競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【マイルCS】ゴール前の攻防が面白い一戦
2020/11/17(火)
安田記念でアーモンドアイを差す。1200でもその切れはブレない。気が付けば、今年はG1ばかり3戦であの雨の高松宮記念でも2着。安田記念、スプリンターズステークスと連勝。春、夏、秋と走ったレースでは、最速の上り脚で駆け抜けている。
思いだせば、昨年12月の阪神カップ。内ラチ沿いから馬の間を縫う様に前へ出てきたグランアレグリア、ノーステッキで5馬身もの差をつけて勝った。あれは強烈な印象で残っている。この馬の切れは群を抜いている。幸いに木、金は雨マークだが週末は大丈夫。
相手候補は、当然に3歳のサリオス。路線を短くして真価を問う。同じ3歳馬では昨年の最優秀2歳牝馬、レシステンシアのスピードも魅力。インディチャンプにアドマイヤマーズもいる。ゴール前の攻防が面白い一戦となりそうだ。
【エリザベス女王杯の回顧】
20年11/15(日)5回阪神4日目11R 第45回 エリザベス女王杯(G1、芝2200m)
- ラッキーライラック
- (牝5、栗東・松永幹厩舎)
- 父:オルフェーヴル
- 母:ライラックスアンドレース
- 母父:Flower Alley
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2着のサラキアとの差はクビ差ではあるが、その差はとてつもなく大きなもの。ラッキーライラックが4角から早めの仕掛け。直線の坂に入る前から先頭。一旦は2、3馬身の差をつけたが、最後はサラキアとラヴズオンリユーにクビ、クビ差に迫られたエリザベス女王杯。だが、それは数字上のことで実際は後ろの馬が届く前に先にゴールなのであった。
ルメールがレース後のインタビューで、アナウンサーにそこを聞かれていたが、軽く、いなす様に応えていた。「でも、遅かったね~」と。「着差はクビでも、永遠の差ですよ~」と言いたかったのだと思う。
馬場入りして返し馬を終えた時に、専門紙上にキャンターで良かった馬に印をつけた。◎はラヴズオンリユー、動きがしなやかだった。〇がサラキア。いい雰囲気で走って行った。そしてラッキーライラック。これには▲、実にスムーズな走りでポケットへと入って行った。レースを見終えて、しばらくしてそうだっけと印を見直すとちゃんと、いい馬が来ている。流れる様に走る馬は、好結果を出す。当たり前の事ではあるが。
そもそも、ラッキーライラックがこの位置からレースをするとは予想だにしなかった。そこが今、いちばん日本で乗れているジョッキー。強い馬に巧いジョッキーが乗る。
以前に横山典騎手と話したことがある。いかに馬の上で邪魔をしないことだと。ルメールも翌日の日刊紙に載っていたが、「1番人気の馬はミスをしなければ勝てる」と。
ラッキーライラックを何度も見て来たが、印象としては乗り難しい馬と思っていた。ゲートの出は早く好位で競馬をする。後は4角まで無駄な動きをしないで直線へ温存する。そんなイメージの馬だった。時々、手応えほど伸びない、そんな競馬を何度も見てきた。それがこれだけ後ろから行き、3角からのロングスパート。
今までと違う乗り方で気持ち良く走らせたルメール。ラッキーライラックと有馬記念でもう一度、素晴らしい技を見せてくれるか。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。