競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【朝日杯フーチュリティ・解説】男の意地、アドマイヤマーズが完勝で2歳チャンプに!
2018/12/18(火)
18年12/16(日)5回阪神6日目11R 第70回【朝日杯フーチュリティS・解説】(G1)(芝1600m)
- アドマイヤマーズ
- (牡2、栗東・友道厩舎)
- 父:ダイワメジャー
- 母:ヴィアメディチ
- 母父:Medicean
2番手を進む圧倒的1番人気のグランアレグリア。前を行くイッツクールに1馬身の間を置いて続く。そのうしろ2馬身でアドマイヤマーズ。ラスト600手前から先に仕掛けたのは、アドマイヤマーズ。4角のカーブに入る前から追いだした。ステッキを1発入れてゴーサインで一気に前を交わしていく。グランアレグリアもその動きは想定内だったのか、すぐに内から追い始める。
ラスト200で両馬が並んだかと見えたが、グランアレグリアが内へもたれだす。勢いが増したアドマイヤマーズ、そのまま真っすぐにゴールを駆け抜けた。
2着は、内から外へ出して来たクリノガウディーがグランアレグリアを交わす。ファンタジストは、そこから差のある4着までだった……。
いつものごとくひとつ前のレースの観戦をつぶして、パドックの入場から見届ける。グランアレグリアを探すが、前にいない。後ろに廻ったようだ。やや小走りで入ってきたが、耳が立っている。何か落ちつかない様子だ。だが、周回しだしたらそれほど気にならなくなった。
アドマイヤマーズは適当にハミを噛む音が聞こえる。ファンタジストとケイデンスコールのロードカナロア産駒もまずまず。クリノガウディーがいい馬体にみえる。父スクリーンヒーローがそうさせるのかと決めつける。
ジョッキーの騎乗前にパドックを後にする。キャンターが見れるいつもの場所へと移動する。
グランアレグリアは、馬場入りしてすぐ左へとキャンターで去っていった。藤沢和厩舎は《先出しの馬とかいろいろいるからな~》と気に留めないようにする。人気どころで決まりそうだなと、返し馬の印象を結論する。見渡すスタンドのテラスはファンの頭で埋まっている。馬券的には面白くない堅い決着になりそうと心で思う。そして生ファンファーレ。スタンドでチラホラと傘が開きだした。
『オオッ!~』と場内がどよめく。グランアレグリアが前へと出て行ったからだろう。アドマイヤマーズもすぐにそれを追う。ファンタジストも、まずまずのポジション。
一番前に出たのはイッツクール。これも想定内か。グランアレグリアが2番手、イッツクールの真後ろを走っている。アドマイヤマーズがそこから2馬身後ろ、ディープダイバー、内にクリノガウディーと並ぶ。ケイデンスコールは後ろめにいる。
3角を過ぎたあたりから、後ろでオレンジの帽色が動いていく。だがそんなに前までは動かない。遅くはないのだろうが、速くはない。前に有力馬がいるから落ち着いた流れとなっている。
ラスト800を過ぎたあたりから、M.デムーロ騎手が仕掛けだす。3番手でいいポジションかと思えたが、前をさらに捉える勢いで動く。ロングスパートを決断していたのだろう。グランアレグリアが馬の真後ろで脚を貯めていたのだが、そこを一気に交わして前へと勝負に出たミルコ。アドマイヤマーズが一気にレースを動かす。4角に入る前に、何か異様な動きがあったように感じた。後で判ったのが4番手、アドマイヤマーズの後ろにいたディープダイバーが、内のクリノガウディーの方へと寄ってしまったようだ。
PVを見上げる報道関係。クリノガウディーが、ディープダイバーに入られて下げざるを得ないシーンを何度も見る。直線のラスト1Fから、クリノガウディーがグングン伸びる。PVは縦位置の映像だから、まるで直線でアドマイヤマーズに届きそうなところまで来たように見える。あの不利がなければ勝ち負けかと思えるほどに。
検量室から出て来た藤岡佑騎手。報道陣に捕まって少し話をした後、外へ出て行く。ちょうど、次のレースのパドックへ行こうとした私と並んだので会話をする。
『佑介、あれがなかったら勝っていたか~』と聞く。『際どかったでしょうね。追い切りに乗って、これは勝てるぞとただ思っていました。それくらいい動きだったんです。』と内心の野心を後で知る。だから対話、会話が必要なのだ。
ファンタジストはやはり『枠が内だったら』と武豊騎手。イッツクール以外の前に行っていた馬ばかりの内めの馬で決着した。ラチ沿いの馬がワン、ツー、スリーである。
そしてレースを終えて、やっぱり生産はノーザンファーム。鞍上はカタカナ・ジョッキー。いつもどおりの流れが続く。G1はあと2つだが、この流れを切る日本人ジョッキーは出るのだろうか!
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。