競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【小倉記念・解説】メールドグラース、王者らしい余裕の運びと伸び脚
2019/8/6(火)
19年8/4(日)2回小倉4日目11R 第55回 小倉記念(G3)(芝2000m)
- メールドグラース
- (牡4、栗東・清水久厩舎)
- 父:ルーラーシップ
- 母:グレイシアブルー
- 母父:サンデーサイレンス
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朝から人が多い小倉競馬場。やはり入場料無料は大きいのか。それとも小倉名物《小倉記念》を目の当たりにしたいのか。4F、5Fの『武豊展』を見に来ているのか。何せ、けっこうな人手だった。パドックも大勢で埋まっていた。
短い直線ながら、ゴール前でデッドヒートの伸びを見せたのは後ろからの2頭。それも外を廻っての1番人気、メールドグラース。トップハンデながら、伸びは重厚なものだった。内で鋭く迫るカデナを軽くいなして伸び勝ち、マッチレース模様の激戦を制した。勢いを感じる、本物の伸びであった。
ディープインパクトが星になってしまった。場内で流れる映像を見る度に、凄い馬だったな~と。最後の有馬記念を終えて引退式の時は馬場内の内ラチ沿いから、あのスタンドを埋め尽くす多くのファンと市川さん、池江敏行助手に引かれて周回していたディープインパクトを眺めていた。朝青龍もいたっけ。あんな凄い馬には二度と会えないのかと。いや、きっとその子供達が孫たちがやってくれる。
ディープインパクトの子供か、いやいや主戦を務めた武豊騎手騎乗のアイスストームかと期待は膨らむばかり。
しかしレースを終えてみれば惜しかったのはカデナの伸び具合で、もう少しで絵になるところだった。それにしてもメールドグラースの強さはたいしたものであったが…。
夏のハンデレース。まして2番ハンデの馬からは1.5キロをも差がある。流れも小倉らしい流れ。タニノフランケルの楽逃げにはならない。ストロングタイタンが主張して、そこへノーブルマーズも向こう正面過ぎから加わって、一気にペースアップ。
小倉は小廻りコースだけに、3角を廻る時に動かないと間に合わないケースが多い。だが293mしかない直線でも、ドンデン返しの結果になる事も多い。結局は流れひとつだが、それはどこの競馬場でも同じか…。
その3角を過ぎて、アイスバブルが動いて前へと出て行く。その動きを見ながらアイスストームも一気に差を詰めていく。メールドグラースはまだ動かない。アイスストームを追う様にアドマイヤアルバが動いて行ったが、メールドグラースはその動きの後ろでまだだと動かない。
一気に流れが急流となったラスト400のハロン棒過ぎ。そこではアイスストームがアイスバブルを交わして前へ出た。先行した3頭は馬体を並べて内1馬身前にいる。だが勢いから、流れる様な動きからアイスストームがいいぞと解釈する。道中も馬群が密集していた流れだったが、4角を廻った時はたった3列にそれも横に並ぶ形。アイスストームの姿が完全に見えた時には、そのまま伸びて行くイメージさえ浮かんだ。
だが次のハロン棒。ラスト200を通過する前に武豊騎手の左ステッキに反応しないアイスストームを見てしまっていた。むしろ、1頭置いた外を伸びてくる1番人気のメールドグラースの伸びがしっかりと視界に入ってくる。川田騎手の右ムチの連打に応えて、前を行くノーブルマーズをも捕らえる勢いとなった。それを追うのは、右後ろにへばりついたカデナだけ。腰を入れて追う北村友騎手に呼応して、メールドグラースの呼吸に合わせるかの様に伸びて行くカデナ。最後はクビ差まで迫っていけたが、そこまでだった。
アイスストームは、4角で交わしたはずのアイスバブルにも先着を許す11着。ラスト1ハロンから完全に失速気味だった。3着争いの粘るタニノフランケルとノーブルマーズが、際どいハナ差。
夏の王者はやはり小倉巧者でもあるメールドグラース。だがカデナが完全復活となったのは嬉しいかぎり。返し馬でも以前の硬さが見られなかった。
ディープインパクトへの追悼は叶わなかったが、いい競馬を見せたディープインパクトの子供達。新潟ではオーナーの金子さんのハヤヤッコが重賞制覇と、相変わらずの仕事ぶり。でも楽しい小倉観戦でありました・・・。また来ます!>
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。