・10年 アルゼンチン共和国杯(共にトーセンジョーダン号)


惜しまれつつ定年により引退した池江泰郎元調教師を父に持ち、武豊騎手とは同級生であり幼馴染でもある。開業3年目の06年にドリームジャーニー号で朝日杯FSを制しGⅠ初制覇。同年に最高勝率調教師賞を受賞し、さらに08年には最多勝利調教師賞も受賞。多数の名だたるオープン馬を育て上げ、もはや知らぬ者などいない誰もが認めるトップ調教師の一人。 先日の皐月賞もオルフェーヴルで制するなど、所属馬のレベルは現役厩舎トップクラスのラインナップを誇る。