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田中博司調教助手

昨夏は函館に滞在して4連勝。無類の滞在巧者かと思われたが、暮れに高松宮記念への布石であった尾張Sを制すると、シルクロードSで重賞ウイナーにまで辿り着いた。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのストレイトガールだが、管理するのが藤原英昭厩舎となれば、それもすべて想定内だったのだろう。今回は寡黙な仕事人、田中博司調教助手にG1制覇に向けての展望を語りつくしていただいた。

ここ9戦で9連対の充実度

-:去年の夏の4連勝は賞金加算にしても、ストレイトガール(牝5、栗東・藤原英厩舎)の能力を証明するには十分の活躍だったと思いますが、そこからスプリンターSへは行かずに休んで、今回の高松宮記念に備えました。その後、シルクロードSでレディオブオペラをマークして、きっちり差し切り勝ち。振り返っていかがですか?

田中博司調教助手:夏は滞在競馬で、調整のメニューもちょっと違うし、夏が終わって暮れに中京を一回使わせてもらったとき(尾張S)は、超久々の輸送競馬でしたが、結果としてちゃんと応えてくれたので、輸送競馬でもいけるという自信がつきました。そういった経緯もあり、シルクロードSに挑戦しました。やっぱり、中京の時よりシルクロードSの方が仕上げやすかったですね。馬も輸送競馬の時は調教の攻め方も変わりますしね。この馬は2週前に乗り役を乗せるのが今のところのパターンです。

当初自分が乗って、オーバーワークにならないように、という感じでやらせてもらっているので、その辺もちょうどマッチして、シルクロードSの時は暮れの中京の時に比べて、いい雰囲気で向かえられました。今回も同じような感じで、高松宮記念に向けてやっています。シルクロードS時よりいい意味で変わってきていますね。馬体重については、シルクロードSの時は減り幅がありました。


-:減り幅は多かったと?

田:1ヶ月前くらいの間に戻して、ちょっとずつ調教を加えました。帰ってきた時よりも10キロくらい減っていたのですが、今回の減り幅がすごく少なくなってきていますね。いい方向で捉えています。やっぱり、馬が慣れてきているのだと思いますね。


「年齢を重ねることによって、落ち着きであったり、体の成長が助けてくれて、今に至ると思います。今は追い切っても体重減らないですしね」


-:僕らが思っているより、函館で活躍していた馬は、滞在の利があったのかと。

田:実際、若い時は輸送したときに競馬場でエキサイトしていましたからね。やっぱり、滞在は合っているかと。でも、年齢を重ねることによって、落ち着きであったり、体の成長が助けてくれて、今に至ると思います。今は追い切っても体重減らないですしね。Cコースで追い切った後ちょっとトモしんどくなるとか、坂路でやった後、ちょっと馬が硬くなったりなど、中京の終わりの調整時もあったし、シルクロードSのときもありました。今回は疲労度があまり残らなくなりましたね。

-:体質強化しているということですかね。

田:体質が強化したのか、馬が慣れてきているのか、といったところでしょうか。

-:では、もっと負荷をかけた方がいいと。

田:でも、十分だと思います。動き、息遣いは悪くないですからね。負荷が足りなければもっとしんどいでしょうし、全然ケロッとしてますからね。

-:トモに疲れが残りやすかった馬の調整ということで、この馬は坂路で追い切らず……。

田:でも、岩田騎手を乗せるまではある程度ヤマ(坂路)で仕上げて、と意識しています。短い距離の馬なので、気持ちがないと走れないというイメージがあるので。岩田騎手を乗せる時はCWコースと決めていますから。その時までは、ある程度坂路で調整、と意識して乗っています。

-:前回のシルクロードSは尾張Sからプラス6キロでした。

田:今回はもう少し増えるかもしれません。1週前の追い切り終わった時点での馬体重は今回の方が多いですね。

-:それは何キロぐらいですか。

田:10キロとまではいかないですが、6~8キロは多いかなと。



課題を一戦毎にクリアしてG1へ

-:昨日(3/19)の1週前はCコースで追われましたが、その動きはどうでしたか。

田:もともとずるくない、真面目な馬なので、追い切りは一生懸命動きますね。「直線半ばくらいに並ぶか、抜くつもりであまり速く来ないで」と指示はしたのですが、来るときの威圧感はありましたね。リードホースに乗っていても感じましたね。まして、全体の時計も良く、調子が良い、能力はあるなと。

