競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【有馬記念・解説】5馬身、それもノーステッキ!リスグラシュー、強すぎる!!
2019/12/24(火)
19年12/22(日)5回中山8日目11R 第64回 有馬記念(G1)(芝2500m)
- リスグラシュー
- (牝5、栗東・矢作厩舎)
- 父:ハーツクライ
- 母:リリサイド
- 母父:American Post
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緩みのない流れから直線入口で一気に襲いかかる実力馬達。内から外へ大外へと出し伸びて来たのはリスグラシュー。ステッキを入れることもない勢いで、5馬身もの差をつけてのゴール。ここに集大成をみた5歳牝馬。惜しまれての引退レースとなった。
アーモンドアイは直線半ばでは内にもたれて後塵を浴びてしまっていた。リスグラシューから1秒8も離された9着。大本命馬の思わぬ失速とリスグラシューの強さ、両極端な2頭の信じられないほどの結果。競馬はまさしくドラマである……。
当然にTV観戦。ゲート入りで、サートゥルナーリアの前回の時と全く異なる落ち着きぶりに気が付く。少し時間はかかったが、アーモンドアイもチャカつく時間もあったがうまく気持ちも治まってゲートが開いた。レイデオロ、キセキと2頭が馬群の後ろに見えた。アナウンスもそこを強調する。前がすっと隊列が決まる。アエロリットが先手でスティッフェリオ、クロコスミアが続く。アエロリット先頭で最初の直線へと入ってきた。
スタンド前に近づく。内の絶好位に赤い帽子、リスグラシューが見える。鞍上のレースが外の馬を見ている様に思えた。その視線の先にはアーモンドアイ。結局、馬群に入らず外目である。少し前へと動きだした感じに見える。ここらでリスグラシューはやや行きたがっているぐらいの勢いに見える。逆に外のアーモンドアイはスイスイと行っている様に見えた。先頭のアエロリットが少しずつ後続を離して行きだす。1コーナーを廻る時に《飛ばして行きますアエロリット、1000m通過が58.5です!》とアナウンスが告げる。
向こう正面でのアエロリットはどんどんと差を広げ、2番手のスティッフェリオとは50mぐらいの差をつける。そこから後ろは縦長となっていた。アーモンドアイの前にはスワーヴリチャード。アーモンドアイのすぐ右後ろにヴェロックス。真後ろの外にフィエールマンで、内にリスグラシューが並ぶ。リスグラシューの後ろにはキセキで、外にサートゥルナーリア。その内のラチ沿いにリスグラシュー。後ろにシュヴァルグランほか数頭しかいない。ドンジリはワールドプレミアで、鞍上の手はやや動いている。
アエロリットが、3コーナーを過ぎてまだ大きく離している。2番手スティッフェリオ。3番手にアルアインが上がり、先行していたクロコスミアがズルズルと下がりだす。各馬が一斉に仕掛けだしていく。アーモンドアイも4番手に上がって、4コーナーが一気に近づきだす。フィエールマン、サートゥルナーリアがアーモンドアイの動きに続いて来ている。カーブに入る時にはスティッフェリオがアエロリットを交わして先頭に立つ。後続がド、ドッと横に広がって見える。内にいたリスグラシューがエタリオウの外へと出してきた。
当然にアーモンドアイを観ていた。直線入口で上がってきていたはずだが、まだ先頭に立っていない。ラスト300で横並びになるが、そこでも一番前へと出る気配でない。逆に外のフィエールマン、さらに外のサートゥルナーリアの勢いの方が完全にいい。だがその後ろで外へ出し切ったリスグラシューの勢いがまったく違うもの。スワーヴリチャードの内から真ん前を通って大外へと一気に出してきたのだが、その瞬間の勢いは他馬とは次元の違うもの。あっという間に前をも飲み込む。そしてそのままダミアン・レーン騎手が手綱をしゃくるだけでゴールへとぶっ飛んで行った。レーン騎手は左手を上げて、リスグラシューを《一番》と指した。
5馬身も離れた2着にサートゥルナーリア。それに迫ったのが、4コーナーで外へ出して追い上げてきたワールドプレミア。かなりの脚を使ったが、勝ち馬の34.7には敵わない数字。それだけリスグラシューが切れに切れたのである。フィエールマン、キセキと続いたが、アーモンドアイは出遅れたレイデオロにも後塵を浴びる9着。リスグラシューから1秒8も離れていた。
どんなに強い競馬をした処で過去は過去であり、現在ではないのである。アーモンドアイのJCと現在は違っていたのかも知れない。だがリスグラシューはこの2戦以上のパワー。この矛盾。この謎は勝負が生き物であるかぎり続くものなのだろう。いやはや、今年もいろんな競馬を観させて貰いましたが、毎度思うのは競馬は本当に難しい…ということ。
※次回更新は、2020年1月7日(火)となります。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。