一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
サウジアラビアRCはコスモインザハートに騎乗
2017/10/5(木)
先週末は前回記したとおり日曜から北海道に飛び、ビッグレッドファームとオータムセールに顔を出してきました。牧場では1歳馬が早くも動けるような態勢で、ホエールキャプチャの仔(父オルフェーヴル)に乗せていただきました。再来年のクラシックを目指す世代になりますが、胸が躍るような乗り心地で驚きました。僕は相変わらず馬は見極められませんが、セールも盛り上がっていましたよ。そして、火曜朝からは普段どおり調教に跨り、競馬を待ち遠しく思っているという状況です。
この開幕週は3日間開催、初日の土曜は東京で6鞍に騎乗します。サウジアラビアRCのコスモインザハートは、札幌2歳Sでかなりノメって走っていたことから当日の天気が気になるところ。ただ、馬場がボコボコしない開幕週なので、そのあたりを相殺してくれると良いのですが……。新馬を勝った時がそうだったように理想は硬い馬場で、直線が長い中央場所のコースはかみ合いそうな気がしています。もちろん今回も期待していますが、先に向けて適性が掴めるレースになるのではないでしょうか。3Rのマイネルファンロンの初戦は思いのほか道中で手応えが怪しくなりましたが、そこから最後まで頑張ってくれました。広い東京コースはむしろ合うと思うので、改めて勝ち負けを意識しています。
7Rのマイネルクラースはダートに替わった前走で一変。中間に跨ってはいませんが、それまでが結構使っていたので、リフレッシュ効果と夏を越しての成長に期待しています。あのパフォーマンスを振り返れば、舞台も同じなので久々かつ昇級でも頑張れると思います。9Rのダイチトゥルースの前走(⑮着)は休み明けの分ではないでしょうか。極端に前が止まらない展開になるとどうかですが、1000万でも十分にやれる馬です。10Rのマイネルフレスコは東京コースのヨーイドンが割引かもしれません。時計が速い開幕週もプラスではないので、ハンデを利した立ち回りを意識したい。12Rのパフォームは、向くと思っていた前走の1400mが結果的に忙しかった。折り合いに気をつけて乗れれば、むしろ1800mに戻るのは歓迎です。牝馬限定戦で条件もいいので巻き返したいですね。
日曜も東京で7鞍に騎乗します。1Rのアサヒキリの初戦はスタートであまり進んで行かずも⑥着。距離が延びて流れに乗れるようなら前進が見込めます。素直で全体的なバランスはいい馬です。2Rのコスモフェリークの前走はハナになりましたが、一連の内容からどんな競馬もできる馬。左にモタれるところがあるので、むしろ東京競馬場で乗りやすくなると思います。7Rのテンキセキはゴチャつかず砂を被らない位置で進めてあげる展開が理想。そういった意味では距離が1600mに延びて前半楽になりそうなので、そこから最後まで保たせられるかがポイントですね。
8Rのアンネリースの前走は、休み明けの分で最後に脚が上がってしまった印象。距離が延びるので折り合いに気をつけなければなりませんが、使った分の上積みで前進がありませんか。500万でも力は上位くらいに感じている馬です。10Rのオニノシタブルは東京1400mがベストで、満を持してという秋緒戦ではないでしょうか。毎回、自分の時計は確実に走ってくれる印象があるので、馬場が少しでも乾いて展開がかみ合えば強烈な末脚を発揮してくれるはず。
祝日競馬の月曜も東京で8鞍に騎乗します。1Rのラプターゲイルは降着で迷惑をかけてしまった馬ですが、2走目でレースには進歩がありました。距離が延びて追走も楽になると思いますし、上手に走らせてあげれば改めて差がないはず。前走の失敗を取り戻したい、自分にとっては力が入る一戦です。2Rのゴールドシャッツは馬を凄く気にしてしまうところがあり、前走も伸びそうなところでブレーキを踏んでしまっているという印象。そんな面を矯正するため、追い切りからチークピーシズを着用しました。力差はないと思っているので、レースでその効果に期待しています。7Rのアッキーは降級なのでそもそもの力は上位の馬。ただ、気難しい面があるので、休み明けでスムーズなレースができるかどうかだと見ています。
8Rのシュピールカルテは、この馬にとって一番合っている条件。休み明けでも力を出せるタイプなので、イキナリから期待しています。11Rのマイネルバールマンは、前走で⑬着に負けてしまった敗因が掴めていないんです。オープンとなれば相手も弱くないので、まずは着順を上げてほしいというのが本音。気持ちの問題であれば、能力的に巻き返せるだけの馬です。12Rのマイネルツァイトの前走は、息の入り方がいかにも休み明けという印象でした。状態的な上積みは見込めますし、東京の1600mなら前進させられるイメージです。
騎乗停止明けにも関わらず、楽しみな馬を揃えていただいて関係者の皆様には感謝しかありません。例年なら鬼門になる東京開催ですが、昨年同時期と比較しての勝ち星的にもここからが正念場。恩返ししながら勝利を積み重ねていくので、結果を見ていてくださいという気持ちで臨みます。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。