一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
とりわけ力が入る土日メイン
2017/7/13(木)
先週は土曜に2勝を上げることができました。フィルハーモニー(3人気)は短い直線だけで前の馬を全て交わしてしまったという感じ。道中は戸惑っていたようで進みも良くなかったのですが、直線に向いてエンジンがかかってからは一気。時計は普通でも内容があるレースでしたし、大きな馬で走りがゆったりしているので、距離が延びてからも楽しみですね。ゲッカコウ(3人気)はレース前に16キロ減が気になったものの、問題なく調教の良さを発揮することができました。かえって絞れているくらいで良かったのかもしれません。そして、七夕賞のマイネルフロスト(5人気②着)も後続に脚を使わせる競馬ができて上手くはいきましたが……。③着以下は横一線なので勝ち馬を褒めるべきかと思いますし、惜しむらくはマルターアポジーが想像よりも早く止まってしまったので、気持ちタメられていればもう少し際どかったかもしれません。今期は状態が安定していますし、ブリンカー効果で手応えがなくなってからのひとふん張りが違います。
この土曜は福島で9鞍に騎乗します。4Rのコスモエアターンは福島コースの2000mは合いそうなイメージ。前進させてあげられる条件だと思います。5R(2歳新馬)のマイネルカルムはゲート試験から続けて追い切りも乗せていただいています。スタートに課題こそありますが、小さい馬でも全身を大きく使えて仕上がりは申し分ありません。6R(2歳新馬)のシャイニーカラーズも今週の追い切りに乗せていただきましたが、かなり気持ちが前向き。パワフルな走りで、いかにもダートの短距離は合いそう。今夏は2歳戦と相性が良いので、この2頭もそんな流れに乗せてあげたい。
7Rのアシュランスの前走は勝った馬が強かったという内容。距離短縮で良さが出たので、あのスピードなら1200mでも戸惑わないはず。改めて期待しています。9Rのグレンデールは1年振りの実戦がどう出るか。ただ、福島の芝1200mが一番合う馬で、500万では本来力が上だと思っています。11Rのコスモカナディアンの中間には跨っていませんが、休養前と遜色ない状態とお聞きしています。降級で1600万に出走できるので、力さえ出せれば勝ち負け。先々まで期待している馬なので、いいスタートを切りたいですね。12Rのエスティームは気の難しいところがあるものの、昇級緒戦からいいところを見せてくれました。コースは問題ないので、シッカリ走ってくれれば力は互角以上です。
日曜も福島で9鞍に騎乗します。1Rのキサラギコマチの初戦は思っていたよりも走りきれなかった印象。そういった意味で一度使った上積みは大きいと見ています。2Rのコスモノーズプレスは初戦の感触を思えば、ここ2戦の足踏みが意外。右回りの走りがいいので、コース替わりで前進に期待しています。7Rのマイネルハレオは決して東京コース向きではないのですが、ここ2戦は力をつけてるなという内容で頑張っています。福島コースかつ2600mも向いていると思うので、何とか結果を出してあげたいところ。
8Rのワンダフルラッシュは1000万からの降級。ここ2戦は状態が本物ではなかったように思うので、改めて力を見せてもらいたいです。9Rのクイントゥープルは決め手勝負になると分が悪いので、小回りを活かして流れに乗せてあげたい。タイプ的に1ハロン延長はいいと思います。11Rのコスモドームはどうしてもスタートが速い馬ではないので、コース取りのリカバリーができる少頭数は大歓迎。ハンデもいいと思いますし、ちょっとしたところに気をつけて乗れれば勝ち負けになるイメージ。条件的に本当にチャンスなので、何とか勝利を手にしてあげたい。
今週は月火とセレクトセールに行ってきましたが、気候もセリもとにかく熱かった。世界の一流とも言える血統に圧倒されっ放しでした。そんな素晴らしい馬でも、僕は見た目だけでは分かりません。オッという馬は乗るとすぐに分かるんですけどね……。あのセールに出ている馬がどんな背中をしているのか気になりますし、乗せていただけるような騎手になるように頑張るだけです。そして、日頃からお世話になっている馬主さんにゆっくりとご挨拶できたのも嬉しかった。競馬関係者にとっては最大の社交場でもありますね。余談ですが、行きは首都高の渋滞に遭い15分前、帰りは盛り上がりすぎで出発が遅れて20分前のギリギリで空港に到着。いずれも車を降りて猛ダッシュで、色々なところでドキドキした2日間でした。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。