一時は年間0勝というどん底を味わいながらも、今や大手の主戦ジョッキーとして活躍を見せる
不死鳥ジョッキー。諦めることなく復活を果たした男が日々の騎手生活を自らの言葉で紡いでいく。
毎日王冠はワンダープチュックに騎乗
2020/10/8(木)
中山最終週は勝つことができずホウオウモントレー(4人気4着)が最高着順。いつものようにスタートは速くありませんでしたが、ペースが遅かったことで馬が自分からハミを取ってくれて、砂を被らない位置で立ち回れました。少し展開さえ向いてくれればという段階まできています。初ダートのカイトレッド(4人気5着)は走りが良かったです。間隔が空いていた分の着順だと思いますし、使って状態さえ上向けば前進できるはず。東京のワンターンのコースなども向きそうな感じがしました。
開幕週の土曜は東京で8鞍に騎乗します。 1Rのロデオスターメイトの前走はスタートが上達して気分良く走っていたのですが、その分で脚が保たなかったという感じ。もう少しジワッと乗るアプローチで前進を見込みたい。2Rのマイネルグロースはデビュー前の調教に毎週乗っていました。自分が乗れなかった初戦もイメージ通りの競馬をしてくれましたので、広いコースと使った上積みで前進させてあげたい。3Rのフカイの前走はやや距離が長かった印象もあり、改めての1400m。着順こそ芳しくありませんが、もっと走れるはずの馬です。5R(2歳新馬)のコスモクーシェリは先週の追い切りに乗せていただきました。ゲートが速くて仕上がりも良く、全体的に水準以上だと思います。初戦から走れる態勢なので楽しみですね。
6Rのマイネルイヴィンスの前走はブリンカーこそ効いていたものの、力を出し切れたかというとそうでもない感じ。時計の速い馬場は歓迎とは言えませんが、集中して走ってくれれば2100mという距離は向くはず。7Rのアドアステラは本当に流れひとつという段階。何とか勝たせてあげたいという気持ちにつきます。8Rのタイドオーバーの前走は間隔が空いていた分だと思います。気持ちが途切れやすい面があるので、とにかくスムーズな立ち回りを心掛けたい。12Rのエンは今週の追い切りに乗せていただきましたが、まさに抜群という動きでした。時計の速い馬場が鍵になりそうですが、芝で走ってきた馬なので、何とかこなしてくれませんか。調教だけ走らせられれば自ずといい競馬になるはず。
日曜も東京で10鞍に騎乗します。毎日王冠のワンダープチュックは、有難い栗東の河内厩舎からの依頼。すでにレースを見て研究していますが、道悪も経験しており、枠が良かった前走でこの開幕週にもマッチしそうな勝ち方。2歳時以来の重賞でもキャリアはあるので、上位食い込みを目指します。1Rのコスモコラッジョの前走は小さい不利が重なって、考えていたような競馬ができず。涼しくなったことにより元気一杯で馬に気持ちが入っているので、前進させられるタイミングだと思います。2Rのマイネルレスペトの前走は暑さが堪えたのか気持ちが入っていませんでした。先週乗せていただきましたが動きが戻っており、今回はブリンカー着用。集中して走ってくれれば巻き返せるはず。
3Rのスノウリリーの前走はゲートを出てくれず後方から。ハミを換えたことで道中スムーズな競馬はできていたので、距離延長がいい方に向いてくれませんか。4R(2歳新馬)のマイネルニゲラは追い切りに乗せていただいており、やる毎に動きが良くなってきました。その分でテンションが上がってきたので、とりわけスタートには気を付けたい。使ってからかもしれませんが、能力は高そうな馬です。5R(2歳新馬)のオープストガルテンもやる毎に上向いて好仕上がり。線が細い分で本当に良くなるのは先かもしれませんが、現時点でどこまで走れるか楽しみです。7Rのコスモクウは道悪が得意でマッチしそうな舞台。半年振りなので立て直した効果と成長力に期待したい。
8Rのジャカンドジョーの前走は久々かつ距離も忙しかった印象。ひと叩きした効果と距離延長で前進させられるイメージです。9Rのマイネルカレッツァは道悪得意なのですが、3勝クラスに入ってからは苦戦傾向。ロスなく乗って最善を尽くします。12Rのソスピタは外枠に距離延長が堪えたのか、前走は2走前の反応がなかった。あんなものではない馬なので、クラス2戦目かつ1400mに戻る今回は巻き返したい。
先週日曜は日本とフランスのG1をモニター越しに観戦しましたが、とりわけスプリンターズSのグランアレグリアの勝ち方はケタ違いでした。乗っていたら他の馬が止まって見えるんだろうなと、ジョッキー目線でもあの一瞬でつけた着差には驚愕です。そして、豊さんの騎乗を楽しみにしていただけに残念だった凱旋門賞も、終わって見れば日本でお馴染みのクリスチャンがソットサスで勝利。レース毎の対応力が際立つジョッキーなのですが、それをソツなくあの大舞台で実行していますからね。それぞれ刺激を受けましたし、この秋もとにかく重賞騎乗を毎週の目標にしていきたいです。
プロフィール
柴田 大知 - Daichi Shibata
1977年6月18日生まれ、栃木県出身。
1996年に騎手デビュー。デビュー2年目までは年間20勝以上をマークする若手有望株として注目を浴びたが、年々勝ち星が減少。遂に2006〜2008年は未勝利に終わった。しかし、騎乗数を徐々に取り戻すと、2011年には中山グランドJで涙のG1制覇。「マイネル軍団」の主戦ジョッキーとしてのポジションも確固たるものとした。2013年にはマイネルホウオウでNHKマイルCを制し、平地・障害ダブルG1制覇を達成した。