競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【金鯱賞・解説】 最後に尻尾をひと振り!ダノンプレミアム完勝!!
2019/3/12(火)
19年3/10(日)2回中京2日目11R 第55回 金鯱賞(G2)(芝2000m)
- ダノンプレミアム
- (牡4、栗東・中内田厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:インディアナギャル
- 母父:Intikhab
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今年の強豪の緒戦としてはこれ以上ないぐらいに集まった顔ぶれ。G1馬が5頭、ほとんどが重賞勝ち馬の構成の金鯱賞。
昼前ぐらいから傘を差す人がいたが、芝はひとつ前の9Rで稍重になった程度。意外と馬場状態は思ったほど悪くならなかった。タニノフランケルが先頭を行き、ギベオンが2番手。1000mを1.01.1とユッタリの流れ。勝負は追い比べとなった。内でじっとしていたダノンプレミアムが、直線半ばで外へ出してから追って伸びて快勝。さらに外からリスグラシューが追いすがったが、2馬身近い差が開いた。1番人気の支持のエアウインザーが3着。ダノンプレミアムが、昨年のダービー以来の実戦を堂々の勝利で再出発とした。
ダートは切れのいる馬場になったが、芝はそうも傷まない様子。見た目にも青々とした芝がデンとしている。前のレースで検量室前で取材していた。その流れで場内へ戻るのは時間の無駄と、パドックの裏手へと廻る。そう、パドックへの入退場の時の通路から各馬を眺めるのである。
そこへ向かうと思わぬ人がいた。関東は大竹師である。《あれっ?出走馬はいたっけ…》と思った。そうか、敵情視察かと納得。この相手は、これから戦う相手ばかり。そのライバル達の出来を見に来ているのだと、ブラストワンピースのための動きと知る。
アルアインがブリンカーをしているのを初めて知った。B着用である。競馬専門紙でも触れていない。これは何を意味するのか?
このクラスの馬がパドックで悪く見える訳がない。どの馬もそれなりの風格、個性があってそれぞれが確立されている。後は自分の好みで、馬券の対象になるのか否か。だが、これでいつもやられてばかりだが…。何となく判った様な、判らない様な。
観戦する場所へと戻る。返し馬もジックリ見てレースを待つ。この中京競馬場は熱烈なるファンが多くて、馬場入りの時やゲートを出た瞬間からも、大きな声でジョッキーや馬名を大声でガナる。その声のすさまじいこと。
やや、リスグラシューがアオったらしい。双眼鏡でスタートを見ていたが、少し薄暗くなっていたからなのか、あまりクッキリと見えなかったし、そう大きな動きには見えなかった。目の前を通っていくのだが、タニノフランケルが先頭でギベオンが続き、最内をダノンプレミアムが外めに、ムイトオブリガードが。アルアイン、そしてペルシアンナイト、エアウインザーと続く。リスグラシューとモズカッチャンがまだ後ろだ。
向こう正面に入っても、大きな変動がないまま流れる。少しタニノフランケルが後ろを離したか。それでも大きな差ではない。
中京は3角から4角手前少し前までが見にくい。樹木で見えない。画面に視線を替えても、後ろを撮っていて前を映していない。ここらの改善が欲しいと常に思う。
4角手前になって、やっと馬群が視界に入ってくる。リスグラシューがだいぶ前へと来ている。エアウインザーの少し前にいた。内のダノンプレミアムがジトっと構えている。そして直線へと入ってきた。
果たしてどの馬が伸びて来るのか、注目の直線半ばである。
だがそんな興味も、1頭の馬の動きで全てが判ってしまう。ダノンプレミアムが、まるで1頭だけ次元が違うと言わんばかりの堂々たる走りで、他馬に有無をも言わせぬ動きで封じこめていく。まるで追っていないのではと思わせるぐらいの、ゴール前は馬なりのフィニッシュだった。PVで見るとステッキは計9発ぐらい入れているのだが、そうは感じさせないほどに貫録タップリのゴールに入る瞬間であった。
リスグラシューが伸びて2着。エアウインザーが間を詰めて3着も、まったく歯が立たないほどに負けた印象であった。ペルシアンナイトは直線半ばまでは勢いがあったのが、あと200ぐらいで失速気味に見受けた。距離が微妙に長かったのだろうか。今日は馬場が得手とかうんぬんの言い訳はあまり通用しない感じがしたものであった…。
最終レースへと向かう中内田師を報道陣が追う。立ち止まった師が、『最終レースが終わってから話します』と告げる。報道陣は引き返すが、私はそのまま後を追う様に階段を昇っていく。階段の途中で後から声を掛ける。『中内田さん、仕上げは何分ぐらいでした?』と単刀直入に言う。するとすぐ後ろにいた助手に、『何分だろう?。7分ぐらいかな…』と相槌を求めた。
武豊騎手が言っていた《前を捕まえればの位置にいて、そのまま追いつけなかった。前は強い!》の言葉を告げる、と、中内田師は『G1を勝っている馬は強いですよ』と簡単ながらひと言返してくれた。
そうなのである。それがG1馬の強さなのである。パドックで大竹師がどの馬を見に来ていたのか。ライバルどうしの戦いはもうすでに始まっている…。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。