一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
弥生賞はナイママに騎乗
2019/2/28(木)
中山開幕週は勝つことができず、コマノヴァンドール(4人気4着)が最高着順。乗り味が良く返し馬からはもう少しやれそうな感触でしたが、レースに行くと最後の直線まで周りに気を使いどおし。それでいて3着馬と差のないところまで来ているのですから、慣れが見込める次走からが楽しみ。週が明けて水曜は川崎のエンプレス杯に参戦し、転厩前は中央でも乗せていただいていたアッキー(10人気)とのコンビで5着。メンバーを考えれば本当に頑張ってくれましたが、かねてからこの馬は気持ちひとつ。今回は返し馬の感触がとても良く、ゲートを出てからも自分でハミを取って最後まで気持ちが前に前に向いていました。移籍した後も一番いいタイミングで乗せていただき、関係者の方々に感謝しています。
この土曜は中山で8鞍に騎乗します。オーシャンSのエントリーチケットは1200mではオープンに入っても安定おり、また一段と力をつけている印象。器用なタイプでコースも合うはずなので、機動力を活かしてスムーズな競馬を心掛けるのみです。1Rのサクラザチェンジは期待していた前走でブリンカーを外してみましたが、気持ちが乗りすぎる面を考慮しても着けて臨んだほうが良さそう。コース実績と相まって、再ブリンカーにより巻き返せるイメージです。3Rのマイネルイヴィンスの前走は、思っていたよりも東京1600mの流れとかみ合わなかった。この馬も中山1800mの適性は間違いないので、コースが戻って力が入ります。
7Rのスペキュラースは自己条件の500万クラスなら乗り方ひとつという段階。少し決め手に欠ける面があるので、馬場状態を考慮しつつ補うような工夫をしてみたい。8Rのマイネルヴンシュは1000万クラスであれば断然の力を持っている馬。先週の追い切りに乗せていただき動ける感触は掴んでいますが、1年以上のブランクにつきます。期待は勿論ですが、次に繋がるレースにもしてあげたい。9Rのマイネルツァイトは持っている力が結果に結びつかない時がある難しいタイプ。当日の気配次第と曖昧な言い方になりますが、久々がむしろマッチする可能性はありそう。10Rのエネスクは使っていくと気持ちと体が落ちてきてしまうタイプ。この休み明けは走れるはずで、中山1800mもお馴染みの舞台。湿った馬場にも対応できるので頑張ってくれると思います。
日曜も中山で6鞍に騎乗します。弥生賞のナイママの前走は東京1800mが合わなかった印象でしたが、馬の状態が上がってきたというのは凄く感じました。タイプ的に渋りそうな馬場は歓迎なので、中山コースかつ自分のリズムで走れれば変わってくれるはず。川崎で河津先生と話をしましたが、状態面はとにかく順調と聞いています。1Rのコスモアドムは敗因が掴みきれていないものの、ここのところの調教の雰囲気が凄くいい。この中間はメンコを外したことが刺激となりピリッとしてきたので、前走のようなことはないと見ています。5Rのアルママも順調で、調教の内容と競馬の内容が結びついてきました。近走は上手に競馬できており、芝の中山マイル戦も問題なく対応してくれると思います。力さえ出せれば勝てるはずなので、今回は改めて力が入ります。10Rのマイネルオフィールはなかなかマッチするレースを使えないところもあったようですが、今回は中3週でベストと思える舞台。順調となれば地力的にもっと頑張ってくれるはずです。
川崎の話に戻りますが、エンプレス杯直前の10Rは師匠である栗田博憲先生の管理馬最後のレースで、ビーサプライズド(6人気)に騎乗しました。何としてもという気持ちで精一杯追いましたが結果は7着。それでも、最後の最後にこういった機会をいただき、やはり巡り合わせはあるのだなと不思議な気持ちになりました。その後は地元に戻り、善臣騎手、蛯名騎手、横山典騎手、勝春騎手、他にもゆかりのある方々と慰労会を開き、楽しい時間を過ごさせていただきました。長きに渡ってのホースマン人生、本当にお疲れさまでした。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。