競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【阪神ジュベナイルF・解説】ウオッカを超えた!レシステンシアがレコードV!!
2019/12/10(火)
19年12/8(日)5回阪神4日目11R 第71回 阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)(芝1600m)
- レシステンシア
- (牝2、栗東・松下厩舎)
- 父:ダイワメジャー
- 母:マラコスタムブラダ
- 母父:Lizard Island
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どうしてもリアアメリア中心で観ていた。だが3角から4角手前で何か変だぞ?と感づく。やはり4角では上がっていく気配がない。そんな後ろを尻目に競馬は流れていた。スイスイと速いラップを刻んだレシステンシアが、直線半ばでさらに伸びだす。最後は後続に5馬身もの決定的な差をつけ、無敗の女王となった。それもあのウオッカの残したレコードを軽々と更新するものだった……。
現場にいながらパドックへと足を運べなかった。前のレースでの仕事が長引いてしまった。パドックを覆うファンの多さを眺めながら馬場入りを見ることにした。かなり上から見る馬場入りの姿は正直、ハッキリと見れるものでない。双眼鏡を駆使しても小さく見えるし、上から見ても何も語れるものでない。オーロラビジョンの返し馬のキャンター映像を見て納得するしかなかった。それでもリアアメリアはいい感じだな~と。おちつきもあるしフットワークも大きくまったく問題ないなと…。
そしてスムーズなゲートイン。スタートを固唾の飲んで見守るが、そう悪い馬はいなかったと思う。だがリアアメリアは後ろだった。いつもどおり後ろで折り合って脚を貯めるんだ…と、心のなかで誰しもが思っていたと思う。前はと視線を戻すと、レシステンシアがポンと出て行った。ウーマンズハートもいい位置を取りに行っているのが解った。内枠は有利だよな、と思いながらも3角を廻って行く流れがけっこう速いと感ずる。武豊騎手のヤマカツマーメイドあたりの位置がちょうどいいんじゃないかと。リアアメリアはまだ上がって行く気配もない。あまり早く動かないで4角手前を一気にあがって行くのだろう、それで十分、間に合うんだろう…と。
3角を過ぎる時よりも馬群はちょっと凝縮していた。それにしてもリアアメリアは上がっていく気配がなさ過ぎるなと。4角へ入って行くが、勢いつけて大外へ廻らないで少し内へ進路を取っている。まだその時点で大外をぶん廻るロスを避けたな~と。外の1頭を弾き飛ばして直線では伸びて来るのかな、なんてまだ信じていた。確かにそこをスルーして外へ出して来たが、加速する勢いでない。どう見ても内目の先行集団とはかなりの差が出ていた。それも1頭だけ一番前の馬がさらに差をつけて伸びていく…。
リアアメリアの負けはほぼ真実となった。前は完全にレシステンシアが勝利を確信する伸び脚で、ゴールへ向かっていく。それを追う黄色い帽子2頭が馬体を併せているが、前との差は永遠と思えるほどに離れている。何か場内がとても静かに感じた瞬間であった。アナウンサーの声だけが大きく聞こえていた。リアアメリアは、アーモンドアイでもブエナビスタでもないんだと。ここまでは当日に帰ってから一気に書き上げた。
そして翌日、さらにもう一日と時間を置いて、冷静になったところであらためてビデオやPVを見返す。勝者、レシステンシアがどれだけ強いのかが解った。1400通過が自身の前走勝ち時計である1.20.7を上廻る、1.20.2である。直線に入ってすぐにゴーサインを出している。ラスト300を過ぎるや否や追い出している。ラスト1ハロンを機に追うのが最近の傾向なのだが、北村友騎手は早めの仕掛けで後続を待つ気配もなく勝負に出ていった。この間のラップが11.5で、最後の1Fは12.5は抑えたのも考慮すれば凄い時計である。
先手を取った馬が、全体で一番速い上り脚で駆け抜けている事実。いかにリアアメリアがいつもの脚を使えたとしても届いてはいなかったと言える。どうやら速くて強い女王の登場の様である。前で競馬が出来て、なおかつ伸びる。理想の競馬が出来る女王、それがレシステンシアなのだ。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。