-:今回の出走馬の中では差しが効くというか……。

田:ある程度自在性もあるので、番手以降もいけると思います。中団でじっと構えることもできますね。

-:前回のシルクロードSはまさに番手でしたね。

田:目標があの馬(レディオブオペラ)だと、調教師と騎手が相談し、想定していましたからね。

-:シルクロードSよりも今回はじっくり構えられますね。

田:そうですね。中京ですし。


「昨年暮れに中京使ったのも、今回を視野に入れていたので。そこでいい結果出たので、左回りどうやろ、中京どうやろ、といういらない不安もなくなりましたね」


-:先週開幕した中京の馬場状態、それほどパンパン馬場ではない、ちょっと時計のかかる馬場、まさにストレイトガール向きですね。

田:いいと思いますね。昨年暮れに中京使ったのも、今回を視野に入れていたので。そこでいい結果出たので、左回りどうやろ、中京どうやろ、といういらない不安もなくなりましたね。

-:この時の尾張Sというのは、初の左回り、夏場滞在で久々の当日輸送の2点をクリアしましたね。この時の尾張Sは差しの展開でしたよね。

田:外枠だったので、ある程度見ていくレースしかできないという枠順でしたからね。

-:どうしても藤原厩舎というと、中距離以上のクラシックディスタンスというのが目立つように思うのですが、その中で(ストレイトガール)は異色のスプリンターと。

田:やっぱり、王道は2000mですかね。でも、どの馬でもマイルまでは保つと思っています。

-:この馬もマイルまでいけると。

田:大丈夫。我慢効くと思います。

-:デビュー戦も1500mでしたね。

田:そうそう。札幌の1500mで2着でした。道中なんか短距離馬じゃない、というか、抑えが効きますし、勢いでいく馬ではないので。

-:結構、乗り役が代わっていても、ちゃんと結果出ていますね。

田:レース内容がバラエティに富んでいますね。内から差してきたり、マークしたり、ある程度自在性があります。



-:それでいて、牝馬にしてはタフですね。

田:気がすごく強いですね。その辺りが、レースでは前を絶対交わす!ってなるのでしょう。外から差されたことってほとんど無いですね。ゴールに向かってくる馬はわかっていると思います。やっぱり前を走っている馬を追い抜こうという気持ちがスゴイ。紅梅Sのときも、威張れる着順でなくても、外から良い脚できているし、その外から差されることはなかったですからね。

-:最近になって頭角を現しているのが、藤原厩舎らしいところですね。デビュー時や2歳時に無理をさせずに、ある程度将来像を描いて作っているんですね。

田:休養も精神的にはすごくよかったと思います。使われて使われて、嫌気がさして走らなくなる牝馬もいますから。そういうのがなかったです。去年は連闘もあったし、ちょっと間隔を詰めたローテーションでも苦しがるところを全然出さなかったです。馬場に行くのを嫌がったりする馬もいますが、まずそういうことはないです。

-:6月23日から8月11日の間に4回使うというのは、厩舎としても異例ですよね。

田:9ヶ月休んでいたのもあるし、函館に連れて行くことが決まったときには、無事であればある程度回数を経験させるつもりでした。その時は、滞在でしかダメなんじゃないかっていうところもあったので。

-:では、期待通りの結果が出たということですね。

田:期待以上に馬が成長してくれたし、充実してきてくれています。

ストレイトガールの田中博司調教助手インタビュー(後半)
「馬体的にも特徴を持った馬」はコチラ⇒

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【田中 博司】Hiroshi Tanaka

父は田中耕太郎元調教師。同厩舎で競馬人生をスタートした後、スタッフの産休がキッカケで小学生時代からお互いを知る藤原英昭調教師のもとへと異動し、名門厩舎の躍進に携わってきた。調教技術もさることながら、培ってきた知識と人脈、そのリーダーシップは秀でており、理想像といっても過言ではない調教助手。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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