関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

木村健騎手

木村健騎手

快進撃を続ける“園田の雷神”


-:木村騎手のこれまでの成績からも、非常に注目されるべき成績を残していらっしゃりますが、まずは木村騎手とのコンビで快進撃を続けているパートナー・オオエライジンの御話からうかがわせてください。オオエライジンに初めて乗った印象から教えてもらえますか?

木:八百(メートル戦)のあとだったんですけれど、八百をぶっちぎった割にはずっと遊んで走っていて、そのまま勝った印象でした。その時に「ちょっとコレは違うな」と……。追い切りではいい感触はあるんですけれど、運動の時も歩様はゴトゴトで、それがレースに行ったら変わりますからね。

-:この馬の良さはどんな部分ですか?

木:やっぱりスピードですか。ゲートを切ってからのスピードは類稀なるものがありますね。でも、ゲート自体は兵庫ダービー、黒潮盃は普通に出てくれたけれど、その前はゲートでうるさくて、決しては得意な方ではないですね。 それでも出遅れて、初めてモマれる競馬を経験した時も、最後は上がり3F36秒台の末脚で差し切りましたからね。「コレはやっぱりモノが違うな!走るわ」と思いました。

-:兵庫ダービーを圧勝した際の時計は、その前に当該コースで行われた交流重賞と比較しても、中央勢に太刀打ち出来るものだったと感じました。もし、黒潮盃でなく、ジャパンダートダービーに出ていたら、結果はどうだったと予想されますか?

木:ペースも違いますし、そこは何とも言い難いですけれど、イイ勝負は出来ていたんじゃないですかね(笑)?でも、使う予定はなかったので。それでも、黒潮盃に行って力を証明してくれたことは嬉かったですね。



-:適性距離はどれくらいでしょうか?

木:千八でも折り合いもつくし、乗り易い馬なので、距離は気にならないですね。あとは乗り込み方じゃないでしょうか?まだまだ鍛える余地はあるし、僕も鍛えてはいないですからね。まだ、化けてくる余地はありますね。

-:その調教具合は現状、どれくらいの程度なのでしょうか?

木:追い切りは普通に動くんですけれど、その前後の乗り込みが5~6分といったところなんです。普通に軽いところから、ちょっと負荷をかけたくらいというか。あの調教で、あれだけレース間隔を空けても勝つんですから、相当なモノですよ。

-:普段の園田の調教はどんなメニューなんですか?

木:内馬場をダグで2周くらい踏んで、あとはコースを2周半くらい回る感じですね。だから、3周半なんて回ったことないし、凄いですよね。

-:中央にしたら調教量は少ないですか?

木:少ないですね~!向こうは走る馬でもバンバン追い切り量をかけているし。でも、オオエライジンは2ヶ月で2本出来ていいところですから。 黒潮盃もこれまで地元の馬同士のペースで動いていたのが、速いペースで動かされたことによって、リズムを乱されてしまうこともあるじゃないですか?それでも、初めての流れにも動じずに勝ってしまうのだから“怪物”かなと。 4コーナーで手応えが違っていたので「勝ったかな」と思いましたけれど、抜けてからは遊び始めましたからね。その後も反動なく調教出来たし、それが凄いですよね。

-:木村騎手がこれまで跨ってきた馬と比較して、どれだけの器ですか?

木:僕も初めてですね……、こんな馬に乗るのは。だから、今でもビックリしているくらいです。

-:そういう馬が出てくると、日々に張りが出たりするモノですか?

木:イヤ…、僕は常に一頭一頭全力を注いで大事に乗りたいので、特別そういうのはないです。



-:怪我したり、騎乗停止になったり心配にならないですか?

木:そんな事は考えていないですし。騎乗停止とかを怖がっていたら乗れませんからね。といっても、ギリギリなシーンもありますが、僕は騎乗停止になったこと殆どないですね。

-:そんなに毎日、気を抜かずにビッシリ乗っていたら体調的にも問題はないですか?

木:いや、それが…去年ヘルニアになったんです。前のレースがオープンの千八で、頭を上げて刺さって掛かる馬がおったんです。その時にもちょっと違和感があったのですが、その次が最終レースだったので、無理して乗るかと思ったら、ゲートを切ってブチーン!と椎間板が神経に当たるような感じで、レースは回ってくるだけで精一杯。そこから2ヶ月半、療養ですよ……。

-:そこからは手術されたんですか?

木:色々なところで診てもらったんですけれど、手術をしたら、(メスをいれて)開かないといけないから「全治半年は掛かる」と言われたんです。そんな時にいい病院はないものかと探していたら、オオエライジンの馬主さんが奈良の方のレーザー手術の病院をとってくれて、とりあえず行ってみたんです。朝MRIを撮って、「コレやったらすぐ治りますよ~」と言われて、「ホンマかあ~」と思ったんですけれど、15分くらい、一瞬の手術で全然立てなかったのが立てるようになったんですよ。
行く前は嫁さんに車を運転してもらって、後ろの席で横になりながら「痛い~!」とか大騒ぎしていたのが、帰りは入院もすることなく、僕が車を運転して帰ってきましたよ。それで「治ったことだし乾杯するか~」と飲んだら、顔に斑点が出来て、頭が割れそうになって死ぬかと思いました(笑)!手術の日に酒を飲んだらダメですね。


-:奥さんも心配しませんでしたか?

木:そうですね。結婚してなかったら、どうなっていたんでしょうね。結婚して、すぐの出来事で嫁さんもおったから、どうにかなったと思うし。これまでずっと競馬に乗り続けてきましたからね。一時は「騎手生命終わりやな」と思ったくらい、テンションが下がって……。それでも、「治ったら乗れるやん!」って励ましてもらった言葉で立ち直れましたから。

-:今、痛みはないんですか?

木:ないですね。でも、いつ出てもおかしくないところにあるらしく、次出たら、あの痛みには耐えられない。次の仕事を考えるだろうね。痛みはぎっくり腰の非じゃないですよ。

(そこへ所用で小牧太騎手が登場)

木:うわ~フトシさんだ!


木村健騎手インタビュー後半
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【木村 健】Takeshi Kimura

1975年 和歌山県出身。
地方初騎乗・初勝利
93年10月20日 園田競馬2R カイズカスター
通算成績は2296勝 (11/10/11現在)


■主な重賞勝利
・2011年 黒潮盃 / ・2011年 兵庫ダービー(共にオオエライジン号)
・2010年 チューリップ賞(ショウリュウムーン号)


地方競馬の兵庫県競馬組合・園田競馬場西川精治厩舎所属の騎手。父・隆は元騎手。 06年に兵庫県リーディングを初めて獲得すると、08~09年も同リーディングを獲得。また、08~09年は全国リーディングでも2位と第一線で活躍を続けている。 中央への参戦は多くはないものの、昨年はショウリュウムーンに騎乗して、チューリップ賞を制し、JRA重賞初勝利を挙げた。 ダイナミックな騎乗フォームは唯一無二のもの。今や園田の枠を超えて、全国屈指の名手といえる。