関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

鮫島一歩調教師

課題が残って正解だった福永騎手とのコンビ

-:夏にマリーンSを勝った後に、セレクトセールの会場で先生と「この先どこまで行けるか楽しみですね」と話していたことがあったのですが、JCダートにちゃんと出てこられましたね。

鮫:G1で今すごく頑張っているオーナーですし、上に行きたいという強い上昇志向の方ですから。それが結果に結びついているのではないでしょうか。

-:ファンにとって気になるのはエルムSの敗因だと思うのですが、分かりやすい敗因はありますか?

鮫:祐一君が初めて乗ったレースで、僕らとしては“勝負しに行くならば、2番手だよね”と思っていました。あまり小細工せず「この馬のペースで運べれば勝てるから」という話をしていたのですが、それでもあの位置取りで。勝った馬に被せられて、いつでも抜ける状態だと思ったら、完全に閉められましたよね。あれはレースのアヤですから仕方がないんです。

-:勝ったフリートストリートが上手いことフタをしたんですね?

鮫:そうですね。1ハロンくらい閉められましたからね。だから、祐一君も『その前に出しておけばよかった』と悔やんでいました。あんな形になるとは思わなかった、と。おっつけおっつけで閉めてきましたからね。あれで勝ったフリートストリートを褒めるしかないですね。

-:負けたことで次に繋げたらいいんですもんね。負けパターンを知って、大きな舞台で同じことにならないようにすることが大事だと思います

鮫:課題が残って、祐一君も今度こそと思ってくれたと思います。

-:先行馬がある程度流してくれるレースになれば、より良い形ですね?

鮫:より良いですし、それがなければ自分のペースで行きます。

-:折り合いを考えたら内枠が良いかと思ったのですが、先生のお話を聞いて、真ん中から外でもいいような気がします。

鮫:枠はそれほど気にしないで下さい。もしかしたら出遅れるかもしれないし、あまり考え過ぎてもよくないと思います。


「芝でもあれだけ走れる馬ですし、エルムSの時はレコードが出ましたが、この馬がまともに走っていたら41秒台を出していたと思います」


-:この馬は瞬発力勝負よりも、長く良い脚を使える特性を活かした方が分はありますよね。

鮫:リズム良く1800mを走ってくれれば、勝てるだけの力はあると思います。こんな超一流メンバーの中であまり大きな口は叩けないけど、それだけの力はあるんじゃないかと未知の魅力に期待しています。

-:物差しにはできませんが、ローマンレジェンドを休み明けとはいえ、みやこSで負かしていますしね。

鮫:あの馬は絶対良くなってきますよね。

-:相手が良くなってきても、ブライトラインも完璧なレースでみやこSを勝ったわけではないと思いますので、より上の点数が取れるかも知れないですね。そこに期待したいです。最近は週末だけ天気が悪いですが、一番合ってそうな馬場状態はどうですか?

鮫:芝でもあれだけ走れる馬ですし、エルムSの時はレコードが出ましたが、この馬がまともに走っていたら41秒台を出していたと思います。

-:湿って走りやすくなる稍重がいいですか?

鮫:パワーがあるので普通の馬場でも構わないですが、ちょっと湿ったくらいがいいのかもしれませんね。




誰もが口を揃えたダート適性

-:本末転倒な質問かもしれませんが、この馬は芝で15戦していて、そこまで走った馬がダートに転向するというケースは珍しいと思います。日本のクラシック形態などを考えると、“最初は芝で”という流れがあるのですが、最初にダートに特性があるとは思わなかったのですか?

鮫:クラシックを獲りたいですし、やっぱり芝で走らせたいというのが当然ありますよね。ダートでもJCダートなどの素晴らしいG1レースがありますが、やっぱり初めは芝のクラシックですよね。芝の適性があれば当然そこに向かって行きますよ。

-:先生が初ダートに選ばれたのは1200でした。それはこの馬を気持ちよく走らせるということをしたかったからだと思いますが、芝で走っていた実績馬でも、ダートは全然こなせない馬もいます。芝で走る爪の形も昔より薄く小さくなっています。この馬がダートで走れた馬体的なポイントはどこですか?

鮫:馬体的なポイントというより、乗ったジョッキーたちが「絶対ダート走るよね」と言うようなパワフルな走法ですね。一流ジョッキーたちが声を揃えて、「これダートでしょう」って言う馬ってあんまりいないんですよね。川田も一回調教に乗った時に「これダートでしょう」と言って上がってきましたからね。

-:実際に川田ジョッキーが初ダートの時に手綱を取られましたよね。京葉Sでの3着というのは、初ダートとしては十分な内容ですよね?

鮫:“やっぱり合うでしょう”みたいな感触でした。この路線で行こうかと。

-:その後にいきなり勝っていますし、3勝して3着が1回という凄いパフォーマンスですよね?

鮫:これを見ると、確かに芝よりも適性があるなとなりますね。

-:後は手綱を緩めて、好きに走らせてあげるポイントがゴールに近いところだと、我々としては有り難いです。

鮫:そうなると、勝つチャンスもそれだけ増えてくると思います。

-:3角で手綱を緩めて行くようでは、最後がちょっとキツいですよね?

鮫:このメンバーですからね。

-:見るファンからしたら、どの辺りからなら保ちそうですか?

鮫:4コーナー手前ぐらいからスッと離せて、ジワッと行けるようならいいですね。

-:その理想形になることを願っています。ダート界の新星のブライトラインに期待しているファンへ最後にメッセージを頂けますか。

鮫:この舞台を狙っていたというよりも、出たいという気持ちが強かったので、出られることは凄く幸せですし、ダートに対する未知の魅力を持っている馬なので、なんとか勝てるように、あと1週間で仕上げて臨みます。

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【鮫島 一歩】Ippo Sameshima

1954年鹿児島県出身。
1999年に調教師免許を取得。
2000年に厩舎開業。
初出走:
00年3月4日 1回阪神3日目12R
イケツキフジ、同アイアルカング
初勝利:
00年5月6日 3回京都5日目12R ギャンブルローズ


■最近の主な重賞勝利
・13年 函館SS/12年 キーンランドC/アイビスSD(パドトロワ号)
・13年 みやこS/12年 ファルコンS(ブライトライン号)


鹿児島南高校馬術部時代にしごかれた先生が、“トシ”の冠名でお馴染みの馬主の上村叶氏(かみむら かなえ)。
卒業後はブラジルで酪農をやる夢を抱き、鹿児島から北海道に渡り酪農学園大学の酪農科に入学。高校での厳しい訓練に音を上げた馬術だったが、馬を見ると乗りたくなってしまい馬術部に入る。
この大学時代の同期が飯田雄三調教師。飯田師が4年で卒業した後も留年して、1年遅れで昭和53年に栗東の増本豊厩舎に調教助手としてトレセン入り。
2000年に厩舎開業してからは、馬術を基礎にした地道な調教で活躍馬を送り出した。「馬の気持ちを考えながら馬と対話したいですね。毎日苦しい調教に耐えている馬に優しくしないとね」。
主な管理馬はエースインザレース、シルクフェイマス、レインボーペガサス、マコトスパルビエロ、キングトップガン、パドトロワなど。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。