競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【オークス・解説】伸びる、伸びる!ラヴズオンリーユーが無敗のオークス馬に!!
2019/5/21(火)
19年5/19(日)2回東京10日目11R 第80回 オークス(G1)(芝2400m)
- ラヴズオンリーユー
- (牝3、栗東・矢作厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:ラヴズオンリーミー
- 母父:Storm Cat
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ラヴズオンリーユーが1番人気ながら4倍ぐらいのオッズ。桜花賞組との比較がそうさせたのだろう。桜の女王は距離を考慮して、すでに別の戦いへ出向いて散った。西10頭、東8頭とほぼ互角の出走だが、やや関西馬に勢いを感じるもの。だが直線で先に抜け出したのは、伏兵も伏兵のカレンブーケドル。スルスルっとラスト400で先頭に踊り出る。完全に勝ちパターンかと思ったが、Mデムーロ騎手のステッキに呼応したラヴズオンリーユーがグイグイと伸びてゴール寸前でキッチリと捕らえ、無敗の欅馬となった…。
忘れな草賞の圧勝を観た時には、オークスはラヴズオンリーユーだろうと思う。だがそこからイロイロと時間があると要らぬことを考えるのが敗者である。一線級と競馬をしていないとか二走目の反動があるのではないだろうかとか、輸送競馬はどうなんだろうかと。くだらない否定の材料ばかりを探し出す。そして結論を導きだして正解、正着からドンドンと遠ざかって行く。そんな負けのスパイラルに陥ったのが私だ。その時に感じたことを強くキープしておけば簡単だったのに…とレースの後に自分を戒めている。だが、2着馬カレンブーケドールの好走を予測出来たかとなると、やはりどうやっても外れ組なのが判る。
スタートでウィクトーリアが遅れる。ゲートの中で1回立ち上がってしまい、開く寸前は2回目の上にあがる時だった。アクアミラビリス、シェーングランツもあまり出が良くはなかった。
最内のジョディーがポンと出る。ダノンファンタジーもすっと前へと出た。ジョディーが先手、コントラチェックが続きエールヴォア、クロノジェネシスと内の馬が前へと出る。3番手のエールヴォアの後ろが10頭が固まる集団となって2コーナーへと向かう。その後ろにも2つの集団があって随分と縦長となる。ラヴズオンリーユーはと見ると中団あたり。外にビーチサンバ、内にシゲルピンクダイヤがいてそう外々を廻っていない。
向こう正面に入って流れも落ち着いたのか、より縦長で前の馬とそう離れないで続く流れとなる。馬群の内目で前へと上がる馬がいたりして、中団がかなり密集して見える。
3コーナーを過ぎて、先頭のジョディーのリードを後ろの馬が詰めたのか等間隔で続く。最後方のアクアミラビリスだけが2馬身、前と差がある。黄色い帽子の馬の動きが気になる。新聞を見直す、《カレンブーケドールか》と心の中で口ずさむ。注目していたシゲルピンクダイヤの鞍上の動きが他と違う。しごきだしている。まだ4コーナーへ行く前である。
後続がさらに間を詰めて最終コーナーへと向かっていく。最後のカーブに入って行く前に、ついに和田騎手がステッキを入れているのが見えた。ここで気合を入れるのは手応えがないと言うこと。距離の壁があるのがこちらにも判る。まだ誰も追い出していないのにだ。
そして直線へと入って来た。やはり黄色い帽子の動きが鋭い。前の馬の外へ出して先頭へと踊り出る勢いまである。コントラチェックの外へと並び、ステッキを1発入れてさらに前へと出る。あと400もある時点だ。後ろでは外へ廻った武豊騎手のシェーングランツの勢いが一瞬目立った。だがその少し前のラヴズオンリーユーが、並んでいたビーチサンバを振り払って伸びだして行く。
前では右ステッキから左へ持ち替えた津村騎手の動きに呼応して、カレンブーケドールが後続との差を開きだした。内からもう一度クロノジェネシスが伸びだして来だす。ラスト200を切った。内の2頭の争いかと思ったら、グイグイとラヴズオンリーユーが伸びて来る。ミルコの右ステッキが入る度にグイっと伸びる。カレンブーケドールに並ぶ間もなく、すぐに前へと出る。頭ひとつ出たままで並んでゴールへと入ったが、すぐにミルコが右手でガッツポーズをした。そこから2馬身ぐらい離れて4頭が並ぶ様にゴールへなだれ込んだが、体半分ほどクロノジェネシスが先着したのが判る。一番内に入ったウィクトーリアの脚色が目立ってはいた。
いつまでもMデムーロ騎手の歓喜のポーズが続く映像を見ている。やはりあの時の印象は間違いなかったのだと。
桜花賞とオークスは別ものである。だが3冠を獲れる馬もいる。その年、その時の力関係であろう。今年の女王は遅れて来たが、間に合ったラヴズオンリーユーが戴冠した。秋の最後もほぼ間違いなく行けるだろうが、凱旋門賞も視野に入る。そして新しい馬主の形。DMMドリームクラブが、こうやってG1馬オーナーになった。新時代が来ているのも感じる。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。